経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

9/29の日経

2021年09月29日 | 今日の日経
 今年に入ってからの消費者物価指数は、財が上がり、サービスが下がるという傾向が見て取れる。あたかも、コロナ禍からの回復のK字の状況を表すかのようだ。実際には、原油・エネルギーの上昇、宿泊料や携帯料金の低下など、個別の事情で動いているのだが、全体状況にマッチした形になっているというのが、不思議なところである。今後、円安による望ましくない物価上昇にも注目したい。

(図)



(今日までの日経)
 緊急事態全面解除を決定。漂う「悪い円安」、輸入物価高騰の打撃大きく。中国、不動産バブル懸念 かつての日本超す。

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年金・改革主義の亡霊

2021年09月26日 | 社会保障
 自民党総裁選は、9/29の選出を目指し、政策論議がたけなわだが、年金が論点になるとは思わなかった。しかも、一昔前に葬られた税方式と積立方式を組合せた改革案の復活とはね。理屈としてはスッキリしていても、少子化が年金財政に与える問題の本質を外した「間抜けな」提案に過ぎない。ここに迷い込んだために、いかに時間をムダにしたことか。それを繰り返さないことを祈らずにはいられない。

………
 現在の賦課方式を積立方式に変える過程では、親の年金を負担しつつ、将来の自分の年金を蓄える「二重の負担」が避けられない。しかし、支えてくれる子供を持つ者にとっては、わざわざ積み立てる必要性がない。「二重の負担」は、子供を持たず、蓄えに頼るしかない者がすれば、十分なのである。全体の3割程の子供を持たない者のために、なぜ、全員が方式を変えて「二重の負担」をしなければならないのか。訳が分からないだろう。 

 では、現在の制度で、子供を持たない者をどう支えているかというと、おおむね、積立金と税で支える勘定になっている。子供を持たない者に2倍の負担をしてもらうことは、年金数理的には正しくても、ペナルティーのように受け取られ、感情的に受け入れられないだろう。また、低所得ゆえに持てない人も多いから、負担をしろと言っても無理がある。だから、皆で支えるという選択になる。

 また、基礎年金を税方式にすることは、増税ができれば、もちろん可能だ。しかし、それまで収めてきた保険料の履歴を御破算にし、一律の給付にするとなれば、かなりの不公正感が出よう。年金は白地で改革するわけにはいかない。低年金を防ぐなら、非正規への適用拡大という正攻法で行くべきで、ハードルとなる低所得者の保険料を税負担で軽減すれば良い。2兆円程度で可能であり、自然増収の範囲でも収まる規模だ。

 少子化は社会を細らせる以上、いかに年金の方式を変えようとも、苦境から逃れられない。唯一の道は、少子化を緩和することだけである。それができれば、子供を持たない人のための税負担が軽くなり、低所得者の保険料の軽減へも回せるようになる。少子化対策の欠陥は、非正規の女性には育児休業給付がないことである。生活の保障なしに、どうやって子供を持てというのか。対象を拡大するのに1兆円もかからない。

………
 日本がデフレに沈んで以来、「改革」が声高に叫ばれたが、本当に必要なのは、地道な制度の「拡張」である。デフレ下での保険料の忌避により増大した非正規に、制度の保護をもたらすべく、税の自然増収を還元していく。それをせず、すべてを財政収支の改善に充ててきたために、デフレと少子化から脱せられず、閉塞感を拭えないのである。野党にしても、せっかく消費税を上げたのだから、下げで人気を取りにいくのではなく、集中して還元することを考えるべきであろう。


(今日までの日経)
 非正規21万人減 上場企業の昨年度。新興国、高まる債務リスク ドル高進行の負担重く。コロナ「生活水準低下」24% 年収少ないほど打撃実感。

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9/23の日経

2021年09月23日 | 今日の日経
 昨日の東京の感染確認数は537人にまで減少した。ちょうどコラムをお休みしていた1か月程で10分の1となった。その理由は何なのか。「人流は増えているのに」という言われ方もするが、都医総研のデータでは、繁華街の滞留人口はお盆までに急落し、その後も低い水準にあるので、矛盾するほどではない。昨年も、お盆を境に減っている。あと考えられるのは、一定のライフスタイルの範囲にはうつり尽くした、予防接種でうつる対象が減ったといったあたりか。いずれにせよ、ありがたいことに、東京は、10万人当たり25人以上のステージ4を数日で割る。

(図)



(今日までの日経)
 FRB、量的緩和縮小11月にも決定。緊急事態宣言解除、「全面」も視野。恒大処理が占う「習経済」。原発の電力、揺らぐ安さ。年金改革、人口減で急務に。今期配当、最高の12.3兆円。先端素材、日本が攻勢。働く高齢者、4人に1人。非正規公務員 遠い処遇改善。

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緊縮速報・財政は早くもV字回復へ

2021年09月19日 | 経済(主なもの)
 4-6月期の資金循環が公表され、資金過不足は、4四半期移動平均で見ると、一般政府がマイナス幅の縮小、企業がプラス幅の拡大、家計がプラス幅の縮小という結果だった。一般政府のマイナス幅の縮小は、1年前の巨大なコロナ対策の赤字に比して、今期の赤字が小さかったためだ。今後、異常な赤字からは急速に脱していくが、景気の動向を見ながら、進度の調整をどうするのかが問われることになる。

………
 一般政府の資金不足(赤字)は、前期よりGDP比1.2%の縮小となり、いわば、急速に財政再建が進んだ。特に、中央政府は、地方と社会保障の赤字が拡大する方向にあったので、単独だとGDP比2.1%もの縮小となっている。むろん、昨年の巨大赤字の反動のゆえだが、リーマンショック後には、なかなか戻らなかったことを踏まえると、財政はV字型の回復をしていると言えるだろう。

 リーマンショックの際は、雇用が急速かつ長期に悪化し、それに伴って、公的年金の赤字が大きく拡大した。コロナ禍では、幸いにして、特段の変化は見られない。この点でも、一般政府の大幅な赤字は、長引かずに済みそうである。社会保障の黒字の水準が少し低下しているのは、医療の増大によるものと思われる。むろん、これも感染が収まってくれば、平時に帰っていくことになる。

 政府の赤字は、誰かの黒字であり、その縮小は、家計の黒字の縮小で賄われた。ただし、家計の黒字は、コロナショック以来、未だ、かなりの高水準をキープしている。また、企業の黒字も増えており、「金余りの平時」に復した観がある。産業政策が叫ばれているが、投資資金が足りないわけではない。海外の資金不足については、GDP比1%弱という平時のレベルだが、今後は、輸出の好調にも関わらず、原油の高騰で不足が縮小するかもしれない。

 8月の貿易統計は、輸出が前月比+0.8%の増で、7,8月の平均は、4-6月期より+1.2%高い水準にある。他方、輸入は、それより高い+2.3%となっている。輸出の伸びが鈍ってきていることもあり、4-6月期にはGDPの外需の寄与度が-0.3もあったのに続いて、7-9月期でもGDPのマイナス要因になりそうだ。輸出の鈍化は、自動車の半導体不足などの一時的要因によるところがあるとしても、景気の牽引役だけに、気になるところだ。

(図)


………
 自民党総裁選では、財政出動が焦点になっているが、兆円単位でお金を使うのは容易ではない。公共事業では消化しきれなくなるし、産業政策をしたつもりで、基金を積み増すだけだったりする。普通の手段としては、減税があるが、高度成長期のような所得税中心の時代ではないから、低所得層へ再分配するのは、かなり難しい。それゆえ、消費税「減税」のような効果的でないものまで飛び出してくる。

 今の時代は、消費税と社会保険料という、低所得層に容赦のない比例型の負担が重きを占める。それゆえ、給付つき税額控除のような定額の再分配が強く求められるが、日本は制度的インフラが欠如している。これこそが日本が抱える経済的、社会的な最大の課題だ。資金過不足で分かるように、家計にカネがないわけではない。必要なのは、低所得層への再分配をどうやってするかである。

 定額の再分配をする際、保険料が未払いでも給付をするというでは、なかなか理解が得られない。税も保険料も負担していない人でも、給付がもらえるというのも、赤字財政でするだけに似たところがある。結局、低所得層の社会保険料、とりわけ年金の軽減が最も自然だ。これにより、非正規の社会保険の適用拡大も進み、格差もなだらかとなろう。誰が次の総理になろうとも、取り組むべき課題は一つである。


(今日の日経)
 自民党総裁選2021 経済政策「詰め」残す 年金・エネ・成長戦略で論戦 財源など踏み込まず。

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