経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

世代を超える無限の期間について

2022年10月30日 | 経済
 国民年金の保険料納付を64歳まで延長することについて、「100万円も負担増!」なんて反応が出ているけれども、給付は、国庫補助が付いて、負担以上に増えるから、むしろ、「得」なんだよ。そうでなければ、財政投入に頭を悩ますこともない。こうした、目先の負担しか見ないのは、仕方のないところはあるが、後のことも考えないとね。まして、世代を超える無限の話となると想像もつかないかもしれない。

………
 公的年金は、親世代を子世代が支える賦課方式になっている。そのため、子世代が6割に減る少子化が起こると、10/6=1.67倍の負担が必要になって、子世代には、7割増しの分が「損」になってしまう。ここまでは常識的だが、長寿化で高齢者が増えたり、給付水準を引き上げたりして、子世代の負担が大きくなる場合は、逆の「得」が生じる。なぜなら、子世代も、老後になれば、より長い、あるいは、より多い給付を受けるようになるからだ。

 経済学では「フリーランチはない」のが大原則だが、これは重要な例外になっている。世代を超える無限の期間を設定すると、「損」を引き受ける最終世代が現れないため、「得」だけが存在する形になる。反対に、少子化によって、無限の期間が綻び、最終世代が部分的ながらも現れると、「損」が出てくるわけである。別の観点では、子世代という、人的な投資=貯蓄を怠った親世代には、リターンがないのは、当然とも言える。

 少子化というのは、ゆっくりとした絶滅の過程なので、これを防ぐ以上に有効性の高い財政支出はない。ワイズスペンディングを嫌い、財政赤字を縮小しながら、きれいに滅びましょうというのも、一つの美学ではあろうが、いったん少子化になっても、ある程度のところで脱却できれば、無限に戻った期間の中で、出てきた「損」を均してこなすこともできるから、あきらめてはいけない。

 ちなみに、子世代に頼らない積立方式に変えたところで、最終世代には、お金を受け取って、モノやサービスを提供してくれる子世代が居ないことを申し添えておく。そんな改革をするより、少子化対策をするのが優先だろう。非正規には育児休業給付を出さない社会が、どうして少子化にならないなんて言えるのか。若者が結婚できる社会にするには、どうすれば良いか考えてほしい。

………
 少子化対策で、財政赤字が膨らんだとしても、政府債務は民間債権とともに、将来世代に引き継がれるから、将来世代全体では損得がない。むしろ、財政赤字を出さずに、出生を減らしてしまえば、経済の生産力が衰退し、将来世代の得られるモノやサービスが少なくなり、その意味で「損」になる。この関係でも、少子化対策以上のワイズスペンディングはない。繰り返すが、少子化は滅びの過程であり、そこからの脱却は、永遠への復帰であって、そこには無限の価値があるのだ。


(図)


 9月の労働力調査の結果は、就業者が前月比+13万人、雇用者が+20万人だったが、7-9月期で見ると+2万人と+10万人で概ね横バイの状況だ。コロナ前水準に近いところまで来たが、増加の勢いがない。9月の新規求人倍率も、前月比-0.05の2.27倍と2か月連続のマイナスで、停滞気味である。そんな中、経済対策が決定された。

 第二次補正予算の規模は29.1兆円と大型だが、前年度補正後より2.7兆円少なく、予備費に積んだ4.7兆円と、税収増の3.6兆円を差し引くと、-11兆円となるから、コロナ後の財政再建としては、まずまずではないか。これだけ膨らんでも、目立った結婚支援策がないのは残念だ。非正規への育児休業給付の実現には、0.8兆円あればできるのだがね。


(今日までの日経)
 労働分配率、31年ぶり低調。エネ効率改善、米の半分。対策決定、補正29.1兆円。半導体サイクル、暗転。欧州中銀、連続0.75%利上げ。米GDP7~9月、2.6%増 消費は減速。円、一時145円台前半 米の利上げ縮小観測で。習氏の兵法 経済リスクを黙らせろ。

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10/26の日経

2022年10月26日 | 今日の日経
 8月の人口動態速報は、前年同月比が-2.2%と、マイナス幅は縮んだものの、引き続き低下傾向が続く。1~8月の累計の前年同期比は-5.0%となり、合計特殊出生率の最低記録のレベルにある。さらに心配なのは、1年後の出生を占う婚姻の同様の数字が、とうとう前年割れになったことである。結婚のハードルを下げないと、出生には至らないわけで、子育て支援でなく、結婚支援が求められている。目先の緊縮に拘り、少子化対策を半端にしているうちに、年金の水準維持のため、大規模な財政投入を迫られることになった。これぞ、逆ワイズスペンディングだろう。

(図)



(今日までの日経)
 年金、小手先の改革限界 25年制度改正へ議論開始。政府・日銀、連日の円買い介入か。習氏3期目、長期政権入り。未婚社会を生きる 結婚のハードル下げよ。

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金融緩和で円安にする意味とは

2022年10月23日 | 経済
 ドル円は150円に及び、二度目の円買い介入となった。日米の金利差拡大で円安になっているけれども、米国の金利は5%の「上限」に近づき、いつまでも続くわけではない。この7か月余りの円安局面は、YCCやマイナス金利の修正には良い機会だったはずだが、これを逃してしまうと、直すのは一段と難しくなる。黒田日銀総裁は、金融緩和が成長を導くと、本気で信じているのだろうなあ。

………
 日本の成長は、輸出次第だ。それは、バブル崩壊が終わった1995年以降、極めて明確である。だから、金融緩和をして円安にしても、輸出が増えなければ、成長しない。そのため、日銀が、輸入物価の高騰というデメリットを覚悟で、金融緩和を継続しても、まったく意味がない。デフレ脱却を目指す金融緩和は、輸出促進の円安狙いという本音を隠す建前というわけではないようだ。

 デフレ脱却と言っても、モノの物価は既に上がっており、サービスや賃金が上がっていないだけである。そちらは、日経が紹介したGS証券のレポートが指摘するように、「成長期待」による。「成長期待」と言うと難しいが、平たく言えば、「売上が増えないと、賃金は上げられない」という、経営者にしてみれば、常識的な話だ。もちろん、原材料高に伴う値上げによる売上増というのではダメである。

 成長の原動力で、金融緩和がターゲットにする設備投資は、輸出と高い相関があり、これに住宅投資を加えると、下図のとおり、ほとんど説明がついてしまう。デフレ時代の日本では、輸出増から景気が回復すると、すぐ緊縮に移り、消費に波及させないので、消費に応じて設備投資が増えるとか、設備投資自体に応じて増えるとかの経路がなく、なおさら、成長は輸出次第ということになる。

 サービスや賃金を上げるには、設備投資でなく、消費を増やす必要がある。昔の用語で言えば、「生産性格差インフレーション」というもので、インフレとは言うけど、輸出や製造業の所得増が波及して、人手不足を通じて得られるもので、立派な付加価値の増であり、成長である。もっとも、こちらは金融政策の問題ではなく、需要管理の領域になるが、黒田総裁は、日銀ができるように思っているのではないか。

(図)


………
 全国旅行支援が始まり、飲食宿泊で人手不足になり、派遣時給も上がっている。需要管理のやり方次第で、賃金も上がり得ることが示されている。こうして、来春に賃金が緩やかながらも上がっていったとき、日銀はどうするのか。米国の利上げは上限に達しているから、今度は逆戻りの円高局面になっていよう。この中で、金融政策を直すのは、なかなか難しい。宿題を残された次の総裁の舵取りは本当に大変だと思う。


(今日までの日経)
 国債市場「管理下」の危うさ。政府・日銀が円買い介入、7円急騰。物価上昇、31年ぶり3%。国内観光地の宿泊料上昇。円150円、円安招いた「日本病」 賃金低迷・低成長のツケ。円150円台、32年ぶり 円安でも輸出停滞。保険と税 一体で再構築せよ・田中秀明。宿泊・飲食の人手不足 深刻 「全国旅行支援」開始で首都圏。派遣時給、4職種で最高 9月。

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10/19の日経

2022年10月19日 | 今日の日経
 8月の第3次産業活動指数は、前月比+0.7と小幅の上昇で、7,8月平均の前期比は+0.0と低調だ。医療・福祉、情報通信は、消費増税前も超えているが、いかんせん、生活娯楽関連サービスの水準が低く、8月も下がってしまった。9月の景気ウォッチャーの飲食、サービスが良好だったので、回復に期待したい。それでも、7-9月期の消費は、CTIマクロからしても、なかなか厳しく、若干のプラスくらいだろうか。

(図)



(今日までの日経)
 先端技術支援に5000億円。不動産の「相続節税」転機。補正「30兆円」で金利上昇も。ゼロチャイナなら国内生産53兆円消失。バイト時給2.8%高。共産党大会 経済成長、数値目標見送り。
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門間一夫さんの愉快な床屋談義

2022年10月16日 | シリーズ経済思想
 門間一夫さんの『日本経済の見えない真実』の中で、最も感慨深かったのは、サービス業の代表として散髪を例に挙げ、需要が生産性を伸ばすことを分かりやすく説明したところ(p.101-3)だった。世間では、この「真実」が分かっていないために、緊縮財政で消費を抑圧しつつ、投資を産業政策で促進して、成長を向上させるという、分裂した戦略が、相反を知らぬまま、推し進められている。成功しない戦略にしがみつく姿は痛々しいほどだ。

………
 経営者からの「労働生産性を上げるには、どうすれば良いのか」という相談に、「賃金を上げることですね」と答えると、「何を言ってる」みたいな顔をされる。エコノミストとしては、賃金は付加価値になるから、当然の答でしかないが、経営者は、付加価値ではなく、モノやサービスの数量を増やすことをイメージしているので、ちょっと間抜けなやり取りが生じてしまうのである。

 例えば、美容室の労働生産性を上げるのなら、従業員のセンスアップを図り、高単価での散髪ができるようにするのが打ち手になる。それは賃金を上げることでもある。こうして、サービス業は、設備投資や研究開発とは、あまり関係なく、付加価値が増え、生産性も上がり、成長することになる。ただし、マクロ的には、高単価を払ってくれるお客さんのお金がどこから来ているかが問題になる。

 他の美容室のお客を奪っているだけなら、マクロ的な成長はないわけで、お客さんの消費が増えていないといけない。分かりやすい例だと、お客さんは自動車会社の人で、輸出で所得が増えたから、センスの良い散髪をするようになったというのなら、サービス業においても、付加価値が増え、生産性も上がり、成長したことになる。ここで大事なのは、投資ではなく、消費が成長をもたすという「真実」だ。

 ところが、政府が増税をして、輸出で増えた所得を吸い上げてしまうと、波及は途切れて、サービス業での付加価値、生産性、成長が消えてしまう。投資だけが成長をもたらすと信じ、消費を抑圧すると、成長は停滞する。日本が緊縮財政を始めたのは1997年からなので、それ以降、生産性が上がらず、成長も伸びなくなったのは、当然の成り行きだし、サービス業の生産性が低い理由もここにある。

(図)


………
 今後の日本の成長について、門間さんは割と悲観的だが、アベノミクスの2013-18年に、設備投資は、平均2.7%もの「高成長」をみせている。設備投資と同じくらい、消費やGDPが伸びるのは普通のことで、アベノミクスのように、消費を抑圧して、成長を停滞させる方が異常だ。そこからすると、緊縮財政の頸木から逃れられれば、意外な「高成長」を見せるのではないかと考えられる。

 もっとも、「成長には投資、投資には金融緩和、緩和には緊縮財政」というドグマから脱するのは絶望的である。なにしろ、金利が投資や貯蓄を調整するという経済学の基本原理を部分的に修正しないといけなくなるのでね。アベノミクスの異次元緩和を主導したリフレ派とは、原理に忠実な人達なんだよ。門間さんの言う「見えない真実」とは、ドグマからは決して「見えない真実」ではないのかな。


(今日までの日経)
 高所得の75歳以上、保険料上げ。政府、電気代支援1月にも。0~2歳児世帯の支援制度。円、147円台後半 32年ぶり。外国人保護、善意頼み限界。10増10減法案「了承」。雇調金拡大の後始末 負債3兆円、返済に30年。大学院生「出世払い」で支援 年収146万円から返済案。社説・給付だけでない広範な少子化対策を急げ。

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10/12の日経

2022年10月12日 | 今日の日経
 9月の景気ウォッチャーは、現状(方向性)が前月比+2.9の48.8となり、基調判断も「持ち直しの動きがみられる」に上方修正された。そうは言っても、節目の50を割っているわけだし、コロナ感染の収束で、家計関連は上向きでも、企業関連は前月比-2.0の45.5と低下している。企業関連の現状(水準)は-0.9だし、特に、製造業では、先行き(方向性)が-5.1と不安が強い。コロナ後の落ち込みからは脱しても、停滞が続いている感じである。

 今日の経済教室では、長期停滞の原因として、少子高齢化などが挙げられていたが、1997年を体験した者からすると、大規模な緊縮財政を契機に、消費の長期停滞は始まっていて、ゆっくり進んだ少子高齢化が原因とは思えない。また、アベノミクスの成長が低いのは、消費が停滞したせいで、門間さんも指摘するように、可処分所得の削減が理由だ。設備投資は、2013-18暦年の平均で2.7%もの「高成長」をみせている。長期停滞への処方箋の一つが、金利の引上げと財政再建になっていることからうかがえるように、長期停滞の原因を、緊縮財政以外で、探し求めているようにしか見えないのだが、いかがだろうか。

(図)



(今日までの日経)
 世界経済「失速」、2.7%成長 下振れ幅リーマン時超す。大卒女性、子ども数増 両立支援など影響。英長期金利、止まらぬ上昇。マンション高騰 始まった変調。主要20品目、7割で供給不足緩和。水際緩和、訪日回復に弾み 国際線予約が急増。自治体の「貯金」8.6兆円。ドル高の賞味期限は 漂う「米トリプル安」懸念。 

※大卒女性の子供数が増加したとなると、少子化の要因は、ますます経済力になる。
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重要だけど道遠い財政のコントロール

2022年10月09日 | 経済
 日銀出身の門間一夫さんが『日本経済の見えない真実』の終章に「重要性を増す財政の役割」を持ってくるとは、少し意外だった。財務省の領分は犯さないのが日銀の不文律だと思っていたのでね。むろん、門間さんの主張は、必要だし、正しい。マクロ経済を運営するのに、金融政策と需要管理は車の両輪で、独立して行うのは無理があり、日銀が財政に対して主張することは、政策的な意義がある。

………
 2014年の異次元緩和第2弾は、巷間、消費増税を促すものだと言われた。2%の物価目標を達成したいのであれば、日銀は、消費を弱める増税を諫めるべきだったろう。「財政再建がなされなければ、金利が上昇に向い、金融緩和の効果が失われる」というロジックは、現実味の乏しいものだった。もちろん、財政とは関係なく、日銀がやれることをやるというのも、一つの在り方ではある。

 もっとも、財政金融を整合させる以前の問題として、門間さんが提言するところの「財政運営に関するマクロ経済分析」が、まったく、なっておらず、どのくらい緊縮しているのかも、よく分からないありさまである。このあたりは、ぜひ、日銀にも担ってもらいたい。もし、一気の消費増税によって、どのくらい物価にデフレ圧力がかかるかを、事前に示されていたら、上げ幅を刻むなどの冷静な政策対応ができていたかもしれない。

 また、これも門間さんが指摘するように、負担・給付に関する行政インフラの整備も急務である。消費増税が政治的に刻めなければ、欧米では既に制度化されている定額給付で還元し、デフレ圧力を緩めることもできたはずだ。需要管理を行うのに必要なインフラがないために、調整しようにも手段に困るのが現状である。いきおい、効果の薄いバラマキをしてしまうことになる。 

 そもそも、無理な緊縮をしてしまう背景には、「財政赤字は将来世代の負担で、政府債務の残高の削減が必要」といった誤った思想がある。ミクロの見方を安易にマクロに用いる典型的な間違いで、門間さんも疑問を呈しているわけだが、これが財政当局の公式見解なのだから始末が悪い。正直、どうすれば誤解がとけるのか、途方に暮れる。これでは、適切な需要管理ができるわけがない。

………
 改めて説明すれば、マクロでは、借方と貸方が包摂され、その両方を将来世代が引き継ぐから、差し引きゼロとなる。あとは、国債を始末する際には、将来世代の中で、資産のバラツキがあるので、それに合わせて、どう処理するかの問題になる。いわば、資産課税をどうするかが面倒なだけで、一般にイメージされる、消費増税や社会保障の削減の必要性とは、遠いところにある。

 また、将来世代がどのくらいのモノやサービスを享受できるのかという意味での損得は、債権債務の大きさとは、直接、関係がなく、供給力が形成されているかどうかにかかっている。すなわち、財政赤字によるクラウディングアウトで、成長が阻害されない限り、将来世代の得るものが小さくなるわけではない。消費の低迷で長くデフレに沈んできた日本が、それに当てはまらないのは言うまでもない。

 米国は、リーマンショック後の回復期に緊縮財政をして、景気を停滞させた反省に立ち、コロナ後は積極財政に打って出て、いち早く、コロナ前水準を回復する成果を上げた。反面、やり過ぎのところがあり、需要がモノに集中し、供給のボトルネックが現れ、物価高を煽ることになった。どのくらい需要を出すのか、対象は大丈夫なのか、他山の石に学ぶべきことは多い。しかして、日本は、「財政再建は善」の思想をなんとかしないと、財政金融の統合戦略を語ることすらできない。

(図)



(今日までの日経)
 進む円安 細る外国労働力。インフレ耐性、所得で二分。消費、届かぬ「コロナ前」。石炭、なお最高値圏。中国成長率3.2%に減速、アジア新興国を32年ぶり下回る。中国、海外マネー流出続く。OPECプラス、200万バレル減産で合意。為替トレンド 転換点なるか 円安一服感。


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10/5の日経

2022年10月05日 | 今日の日経
 9月の消費者物価指数(東京都区部)は、総合が前月比+0.3だった。財は+0.3なのに対し、サービスは横バイである。これで、7-9月期は、財が前期比+1.5、サービスが+0.2となる。財は、1-3月期+2.1、4-6月期+1.6を受けて、いまだ上り調子にあり、サービスは、1-3月期+0.1、4-6月期+0.4だったから、加速感なく、緩慢な動きにとどまる。10月は、食品などの値上げがあったりと、財の値上がりは続く。他方、国の税収も公表されたが、8月までの累計の前年比は+7.5%と高い伸びだ。所信演説からは「分配」が消えたけれども、それで良いのだろうか。

(図)



(今日までの日経)
 富裕層所得6割に低税率を適用 財務省試算。英減税撤回、政権なお混乱。リスキリングに1兆円 物価高・賃上げに重点。「分配」消え「物価高」6回 所信表明演説。非正規雇用、このままでいいのか・小野浩。大学費用、家計に重い日本。

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キシノミクス・コロナ後は物価高による消費停滞

2022年10月02日 | 経済(主なもの)
 8月始めを境に、コロナ感染は急速に収まっていったが、今度は、物価高が前面に出て、消費は、相変わらず、実質での停滞が続く。理由は変われど、消費が停滞することに変わりはない。消費を強め過ぎ、インフレ対策に躍起になる欧米とは大違いだ。NY原油は80ドル前後まで下がって原材料高は一服し、円もいつまでも安値更新を続けるわけではない。次の消費停滞の理由は何にするのだろうか。

………
 8月の商業動態・小売業は、前月比+1.4と高めの伸びだったが、CPIの財の上昇があって、実質では+0.9に縮んでしまう。7,8月平均の前期比も+0.7になったものの、物価を勘案すると-0.4と未だマイナス圏にある。名目と実質の乖離は開く一方だ。7-9月期の消費がプラスに浮上できるかは、9月の結果次第だが、9月の消費者態度は、前月比-1.7と下がり、7-9月期の前期比も-1.9へと落ちている。消費の停滞は続きそうである。

 消費の背景になる雇用は、8月の労働力調査の完全失業率が2.5%に下がったものの、就業者は前月比-5万人、雇用者は前月比+5万人という内容で、男女とも総じて横バイの状況だ。また、8月の新規求人倍率は、2.32倍と-0.08の低下だった。前月の反動が出たようで、傾向としては、緩やかな増加にある。既に、7,8月平均は、2019年の後半くらいの水準となったが、コロナ前はパートの新規求人の水準がずっと高かった。

 好調だったのは、8月の鉱工業生産で、前月比+2.6と予想より高く、7,8月平均の前期比も+5.1と大きい。基調判断も「緩やかな持ち直しの動き」に引き上げられた。特に、資本財(除く輸送機械)が強く、前期比は+13.8にもなっている。あとは、実質の輸出が頭打ちになっている中で、どこまでいけるかだ。他方、消費財の7,8月平均の前期比は+3.9と上向いてはいても、水準がかなり低く、コロナ後の最高さえ超えられずにいる。

 建設財については、7,8月平均の前期比は-0.6にとどまる。回復傾向にあり、9月の予測値は高めであるため、7-9月はプラスが期待できるものの、コロナ前との水準のギャップは大きい。そんな中、住宅着工の総戸数は、8月が前月比9.4%と高めの伸びとなり、7-9月期はプラスに持ち込めそうである。ただし、持ち家は、この1年、低下傾向が続いていて、下げ止まっていないようである。

(図)


………
 日本の経済政策の特徴は、消費をいじめて、投資をひいきするものだ。消費は増えないのに、投資が独走で伸びるような幻想を抱いている。ワイズスペンディングの名の下に、次の経済対策もそんな形になるのではないか。それをうかがわせるのが、NHKスペシャルの「中流危機」で、企業の稼ぐ力が失われ、賃金が下方に崩れたとし、リスキリングや非正規の公平待遇を脱却のポイントとしていた。

 しかし、稼ぐ力とは、要するに売上げだ。マクロで消費をいじめていたら、企業や社員がいくら努力しても、国全体としての売上げは増えない。ミクロの頑張りで、何とかしようとするあたりは、とても日本らしい。また、ガソリンの補助も結構だが、それはガソリンの消費のための政策になる。消費を増やす政策は、何の消費を増やすのかも念頭に置く必要がある。米国はモノに集中してインフレを呼んだ。頑張ること以外に学ぶことは多い。


(今日までの日経)
 ガソリン補助、来春まで。「国防費」財源に法人税案。首相、経済対策を指示 電気代抑制など柱。10月からこう変わる 値上げの波、重荷一段と。英中銀、「年金危機」瀬戸際の回避。

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