ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
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最近の講演会内容・・・みなさんの復習をかねて

2024年01月30日 | 投資は米国債が一番

 しばらくブログの更新ができなくて、申し訳ありませんでした。理由は講演会が続いたこと、そしてその間にスキーも志賀高原と赤倉高原ホテルスキー場と2回続いたことによります。仕事もさることながら、好きな遊びにも追われていました(笑)。

 スキー場は相変わらず外国人スキーヤーが多く、日本人のスキー人口減少を補い、スキー場経営や地元に貢献してくれていますので、大歓迎です。私はゴンドラやリフトで一緒になった方とは日本人外国人を問わず、必ず話をするようにしています。それは10分~20分にもなる搭乗時間をとても楽しくすることにもなります。一日で10回はゴンドラなどに乗るため、20人近い方と会話ができるのです。

 では今回出会った方で印象に残った方とのエピソードを2つ。一人目はゴンドラに乗り合わせたオーストラリア人女性とのお話。40歳台くらいの彼女は家族や友人たち7人で日本にきているのですが、まず東京に3日滞在。そして長野県のスキー場に移動してキチネット付きコンドミニアムに滞在し、地元のスーパーで買い物をして自炊しているとのこと。実はこうした自炊組はとても多いと感じます。しかも3ベッドルームのコンドでルームシェア―をするため、1週間単位で滞在してもコストはとても安く抑えられると言っていました。

 その後彼らは大阪に移動、さらに京都見物をして合計2週間の日本滞在をエンジョイするとのこと。日本ではすべてがバーゲンセールだと言っていました。そして彼女の仕事はかつての私と同じインベストメント・バンカー。話が合って楽しい時間を過ごせました。

 

 二人目はスキー場までわずか30分くらいで来られる新潟県の直江津市から来た20歳台の男性。地震のことを聞いてみると、「いやビックリしたし結構被害がありました」とのこと。家中でたくさん物が落ちて食器類がかなり壊れたこと。そして近所では液状化現象が起きていたそうです。そのためいつもなら正月早々スキーを始めるのに、今になってやっとスキー場に来たと言っていました。やはり震災の影響は広範囲にあったんですね。

 

 次は私の2回の講演会内容をみなさんにお知らせします。初めは高校まで在籍した成城学園の同窓会からの依頼で、私と同世代の70歳台、あるいは少し若い世代の50名ほどの方を対象に行いました。そして次は同世代の友人が主催する経済金融問題研究会の例会で行いました。こちらのメンバーはほとんどが70歳台60歳台で、金融機関出身者や研究機関在籍者が多く、錚々たるキャリアをお持ちの方々でした。

 

 以下が講演会で配布したプレゼンの項目と内容の要約です。元の資料がパワーポイントのため、行間などがまちまちですが、その点はご容赦ください。

 

講演会タイトル;ストレスフリーの資産防衛

副題;政府主導のNISAに騙されず、自身と子供たちのためにも賢く備える

 

1.アベノミクス検証

・政府が低金利を頼り、放漫財政により累積赤字を積み上げた

・独立しているはずの日銀が政府と一体になりアベノミクスを推進

・日銀は国債を買いまくり市場にオカネをばらまいたつもりが、日銀に巨額のブタ積み当座預金500兆円が残っただけ

・我々の手元にオカネは届かず巨額の累積赤字でおびえることになった

・家計は防衛に走り、2千兆円の金融資産が積み上がっているが、株などの投資には向かわず1千兆円も現預金に滞留。しかしNISAの掛け声に動きが出始めた

・企業も自己防衛のため500兆円の内部留保を預貯金で貯めこんでいる

・そもそも金融政策では経済成長力をアップできない

 

2.アベノミクスにもかかわらずGDPは大幅減少

円建てGDP   アベノミクススタート時500兆円、現在590兆円、  年率わずか0.9%の成長

ドル建てGDP スタート時 6.3兆ドル、現状4.1兆ドル 3分の2へ減少

(ドル円レート86円→140円 4割の円安)

・世界を見るには、基準をドル建てで考えるクセをつけるべき。でないと世界を見誤る

・一人当たりGDPの比較では、かつてトップクラスだった日本は韓国と同レベルで30位程度にまで落ち込んでいる

 

3.破綻に向かう日本財政

・23年度予算 歳出額115兆 歳入80兆 単年度赤字35兆

・単年度赤字を国債発行でまかなうが、実際の国債発行額は大本営発表の35兆円ではなく、 23年度は借換債を含む236兆円と巨額

・国債累積発行残高1,000兆円、借入金含む債務総額はGDP比250%

・日本財政破綻のきっかけは円安インフレ金利上昇、国債を抱えすぎている政府日銀への信頼喪失、格付け低下による資本逃避

・MMT理論や日銀と政府を合算すれば借金は無くなるというナンセンスな議論、最近は聞かなくなった

・バラマキで破綻しないなら、税金など徴収しなければよい

世界中の国々も同様にすれば国家破綻はなくなる

 

4.破綻への備えは外貨資産へのシフト

・円安のインパクトとは金融資産に対してだけではない。将来の給与や退職金、年金、不動産、すべてが円建て

・防衛策は外貨建てへの転換

・しかも超安全なドル資産に限る

5.備えあれば憂いなし

・成長段階を終えた日本に、安全地帯はない

・世界で一番安全な金融資産=米国債

  根拠は

・イノベーション力、人口増加+優秀人材吸収力

・世界最強の軍事力+エネルギーと食料の自給

 

5.米国債投資の驚くべき投資実績

・1冊目の著書の出版時2011年まで・・・1981年に30年債に投資し2011年に償還を迎えたケースでは、ドル建て元本は24倍、ドル円レートは240円が3分の1の83円になっていたがそれでも8倍になった

・2冊目の著書の出版時・・・同様に1993年に30年債に投資し、2023年に償還を迎えたケースでは円で7.8倍になった

・1冊目の出版時2011年に米国債30年物に投資をすると、現状でドル建て元本は100が172、ドル円は83円が140円。すでに両方で290%にもなっている

 

6.1ドル150円でもまだ買える米国債

  • 1,000ドル、15万円から買える米国債

 1ドル150円で1千ドルの米国債を買うと、15万円必要

 米国債は複利運用が可能、金利4%でも威力抜群

 10年後に1,000ドルが約1,500ドルに

 円高に転じた場合のブレーク・イーブンは100円

 計算は 150,000円 ÷ 1,500ドル = 100円

 もしドルが150円のままだと、10年後は225万円になる

 1,500ドル X 150円 = 225万円・・・1.5倍

 

7.世界の金融資産、半分以上は債券

・22年5月初旬の時点で債券が6割

・株式時価総額 100兆ドル

・債券残高総額 120兆ドル

 世界の投資家は平均で6割を債券に投資

・日本の債券残高1,300兆円、株式時価総額1,100兆円

・日本では債券投資が成立しなくなり、ギャンブル性の高い株式投資だけになっている

・政府は非課税枠NISAでの債券投資を認めていない

・日本を含む各国の年金運用は国債がメインだが、日本ではほぼ不可能になりつつあるため、年金も株式にシフトしている

 

8.米国債の買い方

・「証券会社は売りたがらない」が、どうしても欲しいと言えば買える

・1,000ドル単位、1年~30年物まで

・種類は若年層向け複利運用のゼロクーポン債、あるいは2回利払いを受けたい高齢者の場合は利付債

・実際には新規発行分は買えない、日本の証券会社が買い付けた既発債の在庫のみ

・証券会社の外債サイトで売り物の一覧表がある。ブレーク・イーブン為替レートも表示されている

 

8.証券会社と生保に騙されるな

・米国債を買いたいというと、「債券ファンド」を薦めるのが常とう手段。毎年のフィー収入が欲しいため。ファンドは手数料を毎年取られるだけでなく、元本の変動が激しく、売り時を計るのは困難で、株式ファンドと同じ

・債券は償還期限(満期)まで持ち切れば、必ず100%で償還

・生保は外貨建て年金を薦めるが、これは生保にフィーを払って米国債を買うようなもの。しかも売りたいときに売れない

9.投資の安全性は流動性がすべて

・高い流動性とは、いつでもいくらでも売りたいときに売れ、買いたいときに買えること。代表格が米国債

・国が市場を閉鎖したり、価格に介入したりする資産ほど危険な資産はない

・日本国債は日銀が保有しすぎているため、全く売買のできない日がしょっちゅうある

・流動性が高いか低いかの判断基準は、売りと買いの売買スプレッド=差額が大きいものほど、流動性が低い

 

   以上がプレゼンテーションの内容です。みなさんには従来からお伝えしている内容が大半ですが、その復習としてどうぞご活用ください。

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17 コメント

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債券ファンドと株式ファンドならどちらがマシですか? (名無しの権兵衛)
2024-01-30 14:28:27
先生の教えに従い、基本貯蓄性資産はすべて米国債へと投資しています。
しかしながら、NISAのみならずideco枠でもやはり米国債の投資は認められておらず、「仕方なく」外貨建て債券ファンド(先進国国債)への積み建てをしています。私は所得税率が50%(国税+住民税)あり、idecoの所得控除枠を使わないのは非常にもったいないと考えており、年間28万円程度ですがidco投資を続けております。

債券ファンドが「ダメ」なのは先生の教えを通して重々承知しているのですが、私のような場合
①idecoの所得控除枠(投資した金額の50%とられる税金が減る)を使わずにその分米国債投資回する

②idecoの枠を利用し、外貨建て債券ファンドへの積み立てを続ける

③ideco枠は使うが、外貨建て株式ファンドへの積み建てに切り替え

どれが推奨されますでしょうか?
基本的な投資スタンスは外貨(米ドル)の為替変動リスクの受け入れは可能。でも株式の変動リスクは避けたいです。しかし、株式ファンドに比べても債権ファンドはいいところがないのか??と最近悶々としているところだったのです。
Unknown (佐藤 大輔)
2024-01-31 16:31:22
講演会内容の掲載ありがとうございます。大部分はこのブログや林さんの著書で勉強した内容ですが、要点を簡潔に示してくださっており、知識の定着や自分への戒めなど、色々な意味で復習になりました。
新NISAの狂騒の最中、私は、「政府は非課税枠NISAでの債券投資を認めていない」ことが大変不満です。
新NISAについては、「成長資金の供給拡大」と「家計の安定的な資産形成」をその目的と謳っていますが、笑うしかないですね。
30年債の利回りがまだ4%を超えていますので、世間の騒ぎは無視して昨年11月に発行された利率4.75%のものをオーバーパーですが淡々と購入しています。
Unknown (goo)
2024-02-01 01:09:52
はじめまして。
三ヶ月前に書店で手にした林様の著書をきっかけに、金融資産の3分の1を債券に振り分けることになりました。
今は購入した林様の著書を2回目読んでいるところです。
疑問に思うことがあり質問させていただきます。

著書の中で利回りの観点から繰り返しゼロクーポン30年を勧めておられたと思います。
現在長短金利が逆行しております。
この場合もやはり30年を購入すべきでしょうか。
今は利回りが劣っていますが、将来長期金利が短期金利を上回る時、20年より30年を買っておいて良かった…となるということでしょうか。
Unknown (本買いました)
2024-02-01 08:15:59
講演会内容とても参考になりました。

本を読んだきっかけで米国債中心で運用しています。
株だと、値動きで一喜一憂して触ってしまいがちでしたが、債券だと比較的安心して持ち続けられています。

引き続きの情報発信、楽しみにしています。。
佐藤大輔さんへ (林 敬一)
2024-02-01 11:51:12
コメントいただき、ありがとうございます。

>要点を簡潔に示してくださっており、知識の定着や自分への戒めなど、色々な意味で復習になりました。

それはよかったです。

>30年債の利回りがまだ4%を超えていますので、世間の騒ぎは無視して昨年11月に発行された利率4.75%のものをオーバーパーですが淡々と購入しています。

利付債でしっかりと定期的収入を得るのであれば、オーバーパーでも超長期債の高クーポン物は正解だと思います。
gooさんへ (林 敬一)
2024-02-01 11:56:05
>三ヶ月前に書店で手にした林様の著書をきっかけに、金融資産の3分の1を債券に振り分けることになりました。今は購入した林様の著書を2回目読んでいるところです。

著書をお読みいただき、ありがとうございます。

>著書の中で利回りの観点から繰り返しゼロクーポン30年を勧めておられたと思います。

若い方で毎年の利子収入を必要としない方であれば、という注釈付きです。


>現在長短金利が逆行しております。
この場合もやはり30年を購入すべきでしょうか。
今は利回りが劣っていますが、将来長期金利が短期金利を上回る時、20年より30年を買っておいて良かった…となるということでしょうか。

そもそも著書は平常時を前提に書いています。イールドの逆転は異常時ですので通常時の論理は適用できません。

>今は利回りが劣っていますが、将来長期金利が短期金利を上回る時、20年より30年を買っておいて良かった…となるということでしょうか。

投資後の利回りは償還まで不変ですから、市場で逆イールドが解消してもご自分の債券のイールドは変化しません。
投資期間が20年でもよいという判断であれば、それでよいと思います。
20年後のイールドカーブを予測するのは不可能です。

参考になりますでしょうか。
名無しの権兵衛さんへ (林 敬一)
2024-02-01 12:06:24
素晴らしい税率ですね(笑)。
名無しの権兵衛さんのお悩みは贅沢なお悩みですね。ということは、そもそも投資をして増やしても使い切れないほどの資産をお持ちだと推量します。

そしていつも申し上げますが年齢や総資産などの情報抜きの回答は難しいです。さらにまた配当ありと配当なしのファンドの差もあります。名無しの権兵衛さんの場合、多分配当は不要でしょうが。

もっとも税率が50%でも、源泉分離であれば20%ですよね。

それら一切を無視して回答するなら、ファンドは長期保有を前提とした米国株中心のファンドでしょうね。
債券ファンドは成長しませんので、むしろ超長期のゼロクーポン債に分があると思います。

そしてもちろん日本株ファンドはいけません。

暴落時や暴騰時も無視して長期継続で投資するのであれば、成長する国、つまりはアメリカ中心にオカネを置くのが得策でしょう。
Unknown (goo)
2024-02-01 22:18:49
早々にご丁寧な回答をいただきありがとうございました。
勉強不足でお恥ずかしい限りです。
3回目も熟読すべきだと悟りました…。

出版社ではなく著者に直接質問、意見、感想、お礼を伝えることができるのは珍しい事です。
しかも質問の回答までいただけるとは。
林様ご自身の著書に対する自信、読者に対する責任や真心を感じました。
本当にありがとうございます。
きっと20年後にはもっと大きなありがとうを申し上げられると確信いたしております。

さて、追加で質問があるのですが、
2621 米国債20年超ヘッジありETFについて可能でしたらご意見をよろしくお願い致します。
Unknown (名無しの権兵衛)
2024-02-02 09:24:59
状況提示が不十分な中丁寧にご回答いただきありがとうございました。
とりあえず、債券ファンドに積み立てを続けることにはメリットが無さそうなので、米国株式中心のファンドへのスイッチングを早々検討して参る所存です。

蛇足ではありますが
私の収入はちょうど所得税率が上がる境目付近でありまして、手取りは大したことなく、使いきれないほどの余裕があるわけでは決してございません(笑)
だからこそ米国債投資のメリットを説いてくださった林先生には大変感謝しております。
わ、
gooさんへ (林 敬一)
2024-02-02 09:53:54
コメントをいただいた記事の中の8.に投信は買ってはいけないと書きました。

著書の119ページにも同じことが書いてあります。
債券の投信のパフォーマンスのひどさは、悲惨なものがあります。

gooさんの検討されているETFのHPは以下のとおりです。
https://www.blackrock.com/jp/individual/ja/products/316089/

価格のグラフを見ればひどさは一目瞭然ですよ。

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