経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

8/29の日経

2019年08月29日 | 今日の日経
 7月指標で一足早く、消費者物価指数の全国が出たが、サービスも含め、上昇圧力は弱まり、下り坂にあるように見える。この分では、10月の消費増税の際、あまり段差ができないかもしれない。2014年の増税時には、サービスの前年同月比は1%程あったが、今や半分である。もし、消費増税がなければ、2%目標の達成とは言わずも、近くまで行っていたかもしれない。2014年秋に、慌ててやった異次元緩和第二弾は空振りに終わり、やはり、景気回復は、半面で緊縮をしていてはダメなのだということを証明してくれた。いまさら、「躊躇なく」と言われても虚しいよね。

(図)



(今日までの日経)
 「有志連合」変わる呼び名 日米、軍事色薄める。年金、68歳まで働く必要 制度改革急務。日米首脳、貿易交渉で合意 農産品関税TPP並み 来月に署名へ。嵐に窓開けないために・滝田洋一。有志連合、深入りは禁物だ・秋田浩之。

※滝田さんは、嵐に窓をあけるハメになると思っているんじゃないのかな。※秋田さんのようなリアリズムこそ、日経の価値だね。

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誰かの借金は、誰かの貯蓄

2019年08月25日 | 経済
 マクロ経済で最も重要な概念は、「誰かの借金は、誰かの貯蓄」である。どうも「貯蓄」というと、蔵の中の米俵とか、金塊とかをイメージするようだが、蓄えた米は劣化して無価値になるし、金塊とて、少子化で受け取る人が居なくなれば、無価値になる。貯蓄とは、人から何かを得る「権利」であり、借金とは、人に何かを与える「義務」であって、一対でもって始めて意味を持つ。ところが、財政赤字というと、片面だけしか見えなくなるようである。

………
 ダメな財政学者は、赤字の削減を叫んでも、それで余らせた貯蓄を誰が使うかを考えない。主流派の経済学では、財政赤字が減ると、金利が下がり、設備投資が盛んになって、貯蓄が有効に使われるというのが標準的な考え方だが、今の日本では、金利の下がりようがないので、緊縮財政は、単に経済の縮小させるだけになる。少なくとも、外需が補う状況でないと非常に危いことになる。

 実際の経済では、設備投資は金利に感応的ですらなく、需要に従って動く。そのため、金利の低下によって、住宅投資が盛んになるか、自国通貨安に振れて輸出が伸びるかしないと、金融緩和をしても、設備投資は出てこない。別に新しい話ではなく、昔から、金融緩和について、「ヒモでは押せない」と言われて来たことである。金利よりも、需要動向に関わるリスクの方が設備投資を支配しているのだ。ちなみに、住宅が感応的なのは、自分が住むという需要が確実だからである。

 さて、日本は、住宅投資はやり尽くしているし、一層の円安で輸出増を望める状況でもなくなっている。だから、金融緩和は効かない。仮に、産業政策を加えて、設備投資を刺激できたとしても、増税で消費が減退し、輸出が伸び悩む中では、需要に対する設備投資の比率が上がってしまい、過剰な投資になりかねない。良くて、将来にする設備投資の先食いになるだけである。

 2014年の消費増税の際は、前年に異次元緩和と財政出動を組み合わせて、景気回復への転換を果たし、円安を背景とする輸出の大幅増が緊縮財政をオーバーライドする希望があった。実際には、リーマン前のような設備投資ブームとはならず、異次元緩和の第二弾は空振りに終わり、追加の消費増税は先送りとなった。今回は、こうした希望すらないにもかかわらず、増税が敢行される。

 政府は、今回の純増税分について、景気対策を打って相殺するつもりのようだが、これは、いつ止められるのか。民需や外需が出て来なければ、止めるにやめられず、結局、高齢化に伴う財政需要の増大に置き換わるまで続けざるを得まい。これでは、ムダ使いの誹りは避けがたい。少子化という国の存続を揺るがす課題がありながら、余計なことに費やすから、人口崩壊が止められないのである。

………
(図)


 木曜に出た全産業指数で、頼みの綱の建設投資の状況を眺めると、民間住宅は早くも減衰の局面にあり、設備投資を支えた企業の建設投資に揺り戻しがうかがえ、ひとり公共だけが、2018年に絞ったものを返す形で、建設投資を支えている。輸出の状況については、8/21に触れたように、底バイ状態にあって、更にリスク要因が押し寄せてきている。とても、消費の抑圧をしているような場合ではない。

 こんな有様に反発して、消費「減税」を唱える向きもあるが、もし、本当にやってしまうと、輸入を急増させて終わりとなる。現在の弱い駆け込み需要の状況でさえ、輸入が膨らんでいる。消費税は、下げるにしても、小刻みにやらないと、ショックを与えるだけで、設備投資を促進して、成長を加速させるようにはならない。経済にとって、需要を安定的に管理することが何より大切である。現実として、設備投資は、臆病であり、需要に反応して徐々に出て来るものだからである。


(今日までの日経)
 FRB、9月利下げに傾く、貿易摩擦に懸念強く。中国、米関税第4弾に報復 750億ドル分に最大10%、トランプ氏「対抗」 NY株一時急落。

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8/21の日経

2019年08月21日 | 今日の日経
 7月の貿易統計が公表になったが、輸出は底ばい状態だ。中国が相変わらずなだけでなく、日経にあるように、東南アジアや米国に景気の陰りが見えるのは気になるところだ。EUへの輸出は、対前年同月が4か月ぶりにプラスになったが、船舶の一時的要因だ。他方、輸入は、消費増税前ということもあってか、着実な増加を見せている。2014年増税の際も、増税前に上昇し、増税後に下降していたので、今回も同様の動きになると思われる。

(図)



(今日までの日経)
 貿易縮小 世界景気下押し。東南ア、経済成長に陰り。米設備投資 減速の兆し。
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緊縮速報・リフレより財政再建のアベノミクス

2019年08月18日 | 経済(主なもの)
 財政タカ派は、公債等残高のGDP比190%超をあげつらうだけだし、反緊縮派は、MMTなら赤字は問題ないと極論に走る。少しは「程度の問題」を考えたらどうかと思うね。例年より遅れて7/31に公表された「中長期の経済財政に関する試算」は、財政再建目標の達成年度ばかりが注目されるけれど、今年から数表がエクセルで提供されるようにもなり、もっと分析に活かすべきじゃないのかな。政治論はともかく、政策論には欠かせないことだよ。

………
 まず、過去の実績を確かめよう。国の税収は、2014年度以降の5年間で13.4兆円増えた。そのうち、消費増税によるものを5.6兆円とすると、成長による増収が7.8兆円、年当たり1.6兆円もあったことになる。他方、基礎的経費は5年間で-2.5兆円の減少である。社会保障が年に+0.7兆円なのだが、地方交付税が-0.3兆円、公共事業などの「その他」が-0.8兆円で、差し引き年-0.5兆円の削減だった。すなわち、5年間の緊縮は、合わせて15.9兆円に上る。

 2018年度の家計消費(除く帰属家賃)は、6年前の2012年度と比べ、実質で2.1兆円しか増えていないことを踏まえれば、どれたけ緊縮が大きかったかが分かる。これでは、「リフレ」をいくらしようと、物価が上がらないのは、当然ではないか。アベノミクスのほとんどは、ただの緊縮財政である。脱デフレは、やってる感だけだが、急速な財政再建は、自賛しないだけで、ホンモノである。

 次に、将来を眺めると、国の税収は、2019年度以降の5年間で、10.4兆円増える。そのうち、消費増税によるものを3.0兆円とすると、成長による増収が7.4兆円、年当たり1.5兆円あることになる。他方、基礎的経費は5年間で6.5兆円増加する。社会保障が年に+1.1兆円、地方交付税が+0.3兆円、「その他」は-0.2兆円で、合算して年に1.3兆円増加する見込みだ。結局、5年間の緊縮は、差し引き3.9兆円になる。

 加えて、過去5年ではさして緊縮になっていなかった地方は、この先5年だと、歳出が6.1兆円の増に対し、税収等が8.7兆円の増なので、2.6兆円の緊縮となる。国と地方を合計すると6.5兆円、年当たり1.3兆円だ。それでは、これだけの緊縮を、今後も続けるべきなのか。基礎的収支の赤字は、既にGDP比-2.4%まで縮んでいる。緊縮ペースを半分に緩め、毎年、0.7兆円規模の少子化や非正規の対策を新設することは十分に可能だし、将来の「社会的負債」を減らすことにもなる。

………
 さて、緊縮をしているのは、国と地方の財政だけではない。社会保険、とりわけ年金で著しい。8/9に公表された2018年度の厚生年金の決算に基づくと、保険料収入は前年度比+3.2%になる一方、保険給付費等は+2.4%にとどまったことで、フローの収支は0.2兆円の改善となった。また、年金積立金の簿価が0.6兆円の増となっているため、合わせると0.8兆円程度の緊縮と言うこともできよう。

 振り返れば、厚生年金のフローの収支は、2013年度に4.2兆円の赤字だったものが、2018年度には0.2兆円の赤字にまで改善している。5年で4兆円、年当たり0.8兆円もの緊縮だったわけだ。毎年の保険料の引き上げと給付の抑制は、年金制度の持続に必要なものとされ、年金での緊縮は、問題視されるどころか、知られることすらない。それでも、アベノミクスの消費停滞と物価低迷の原因の一つであったことは間違いない。

(図)


………
 参院選では、「消費税廃止」という主張が注目を集めたが、緊縮ばかりが進み、生活が良くならないことへの不満の表れだろう。野党ですら、「廃止は現実的でない」との声が聞こえるけれども、それなら、緊縮はどこまで緩められるのか、出して見せるのが政策論ではないか。与党とて、こんなに緊縮をして来たという認識はあるまい。そして、これが国民生活の上で、どれほどの苦痛だったかを知るべきだろう。

 財政再建を捨て去るならともかく、緊縮を少しでも緩めたら、金利が急上昇して破綻するなど、あり得ない話である。これまでの低成長ぶりを踏まえれば、かえって経済への信認は改善する可能性が高い。緊縮の大きさは、社会保障の自然増に従って反射的に決まるだけで、成長とのバランスは考慮されない。「痛い改革」がはやる世の中だが、実績と見通しを踏まえて、少し調整を施すだけで、随分、この国は良くなる。なぜ、このくらいの造作もないことが視野に入らないのか。苦しいほど激しさを望むという心理なのだろう。


(今日までの日経)
 人民元、やまぬ売り圧力 需給反映なら10元割れも。膨らむ100年債バブル。

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8/15の日経

2019年08月15日 | 今日の日経
 6月の機械受注が出て、4-6月期の前期比はプラスになったものの、景気後退はまだ続いていると見る。7-9月期は再び低下する見通しだし、達成率も落ちてきている。製造業は、下がり方は緩んでいるが、はん用機械や自動車は下げ止まっていない。上向いたように見える非製造業は、鉄道車両の大型発注があった運輸だけが突出しており、他はレンジ内の動きだ。建設の停滞が気になる上に、2014年消費増税の際は、非製造業には駆け込みと反動が見られたので、今回も要注意である。

(図)



(今日までの日経)
 「氷河期」100万人 就職支援 政府 研修業者に成功報酬。米の対中関税「第4弾」、スマホなど12月に先送り。再生エネの奔流 中国席巻、風力も太陽も。予想外の高成長なぜ?「下方修正あり得る」の声も。データが示す「恐怖の夏」。

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4-6月期GDP1次・内需高成長のあだ花

2019年08月11日 | 経済
 4-6月期のGDP1次速報は、驚きの高成長であった。輸入増に伴う-0.3をもの外需の寄与度を跳ね除け、実質年率1.8%を達成したのだから、立派なものである。ただし、それは、ひと時の盛りで、過ぎた春のことでしかない。月次の経済指標で分かるように、その後、景気は急速に悪化しており、そのまま、消費増税へと突入することになろう。外需なき中で、消費を圧殺し、何を伸ばして成長するつもりなのだろう。

………
 4-6月期GDPの最大の特徴は、消費の大幅な伸びである。家計消費(除く帰属家賃)は前期比+0.7に及ぶ。2018年各期の平均が+0.14しかないことを踏まえれば、5倍の伸びだ。こうした行き過ぎからトレンドへ戻るとすると、次の7-9月期は-0.3にならないといけない。それを超える部分は、駆け込み需要ということになり、大して駆け込みがないように見えたとしても、実は10-12月期の反動減の落差がつく予兆になる。

 GDPに準拠する月次の消費総合指数を見ると、4月に前月比+1.8と跳ね上がり、5月が-0.8、6月は-0.6と急低下している。いわば、4月だけの稼ぎで、4-6月期の前期比が+0.8になるという高成長なのだ。水準は、既に6月時点で1-3月期並みに戻っており、消費者態度指数、景気ウォッチャーともに、7月も続落だから、推して知るべしだ。さすがに9月は駆け込みで高まるにしても、基調は極めて弱く、増税後は更に鈍ると考えなければならない。

 高成長のもう一つの要因である設備投資については、鉱工業指数の資本財(除く輸送機械)の出荷を見ると、4-6月期は伸びているものの、1-3月期に落とした分を取り戻せていない。建設財もまた然りである。資本財の輸送用に限っては、前期の減を超える伸びだが、6月の生産は急落している。結局、設備投資は、伸びたとは言え、前期の停滞を踏まえれば、むしろ、鈍り始めているように見えるのである。

 そもそも、製造業の設備投資を先導する輸出は、1-3月期に急低下した後、4-6月期もわずかながらマイナスとなった。製造業の機械受注は既に低下傾向にあり、輸出の失速が明らかに波及している。非製造業についても、建設業活動指数の民間企業設備は5,6月は好調だったが、6月の建設財の動向からして、持続的とは思われない。設備投資の伸びには、増税前の駆け込みも含まれると思われるのでなおさらである。

(図)


………
 外需は不穏な状況にあり、政府・日銀ともに、リスクには「躊躇なく」対応すると表明しているところだ。しかし、財政出動や金融緩和には虚しさが募る。まず、金融緩和というのは、設備投資を直接に増やしたりはせず、住宅投資や円安による輸出による需要の追加を通じて初めて効く。したがって、住宅や輸出が増える経路が塞がっている現在では、気休め程度にしかならない。金融緩和が効かないとは、こういう意味である。

 他方、財政出動で公共事業の拡大したとしても、2018年に削減したものを戻しているだけなので、それで設備を増やそうとはならず、所得増で消費を促す間接的なものになる。ところが、その消費へ増税して慄かせているから、どうしても鈍くなる。結局、虚しい対策が「躊躇なく」取られるに過ぎない。消費増税は、企業や個人が積み上げた成長のための努力を、一挙に巻き上げて無に帰してしまう。戦略の誤りとは、いつも、そうしたものだ。

 実は、GDPに占める設備投資の割合は16.5%となり、過去25年間の最高を更新した。既に輸出が盛んだったリーマン前を超えている。金融緩和や成長戦略で、これ以上、設備投資を伸ばすのには無理がある。足りないのは消費で、未だ2014年増税前水準を回復できていない。それでも、消費増税が国政の最重要課題であり続け、景気の悪化がリーマンショック並みではないからと断行される。デフレと停滞から脱せないのも当然だ。米国のMMT学者よりも、自分たちがしていることを分かっていないのである。


(今日までの日経)
 堅調内需、GDP下支え 民間予測7~9月もプラス 外需回復は望み薄。10月の増税、関門に 10~12月はマイナス予測。最低賃金 19県が「目安」超え 引き上げ幅、東京並み。

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8/9の日経

2019年08月09日 | 今日の日経
 7月の景気ウォッチャーも悪いね。非製造の景況感も、製造業の悪さを追いかけているようだ。とうとう、輸出減退による製造業の悪化が非製造業へと波及し、非製造業は堅調と言えなくなってきている。合計の水準は、ついに、第一次安倍政権退陣時を割ってしまった。世間的には、不振は長雨のためと思われていて、次は猛暑のせいに変わるのだろうが、消費増税後ともなれば、経済運営への強い批判に変わるおそれがある。

(図)



(今日までの日経)
 企業、3四半期連続の減益 4~6月 上場の6割、非製造も陰り。街角景気、増税前に停滞 3カ月連続で悪化 天候不順、小売りに逆風 7月調査。

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8/7の日経

2019年08月07日 | 今日の日経
 予想されていたこととは言え、景気動向指数は大幅な下げとなった。一致指数の水準は、2014年の消費増税後並みであり、先行指数に至っては、東日本大震災直後の水準を下回ってしまった。いわば、今度の消費増税は、増税直後に増税を重ねるような、あるいは、震災直後に更に増税するようなことになる。せっかく、緩やかながら、消費が上向いてきたのに、ここまで振り切った緊縮は、なかなか見られるものではない。

 日本人にとっては、見慣れた光景かも知れないが、MMTのランダル・レイ先生が指摘するところの「これがいつもの日本の政策だ。経済が長期低迷から抜け出すそうになると、政策立案者はいつも財政赤字を削減するためにと緊縮政策を採り、それによって経済を不況に戻すので常に不況ということになる」(道草2019/7/2)にピッタリ当てはまるもので、外から眺めれば、とても異様な行動である。

 一応、増税の半分は教育の無償化で還元することになっているものの、6月の家計調査で見るとおり、ボーナスが増えても消費性向が下がっているのだから、大半が貯蓄に回ることになろう。前回の増税のときは、外需が好調の間は緩やかに回復したものの、衰えるに従いズルズルと低下した。今回は、増税直後の落ち幅は小さくとも、回復も見せずに後退が続くという展開だろうか。

(図)



(今日までの日経)
 中国を「為替操作国」に 危険な応酬一段と。6月景気指数 大幅下げ 前回の消費増税時以来。春・夏生まれ増加、待機児童が影響?「保活に有利」ゆがむ制度。


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アベノミクス・止まらない景気の悪化

2019年08月04日 | 経済(主なもの)
 増税まで、あと2か月を切ったのに、景気の悪化が止まらない。6月の鉱工業指数は、ネガティブ・サプライズだったが、かなり深刻だ。生産の101.1という水準は、3年前の2016年10月以来の低さである。やはり、4,5月の上昇は季節調整のいたずらだったようで、原数値で読み取れるように、むしろ、景気の悪化は加速している。英国でのハードブレグジット政権の発足、米国の利下げによる円高に、対中関税引上げ第4弾と、外需にリスクが押し寄せる中、何があっても財政再建で、消費の圧殺に挑む日本である。

………
 鉱工業指数は季節調整値で見るのが普通だが、4-6月期は休日増の攪乱があったので、出荷の原指数を12か月後方移動平均で眺めると、下がり続けであることが分かる。特に、景気の先導役である設備投資の動向を表す資本財(除く輸送機械)の落ち方は急である。それでも、全般的に設備投資が底堅いとされるのは、輸送用については4-6月期が逆向きに動いたことと、建設財が安定していたことがある。

 ところが、この6月は、輸送用が大勢に順応して下がり、建設財がジリ貧になってしまった。つまり、投資全般が崩れ始めたという意味で、相当に深刻である。そして、昨年までの景気拡大局面においてさえ、上下を繰り返すだけで、まったくもって弱々しかった消費財に対して、増税攻撃を仕掛けようというわけである。4,5月の休日増で、旅行などのサービスは盛り上がったかもしれないが、一過性のものには頼れない。

 実は、6月指標が出たところで、4-6月期GDPを予測してみたが、いつものやり方だと高めに出る。鉱工業指数の季節調整値が影響して設備投資が高くなるだけでなく、消費総合指数や消費活動指数も妙に高い。コンセンサスは、内需は高めという予想になっているけれども、実勢には疑わしい部分があり、1次速報はまだしも、2次速報でかなり低めにフレる可能性があると警戒している。

(図)


………
 景気が下がり続けである点に関しては、7月の消費者態度指数も同様である。「雇用環境」は3か月連続での低下になり、2014年の消費増税以降で最悪の水準に、あとわずかのところとなった。消費者態度指数は、前回の増税前後でV字型の下降と上昇を見せたが、「雇用環境」については2か月前からで、3か月前の7月は少し早い。むろん、これまでの低下は、消費増税に対する不安感ではなく、景気の悪化に関するものである。

 実際、水曜のコラムでも書いたように、製造業を中心に新規求人の増加数が減っているわけだから、消費者態度の悪化は、感覚的なものではなく、実態に根差したものである。増税に対する漠然とした不安は、まさに、これから出てくるわけで、消費者態度は、8,9月と更に悪化するだろう。加えて、外需の悪いニュースが入ってくるのも確実だ。結局、2014年の時より悪い状態で、10月の増税に臨むことになる。

 6月の鉱工業指数が下ブレしたことで、いったんは「悪化」を脱した景気動向指数も、再び下方修正の危機を迎える。そもそも、つかの間の小康は、休日増に伴う特殊要因だったと言うべきかもしれない。1-3月期のGDPが輸入減で見かけの上だけで高成長になり、消費増税の延期とはならなかったように、景気の基調を惑わすようなことが続く。今度の消費増税は、前回より規模は小さいにせよ、外需が不調という悪条件が加わる。打撃の段差は小さくとも、尾を引きそうな気がする。


(今日までの日経)
 対中関税「第4弾」しびれ切らす米。FRBはや追加緩和圧力 政権・市場が包囲網。財政黒字化 一段と遅れ 「27年度に」見通し後退。

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