1988年来日公演もそろそろ終盤だ。もうひとがんばり。第九を6回やればミュンヘンに帰れる。この日はこんな感じ。
1988年12月10日(土) 19:00 サントリーホール
ベートーヴェン 交響曲第9番 合唱付き
ソプラノ、アンナ・トモワ=シントウ
アルト、コルネリア・ウルコップ
テノール、ペーター・ザイフェルト
バリトン、ベルント・ヴァイクル
ヴォルフガンク・サヴァリッシュ 指揮 バイエルン国立歌劇場
なかなかあり得ないキャストである。劇場来日公演のおかげである。
シントウはその10年前の1979年に、カラヤン/ベルリン・フィルの第九公演でも歌っている。あの普門館で。
スリムで見下す目つきにやられたものだが、10年も経つとすっかり丸く。その間の1980年代のメトでのばらの騎士などについてはまたいつか書くことがあるかと思う。
それよりも、第九の歌は神棚にあげて、オーケストラを聴いてみよう。オペラの熱気がいまだ冷めやらぬという感じで、熱いオケサウンド。と思いきや、
思わぬほど細めの音であったようだ。ワーグナーのうるさいドタバタサウンドを予想したがことのほか細めの繊細な音であったと記憶する。まず、ギーギーとうるさいフォルテはない。少し肩に力の入った細めの音。緊張なのか。音楽に余裕が感じられない。これはオペラオーケストラ特有のものなのか。オペラではよく最初は熱がはいらず演奏が進むうちに徐々に熱してくる場合がある。このオケは普段でもコンサートを行っているはずであるが、今回は来日公演で集中的にオペラをやりすぎて、矯正できなかったのかもしれない。演奏としてはいたって普通。おそらく六回目の第九が一番良かったと推測する。
サヴァリッシュの棒は几帳面でオーソドックス、奇を衒うこともなくありのままに進んでいく。日常的なトレーナーという意味ではどうなのか。練習風景を見たこともないので何とも言えないが、そんなにきつい先生ではないのではないか。サヴァリッシュはバイエルンを卒業した後、フィラデルフィア・オーケストラに移ったが、素人ではわからない万有引力の法則があったのかもしれない。
おわり