「中長期の経済財政に関する試算」の2023年冬版が公表された。このままだと、2023年度に一気にGDP比で4.8%もの緊縮になり、翌2024年度も3.0%の緊縮を連発でする姿になっている。こんな大きなデフレ圧力を本当にかけたら、経済は壊れてしまう。しかも、当局は税収を低めに見積っているので、緊縮はもっと強まる。急速な財政再建を喜ぶなんてバカげており、安定的な経済運営のため、どれくらい財政を出さなければならないか、まじめに心配しないといけない。
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大幅な緊縮になるのは、経済がコロナで低迷する中でも、税収が大きく伸びてきたからである。2021年度に6.2兆円増えており、2022年度は最大5.7兆円の増が見込まれ、2023年度は更に2.0兆円の見通しだ。この3年で、社会保障費は1.2兆円しか増えていないので、緊急対応のための予備費や補正予算が剥落すれば、12.7兆円もの急速な財政再建になってしまう。
しかも、こうした事情は、地方財政も同じであり、3年間に、税収は最大6.1兆円の増が見込まれる一方、一般歳出は0.6兆円の増なので、5.4兆円の緊縮になる。加えて、厚生年金は、中長期試算の視野の外になっているけれども、この間に、保険料等の収入が3.2兆円増え、給付は1.3兆円増にとどまるので、1.9兆円の緊縮である。
こうした緊縮の構造を覆い隠してきたのが、コロナ対策や資源高対策であり、2022年度の補正では、31.6兆円が措置された。財政再建も大切だが、一気にやるのは危険である。安定的な需要管理ために、少なくとも、2023年度は、緊縮幅に相当する20兆円程度の補正を組み、バランスを取る必要がある。
「失われた25年」では、景気が回復しだすと、急激な緊縮をしてしまい、成長を失速させてきた経緯があるだけに、失敗を繰り返してはならない。折しも、2022年は、合計特殊出生率が過去最悪の1.25人を記録しそうな危機的な状況となり、少子化対策での再分配が求められている。少子化の緩和は財源を生むので、補正に入れるのに適する。
また、政府の試算は、税収を低く見積っているので、足下の税収の伸びを踏まえると、基礎的財政収支の赤字をなくす財政再建の目標は、2024年度には達成され、2025年度には5兆円の過剰達成になる。それなら、5兆円を少子化対策のための一時的ではない財源に使っても構わないことになる。
(図)
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厚生年金の財政は、支える子供のない人のために税を投入していて、出生率が1.25人まで落ちると、将来的に、5兆円規模で追加投入をしなければならなくなる。逆に1.65人に上がると、5兆円規模で投入を軽くできる。こういう構造なのは、払った保険料が戻って来ないことになっては、制度の根幹が揺らぎかねないからだ。
経済財政諮問会議では、賢い財政支出が議論になったが、人的資本への「投資」が不足しており、人間の再生産ができないほど若者が収奪され、社会の持続ができない状況が分かっていない。少子化を緩和する以上の「賢さ」なんてない。緊縮財政、金融緩和、産業政策という、永らくしがみついてきた幻想の成長戦略から、いい加減、目を覚ますべきであろう。
(今日までの日経)
外食、新店7%増どまり 出店費・人手不足響く。コロナ5類、5月8日移行決定。利払い膨張 国債費4.5兆円増。米GDP、10~12月2.9%増 高インフレ下でも底堅く。所得制限、撤廃で足並み 児童手当巡り与野党。「愚か者」英国救った安全網。景気判断11カ月ぶり下げ。
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大幅な緊縮になるのは、経済がコロナで低迷する中でも、税収が大きく伸びてきたからである。2021年度に6.2兆円増えており、2022年度は最大5.7兆円の増が見込まれ、2023年度は更に2.0兆円の見通しだ。この3年で、社会保障費は1.2兆円しか増えていないので、緊急対応のための予備費や補正予算が剥落すれば、12.7兆円もの急速な財政再建になってしまう。
しかも、こうした事情は、地方財政も同じであり、3年間に、税収は最大6.1兆円の増が見込まれる一方、一般歳出は0.6兆円の増なので、5.4兆円の緊縮になる。加えて、厚生年金は、中長期試算の視野の外になっているけれども、この間に、保険料等の収入が3.2兆円増え、給付は1.3兆円増にとどまるので、1.9兆円の緊縮である。
こうした緊縮の構造を覆い隠してきたのが、コロナ対策や資源高対策であり、2022年度の補正では、31.6兆円が措置された。財政再建も大切だが、一気にやるのは危険である。安定的な需要管理ために、少なくとも、2023年度は、緊縮幅に相当する20兆円程度の補正を組み、バランスを取る必要がある。
「失われた25年」では、景気が回復しだすと、急激な緊縮をしてしまい、成長を失速させてきた経緯があるだけに、失敗を繰り返してはならない。折しも、2022年は、合計特殊出生率が過去最悪の1.25人を記録しそうな危機的な状況となり、少子化対策での再分配が求められている。少子化の緩和は財源を生むので、補正に入れるのに適する。
また、政府の試算は、税収を低く見積っているので、足下の税収の伸びを踏まえると、基礎的財政収支の赤字をなくす財政再建の目標は、2024年度には達成され、2025年度には5兆円の過剰達成になる。それなら、5兆円を少子化対策のための一時的ではない財源に使っても構わないことになる。
(図)
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厚生年金の財政は、支える子供のない人のために税を投入していて、出生率が1.25人まで落ちると、将来的に、5兆円規模で追加投入をしなければならなくなる。逆に1.65人に上がると、5兆円規模で投入を軽くできる。こういう構造なのは、払った保険料が戻って来ないことになっては、制度の根幹が揺らぎかねないからだ。
経済財政諮問会議では、賢い財政支出が議論になったが、人的資本への「投資」が不足しており、人間の再生産ができないほど若者が収奪され、社会の持続ができない状況が分かっていない。少子化を緩和する以上の「賢さ」なんてない。緊縮財政、金融緩和、産業政策という、永らくしがみついてきた幻想の成長戦略から、いい加減、目を覚ますべきであろう。
(今日までの日経)
外食、新店7%増どまり 出店費・人手不足響く。コロナ5類、5月8日移行決定。利払い膨張 国債費4.5兆円増。米GDP、10~12月2.9%増 高インフレ下でも底堅く。所得制限、撤廃で足並み 児童手当巡り与野党。「愚か者」英国救った安全網。景気判断11カ月ぶり下げ。