経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

合理性では答は明らかな経済対策

2023年10月08日 | 経済
 賃上げのためには、売上げが伸びていかないといけない。それには、財政が賃金増の上前をはねて消費を鈍らせ、売上げを衰えさせている場合ではない。いまや、補正さえやめれば、財政は「黒字」になるところまで来ており、補正を段階的に減らしつつ、税や社会保険料の増を部分的に還元することが求められている。十年一日、「増収はすべて財政再建に」では拙い状況に変わっているのである。

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  8月の毎月勤労統計は、常用雇用が前月比0.0で横ばい、現金給与総額が+0.4だった。実質賃金の低下ばかりが注目されるが、雇用×時間には高まりが見られ、時間当たり給与も減ることなく、雇用×給与も高水準にある。この2か月は雇用が足踏みしたが、人手不足が強く、今後は増加が見込まれるので、それに連れて、総雇用者所得が拡大して、消費も伸長することが期待できる。

 8月の統計局CTIは、名目が前月比0.0で、7,8月平均は前期比+0.5となり、順調である。世帯消費(分布調整値)では、前月の前月比+3.2の反動で、前月比-2.5となったが、自動車の減が大きかったようだ。今後、消費を伸ばしていくには、賃金が増しても、3割を社会保険料で抜き、1割を消費税で取る構造なので、特に、余裕のない低所得層について、堰き止めないようにすることが重要である。

 補正予算の議論が始まり、減税も取りざたされているが、法人税、所得税では、低所得層に届きにくく、消費税はルートがない。消費増税のとき、単一税率として、定額還付の仕組みを整えておけば、インボイスの苦労もなく、減税も容易であったのに、愚かなことをしたものである。また、社会保険料も、この3年で5兆円ほど増えており、逆進性が強いにもかかわらず、「減税」ルートがない。

 今回、「年収の壁」対策で給付を行うことが決まったが、社会保険料の重さに連動して給付するのは、「減税」するのと同じであり、しかも、税制改正なしにできる。公明・北側副代表が「給付は即効性」とするとおりだ。1.1兆円で勤労者皆保険が実現でき、年金財政は好転し、就労増加で経済が成長し、税収拡大にもつながるだろう。合理性の観点では、これ以上の策はないと言える。

(図)


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 これができたら、総選挙の看板になる大改革だが、自民党では、法人減税なり、消費減税なりが検討されているようで、低所得層には届きがたく、非正規の就労の不合理もそのままになりそうだ。エコノミストとしては、経済合理性の高い施策が選ばれると思いたいところだが、子供の減少で学校教育費が縮小して財源が出てくるのに、支援金制度に拘って、非正規の育児休業給付のメドを立てられないとか、政治は、戦略の要を外し、安易な方法を取りがちなので、今回もグタグダなんだろうね。


(今日までの日経)
 米長期金利、迫る5%。社説・将来展望できる少子化対策に。公明・北側副代表「給付は即効性」。日本の長期金利、20年ぶり上昇幅。

コメント
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