11月の鉱工業生産は前月比-0.9であったが、前月の増より減が小さめなので、停滞が続いているという評価になる。エコノミストは、鉱工業指数を見るのが好きである。日本の景気は、輸出で生産が増えるかどうかにかかっているからだ。他方、金融緩和や産業政策で設備投資が増えるかには、まったく注目していない。理論には反するのだが、それらでは大して動かないと分かっているからである。
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12/28の経済教室は、なぜ日本が衰退しているのかがよく分かる内容だった。アベノミクスでは、輸出も設備投資も良く伸びたのだが、消費が停滞し、低成長にとどまった。停滞は、緊縮財政で可処分所得を削ったからで、もう少し緊縮を緩くしていたら、成長も高まっていただろう。それを、需要管理の衝にある内閣府の元事務次官が「積極財政で成長の幻想を捨てよ」と唱えるのだから、現実が見えていないのだなと思う。
これとは別に、高圧経済を唱える若手経済学者の新書を読んだが、理論に終始していて、上滑りな印象を受けた。金融緩和と拡張財政を組合せて使うのは良いが、それでもなかなか上手く行かない。理屈で正しいことと実践できることは、また違う。両者の言っていることは逆だけど、思想や理論に頼り過ぎていて、政策にするには、過去に成功した例に学ぶ方が良いように思う。
日本経済の成長加速はワンパターンで、円安を背景にした輸出増が起点だ。それは、高度成長期もデフレ期も変わらない。違うのは、高度成長期では、税収を還元して所得増を消費まで波及させたことであり、デフレ期では、早々と緊縮に走り、堰き止めてきたことにある。アベノミクスはその典型なわけだし、高度成長を導いた下村治に学ぶなら、ゼロ成長論より、そっちだろう。
マクロ政策で成長を加速するのは難しいので、輸出増の時期を待ち、機会を活かす財政をするのが良いだろう。そのチャンスを逃したのが、小泉政権期であり、アベノミクスであって、仕事は増えても豊かにならないという結果だった。もっとも、次の輸出増がいつ巡ってくるのかは分からない。エコノミストは、目を凝らしているものの、イノベーションの力が落ちてきた日本に次があるとは限らない。
(図)
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今年は、「安すぎる円」だった。むろん、その背景には、米国の金融引締めがある。引締めは、ドル高に加え、住宅投資の大幅減をもたらしたが、設備投資は順調そのもので、成長を牽引する始末だった。金融政策は、通貨と住宅には効くが、設備投資には無力という経験則を改めて証明した。他方、日本は、無力な金融緩和に拘り続けた。円安で輸出が増えるわけでもなく、物価高で住宅まで含めて苦しんだにもかかわらず。
来年は、米国の金融政策の動向からすれば、円高と見るのが普通だろう。そうなったとき、日銀は、マイナス金利をやめられるのか。日銀批判は、円高批判みたいなところがあるので悩ましい。マクロ政策と言っても、しょせん、金融政策は為替用であり、輸出を増やして景気を良くする道具に過ぎない。そんな割切りができず、今年の円安局面を逃したのを悔むことになりはしないか。
(今日までの日経)
楽観覆う世界株高 23年時価総額、ピークの9割に回復。「安すぎる円」解消できず。台湾、対中投資が激減。経済教室・「衰退途上国」からの脱却 「積極財政で成長」幻想捨てよ。
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12/28の経済教室は、なぜ日本が衰退しているのかがよく分かる内容だった。アベノミクスでは、輸出も設備投資も良く伸びたのだが、消費が停滞し、低成長にとどまった。停滞は、緊縮財政で可処分所得を削ったからで、もう少し緊縮を緩くしていたら、成長も高まっていただろう。それを、需要管理の衝にある内閣府の元事務次官が「積極財政で成長の幻想を捨てよ」と唱えるのだから、現実が見えていないのだなと思う。
これとは別に、高圧経済を唱える若手経済学者の新書を読んだが、理論に終始していて、上滑りな印象を受けた。金融緩和と拡張財政を組合せて使うのは良いが、それでもなかなか上手く行かない。理屈で正しいことと実践できることは、また違う。両者の言っていることは逆だけど、思想や理論に頼り過ぎていて、政策にするには、過去に成功した例に学ぶ方が良いように思う。
日本経済の成長加速はワンパターンで、円安を背景にした輸出増が起点だ。それは、高度成長期もデフレ期も変わらない。違うのは、高度成長期では、税収を還元して所得増を消費まで波及させたことであり、デフレ期では、早々と緊縮に走り、堰き止めてきたことにある。アベノミクスはその典型なわけだし、高度成長を導いた下村治に学ぶなら、ゼロ成長論より、そっちだろう。
マクロ政策で成長を加速するのは難しいので、輸出増の時期を待ち、機会を活かす財政をするのが良いだろう。そのチャンスを逃したのが、小泉政権期であり、アベノミクスであって、仕事は増えても豊かにならないという結果だった。もっとも、次の輸出増がいつ巡ってくるのかは分からない。エコノミストは、目を凝らしているものの、イノベーションの力が落ちてきた日本に次があるとは限らない。
(図)
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今年は、「安すぎる円」だった。むろん、その背景には、米国の金融引締めがある。引締めは、ドル高に加え、住宅投資の大幅減をもたらしたが、設備投資は順調そのもので、成長を牽引する始末だった。金融政策は、通貨と住宅には効くが、設備投資には無力という経験則を改めて証明した。他方、日本は、無力な金融緩和に拘り続けた。円安で輸出が増えるわけでもなく、物価高で住宅まで含めて苦しんだにもかかわらず。
来年は、米国の金融政策の動向からすれば、円高と見るのが普通だろう。そうなったとき、日銀は、マイナス金利をやめられるのか。日銀批判は、円高批判みたいなところがあるので悩ましい。マクロ政策と言っても、しょせん、金融政策は為替用であり、輸出を増やして景気を良くする道具に過ぎない。そんな割切りができず、今年の円安局面を逃したのを悔むことになりはしないか。
(今日までの日経)
楽観覆う世界株高 23年時価総額、ピークの9割に回復。「安すぎる円」解消できず。台湾、対中投資が激減。経済教室・「衰退途上国」からの脱却 「積極財政で成長」幻想捨てよ。