4-6月期のGDPは、年率+3%程になりそうで、やっとコロナ前の水準に帰りそうだ。欧米には遅れた反面、インフレの心配は薄い。「塞翁が馬」であり、積極財政でいち早く回復させた米国がうらやましかったが、供給制約からウクライナ戦争へ連なり、景気後退も覚悟の金融引締めに追い込まれている。原油高と円安が一服し、頑固一徹の黒田日銀が粘り勝ちをする様相となり、この国の課題は相変わらず内需不足のままだ。
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鉱工業生産は、6月が前月比+7.8と急伸したものの、前月の落ち込みの反動に過ぎず、4-6月期の前期比は-2.7と大きく低下した。毎度「来月は急上昇」の資本財(除く輸送機械)も、終わってみれば、前期比-1.1と後退である。ただし、設備投資を示す出荷については、前期比+0.9と1年ぶりのプラスとなった。また、3期連続で低下していた建設財は、前期比が生産で+4.5、出荷で+3.4と復活を見せている。
消費については、統計局CTIマクロが実質の前期比で+1.7だった。これで、GDPの消費はコロナ前の水準を取り戻すことになろう。もっとも、それは消費増税後の落ち込んだ水準であり、増税前には、まだ3%も差がある。コロナ禍からの復旧が済み、通常の成長過程へ移るわけだが、消費者態度の雇用環境は、5月のピークから、6月が-1.6、7月が-3.1と大きく落ち込んでいる。
設備投資は、機械や建物への投資が増加し、1-3月期で下げた分を超えて、前期比+1.4%程になると見ている。それでも、コロナ禍での最高にも及ばず、消費増税前とは7兆円も足りないレベルである。7,8月の資本財の生産予測は強いが、牽引役の輸出は伸び悩んだままであり、ゼロコロナからの戻りが弱い中国、利上げで景気減速が必至の欧米と、逃げ水になってしまいそうな気配だ。
住宅については、額は増えても、資材高のために、実質だと前期比がマイナスになりそうである。1年余り下がり通しの公共事業は、今期は、ようやく、プラスに転じる見通しだ。この間に、コロナ前とのギャップは年額で2兆円近くに拡がっている。在庫は、1次速報では仮置きだが、寄与度で-0.35くらいか。あとは、外需の寄与が若干あって、4-6月期GDPの前期比は、実質年率で3%程度に収まる。
(図)
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米国は結果的にインフレに至ったけれども、回復期に財政で後押ししたのは最善手だったと思う。ウクライナ戦争が起こって原油高が加速し、金融引き締めに追い込まれるとは、誰も予想できない。もっとも、それが住宅投資とドル高に効いたことは確かでも、本当に景気後退を呼んでいるのかは、にわかに判別しがたい。当初にFRBが主張していた一時的な物価上昇が今になって現れたようにも見える。
つくづく、経済政策はタイミングだと思う。福田赳夫政権では、日独機関車論による財政出動で景気の加速に成功するが、第二次オイルショックに遭遇し、抑制を余儀なくされる。それでも、余熱があったせいで、成長と物価安定の比較的良好なパフォーマンスになったのだった。キシノミクスは、「もはやコロナ後ではない」になるが、かつてのように外需に恵まれて成長できるかは、米中の自縛ぶりを見ると厳しいものがある。日本も、ステルス緊縮でセルフ制裁をし、自縛の列に加わる雲行きだ。
(今日までの日経)
純利益上方修正、1兆円に迫る。大企業ボーナス8.77%増 支給額、コロナ前に届かず。米住宅関連ETFが大幅安。中国、台湾沖にミサイル発射 日本のEEZに5発落下。設備投資 1都3県40%増。電子部品、在庫膨張にリスク。中国、中小銀に公的資金6.3兆円。