経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

公的年金の負担と給付の公平性

2023年10月02日 | 社会保障
 「専業主婦は保険料を払わずに年金がもらえてズルい」という議論は昔からある。これに対して、年金官僚は、夫婦共働きで300万円ずつの世帯と夫だけで600万円の世帯を比較し、負担も給付も同じだから、公平性に問題はないと説明してきた。公平性は、見方によって変わるもので、あらゆる面で公平というわけにはいかない。負担と給付が完全比例なら、公平になるかもしれないが、最低限の年金を保障できなくなるため、日本は、完全比例に反する基礎年金の制度を設け、専業主婦にも保障しているのである。

 年金官僚の理屈を図で示せば、左側の2世帯の比較である。確かに、負担も給付も同じになる。これに対して、単身と比較すれば、もらえる年金が少なくなるから不公平という批判もある。しかし、単身者の基礎年金を負担に比例させて2倍にするのは、生活を保障する上での必要性に乏しいし、そもそも、基礎年金の半分は税で賄っているから、税の分がもらえないだけとも言える。見方を変えると、専業主婦は、基礎年金の全額を税で支えてもらっているのと同じだ。 

 かわいそうなのは、離婚で男の単身者が発生すると、女の単身者も発生して、中には、非正規で低所得のため、国民年金の免除を受け、半額の基礎年金しかもらえない者も出てくる。離婚がなければ、全額を税でもらえていたのだから、単身になった後も与えたら良いと思う。すなわち、低所得のシングルマザーには、全額の基礎年金を出すことになる。年金を支える次世代を育てているのだからなおさらだ。このように、低所得で負担ができない者の給付をどう保障するかが、公平以上に重要な問題なのである。

 専業主婦は過去のものと言う人もいるが、収入の少ない者に、どうやって基礎年金を保障するかは、今日的な問題だ。専業主婦だけを救うのが問題ならば、すべての者を救う方法を取るほかない。その一つが本コラムの提案で、低所得者の保険料の半額を還付し、勤労者皆保険を実現するものだ。また、国民年金の一部免除者も、同様に、保険料の半額を還付し、保険料に充て、年金の減額の半分を戻す方法も考えられ、140億円ほどでできる。なお、全免の者は、還付する保険料を払っていないので対象外となるが、もし、3/4免除者の還付の半額を与えると決めれば、300億円ほど必要だ。

(図)



(今日までの日経)
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