国民年金の保険料納付を64歳まで延長することについて、「100万円も負担増!」なんて反応が出ているけれども、給付は、国庫補助が付いて、負担以上に増えるから、むしろ、「得」なんだよ。そうでなければ、財政投入に頭を悩ますこともない。こうした、目先の負担しか見ないのは、仕方のないところはあるが、後のことも考えないとね。まして、世代を超える無限の話となると想像もつかないかもしれない。
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公的年金は、親世代を子世代が支える賦課方式になっている。そのため、子世代が6割に減る少子化が起こると、10/6=1.67倍の負担が必要になって、子世代には、7割増しの分が「損」になってしまう。ここまでは常識的だが、長寿化で高齢者が増えたり、給付水準を引き上げたりして、子世代の負担が大きくなる場合は、逆の「得」が生じる。なぜなら、子世代も、老後になれば、より長い、あるいは、より多い給付を受けるようになるからだ。
経済学では「フリーランチはない」のが大原則だが、これは重要な例外になっている。世代を超える無限の期間を設定すると、「損」を引き受ける最終世代が現れないため、「得」だけが存在する形になる。反対に、少子化によって、無限の期間が綻び、最終世代が部分的ながらも現れると、「損」が出てくるわけである。別の観点では、子世代という、人的な投資=貯蓄を怠った親世代には、リターンがないのは、当然とも言える。
少子化というのは、ゆっくりとした絶滅の過程なので、これを防ぐ以上に有効性の高い財政支出はない。ワイズスペンディングを嫌い、財政赤字を縮小しながら、きれいに滅びましょうというのも、一つの美学ではあろうが、いったん少子化になっても、ある程度のところで脱却できれば、無限に戻った期間の中で、出てきた「損」を均してこなすこともできるから、あきらめてはいけない。
ちなみに、子世代に頼らない積立方式に変えたところで、最終世代には、お金を受け取って、モノやサービスを提供してくれる子世代が居ないことを申し添えておく。そんな改革をするより、少子化対策をするのが優先だろう。非正規には育児休業給付を出さない社会が、どうして少子化にならないなんて言えるのか。若者が結婚できる社会にするには、どうすれば良いか考えてほしい。
………
少子化対策で、財政赤字が膨らんだとしても、政府債務は民間債権とともに、将来世代に引き継がれるから、将来世代全体では損得がない。むしろ、財政赤字を出さずに、出生を減らしてしまえば、経済の生産力が衰退し、将来世代の得られるモノやサービスが少なくなり、その意味で「損」になる。この関係でも、少子化対策以上のワイズスペンディングはない。繰り返すが、少子化は滅びの過程であり、そこからの脱却は、永遠への復帰であって、そこには無限の価値があるのだ。
(図)
9月の労働力調査の結果は、就業者が前月比+13万人、雇用者が+20万人だったが、7-9月期で見ると+2万人と+10万人で概ね横バイの状況だ。コロナ前水準に近いところまで来たが、増加の勢いがない。9月の新規求人倍率も、前月比-0.05の2.27倍と2か月連続のマイナスで、停滞気味である。そんな中、経済対策が決定された。
第二次補正予算の規模は29.1兆円と大型だが、前年度補正後より2.7兆円少なく、予備費に積んだ4.7兆円と、税収増の3.6兆円を差し引くと、-11兆円となるから、コロナ後の財政再建としては、まずまずではないか。これだけ膨らんでも、目立った結婚支援策がないのは残念だ。非正規への育児休業給付の実現には、0.8兆円あればできるのだがね。
(今日までの日経)
労働分配率、31年ぶり低調。エネ効率改善、米の半分。対策決定、補正29.1兆円。半導体サイクル、暗転。欧州中銀、連続0.75%利上げ。米GDP7~9月、2.6%増 消費は減速。円、一時145円台前半 米の利上げ縮小観測で。習氏の兵法 経済リスクを黙らせろ。
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公的年金は、親世代を子世代が支える賦課方式になっている。そのため、子世代が6割に減る少子化が起こると、10/6=1.67倍の負担が必要になって、子世代には、7割増しの分が「損」になってしまう。ここまでは常識的だが、長寿化で高齢者が増えたり、給付水準を引き上げたりして、子世代の負担が大きくなる場合は、逆の「得」が生じる。なぜなら、子世代も、老後になれば、より長い、あるいは、より多い給付を受けるようになるからだ。
経済学では「フリーランチはない」のが大原則だが、これは重要な例外になっている。世代を超える無限の期間を設定すると、「損」を引き受ける最終世代が現れないため、「得」だけが存在する形になる。反対に、少子化によって、無限の期間が綻び、最終世代が部分的ながらも現れると、「損」が出てくるわけである。別の観点では、子世代という、人的な投資=貯蓄を怠った親世代には、リターンがないのは、当然とも言える。
少子化というのは、ゆっくりとした絶滅の過程なので、これを防ぐ以上に有効性の高い財政支出はない。ワイズスペンディングを嫌い、財政赤字を縮小しながら、きれいに滅びましょうというのも、一つの美学ではあろうが、いったん少子化になっても、ある程度のところで脱却できれば、無限に戻った期間の中で、出てきた「損」を均してこなすこともできるから、あきらめてはいけない。
ちなみに、子世代に頼らない積立方式に変えたところで、最終世代には、お金を受け取って、モノやサービスを提供してくれる子世代が居ないことを申し添えておく。そんな改革をするより、少子化対策をするのが優先だろう。非正規には育児休業給付を出さない社会が、どうして少子化にならないなんて言えるのか。若者が結婚できる社会にするには、どうすれば良いか考えてほしい。
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少子化対策で、財政赤字が膨らんだとしても、政府債務は民間債権とともに、将来世代に引き継がれるから、将来世代全体では損得がない。むしろ、財政赤字を出さずに、出生を減らしてしまえば、経済の生産力が衰退し、将来世代の得られるモノやサービスが少なくなり、その意味で「損」になる。この関係でも、少子化対策以上のワイズスペンディングはない。繰り返すが、少子化は滅びの過程であり、そこからの脱却は、永遠への復帰であって、そこには無限の価値があるのだ。
(図)
9月の労働力調査の結果は、就業者が前月比+13万人、雇用者が+20万人だったが、7-9月期で見ると+2万人と+10万人で概ね横バイの状況だ。コロナ前水準に近いところまで来たが、増加の勢いがない。9月の新規求人倍率も、前月比-0.05の2.27倍と2か月連続のマイナスで、停滞気味である。そんな中、経済対策が決定された。
第二次補正予算の規模は29.1兆円と大型だが、前年度補正後より2.7兆円少なく、予備費に積んだ4.7兆円と、税収増の3.6兆円を差し引くと、-11兆円となるから、コロナ後の財政再建としては、まずまずではないか。これだけ膨らんでも、目立った結婚支援策がないのは残念だ。非正規への育児休業給付の実現には、0.8兆円あればできるのだがね。
(今日までの日経)
労働分配率、31年ぶり低調。エネ効率改善、米の半分。対策決定、補正29.1兆円。半導体サイクル、暗転。欧州中銀、連続0.75%利上げ。米GDP7~9月、2.6%増 消費は減速。円、一時145円台前半 米の利上げ縮小観測で。習氏の兵法 経済リスクを黙らせろ。