河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2723- ミカエル・ジャレル、エチュード、ベーブング、分岐された思考、無言歌、エコ、分岐、サントリーホール サマーフェスティバル 2019、2019.8.26

2019-08-26 23:18:30 | 室内楽

2019年8月26日(月) 6:05pm-6:58pmギリギリまで ブルーローズ、サントリー

トーク プレ・コンサート ミカエル・ジャレル、細川俊夫


2019年8月26日(月) 7pm-9:10pm ブルーローズ、サントリー

ミカエル・ジャレル 作品

 エチュード ピアノのための(2011)   11
   ピアノ:永野英樹

 『ベーブング(ヴィブラート)より』 クラリネットとチェロのための(1995)  20
   クラリネット:上田希
   チェロ:多井智紀

 『...分岐された思考...(ナッハレーゼⅦb)』 弦楽四重奏のための(2015) 4-4-4-7+2
   ヴァイオリンⅠ:辺見康孝
   ヴァイオリンⅡ:亀井庸州
   ヴィオラ:安田貴裕
   チェロ:多井智紀

Int

 『無言歌』 ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための(2012)  11
   ヴァイオリン:辺見康孝
   チェロ:多井智紀
   ピアノ:永野英樹

 『エコ』 声とピアノのための(1986)  8
   ソプラノ:太田真紀
   ピアノ:永野英樹

 『分岐(アソナンスⅠc)』 アンサンブルのための(2016)(日本初演)  12
   指揮:キハラ良尚
   フルート:上野由恵 
   クラリネット:上田希
   バス・クラリネット:山根孝司
   打楽器:神田佳子
   ピアノ:永野英樹
   ヴァイオリン:辺見康孝
   ヴィオラ:安田貴裕
   チェロ:多井智紀
   コントラバス:地代所悠



サントリーホール サマーフェスティバル 2019
~サントリー芸術財団50周年記念~
サントリーホール 国際作曲委嘱シリーズ No. 42
(監修:細川俊夫)
テーマ作曲家〈ミカエル・ジャレル〉
《室内楽》




恒例サントリーのサマーフェスティバル、今年のテーマはミカエル・ジャレル。細川俊夫がベルリン芸術大学からフライブルク音楽大学に移ったときに同じクラスにいたということだから同じような年代、環境で空気を吸っていたわけだ。
この日はオール室内楽で6作品。全部初めて聴く。おしなべて規模が大きい。大規模でヘヴィーな作品群。室内楽の編成ではあるのだが多彩な音色。ピツィカートの多用。短切音とそれの連続。関連した音高で次々と推移。3曲目の弦四による分岐された思考は、明確な形式、緊張感あふれる音楽。第2楽章のピツィカートによるスケルツォ風味、終楽章に付けられたピツィカートはコーダ風であり、連関を感じさせる作品で圧巻、特に印象的な作品でした。

細かい解説は分厚いプログラム冊子に書いてあるので、それを事前に手に入れておいて読んで臨むもロングな作品群に立ち向かうのはそう簡単ではない。


エチュード
ソロ・ピアノの曲。フランツ・リストにもとづくという言葉が添えられていて、かつ、エリオット・カーターに捧げられてる。といったあたりのことを頭に置きながら聴くことに。
思いついたような叩きつけ、短い音の粒とフレーズ。後半はだんだんと緩くなり弱音終止。
ピアノが共鳴機になっていくという思考のプロセスを追えればそこそこ理解はできるものかもしれないが、そこまでには至らない。

ベーブングより。
クラリネットとチェロの作品。ベーブングという別の作品から派生した作品とのこと。
ベーブングというのはクラヴィコードにヴィブラートをかけること、もしくはその奏法。だそうで、この原理を他楽器のアンサンブルに適用。音を引き継いでいき変調していく行為。
チェロはピツィカートを多用する。クラリネットは呼吸するようなプレイ。果たして上に言われるようなことが現象として発生したのかどうか、わからない。

分岐された思考
本日の作品群の中で一番の充実した作品。形がわかるので理解しやすいというのもあるかもしれない。
節目ごとのタイミングが、4-4-4-7-2。第1,2,3,4楽章と2分のコーダ、と、勝手に楽章数をつけてしまったが、そのような理解だ。
第2楽章はスケルツォで最後は減衰しながら終わる。第3楽章も跳ねる音楽。終楽章の進行は最後にコーダ風に付けた全部ピツィカートの収束するフィニッシュ。ここは第2楽章を思わせるもので、総じてこのように関連性が印象付けられる箇所があり、一つのまとまった作品としての充実度が感じられる。聴きごたえ満点でした。


以上3曲、ここで休憩。


無言歌
ピアノ三重奏曲。いわゆる無言歌と何が違うのか、弦に歌が現われてくる。
何種類かの緩急テーマが散らばる。散文的に漂流する。流れを聴くのみで、これもよくわからない。

エコ
ソプラノとピアノ。ルイス・デ・ゴンゴラのソネット80番にもとづくもの。プログラム冊子に日本語対訳がついているので理解しやすい。
その歌詞の内容の抑揚、歌う声の抑揚、これらが音楽の抑揚として一致している。声が入ると一気に雰囲気変わりますね。

分岐
これは比較的規模の大きいアンサンブルの作品。この日の締めくくりの曲としてここに置いたものだろう。
色彩感、多彩な音色、インストゥルメントの多さがそのまま多彩なミュージックを作っている。相応な面白さあったけれども、この日の6作品では一番できの悪い作品のように聴こえた。

以上合計6作品。プレイヤーたちの腕前は大したもので、こうやって演奏されてこその現代音楽と思う。絶賛。

6つ聴きましたけれども、3曲目の弦四のための作品が手ごたえありました。総じて、もう一段、ほりの深さが欲しいものだ。偽らざる実感でしたね。
おわり









2722- バッハ、パルティータ1番、ベートーヴェン、ピアノソナタ11番20番21番、今野尚美、2019.8.24

2019-08-24 23:22:39 | リサイタル
2019年8月24日(土) 2pm 汐留ベヒシュタイン サロン・ホール

J.S.バッハ パルティータ第1番変ロ長調BWV825  2-2-1-2-2-1

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第11番変ロ長調op.22  5-6-2-6

Int

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第20番ト長調op.49-2  3-4

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第21番ハ長調ワルトシュタインop.53  9-3-10

(encore)
2
4

ピアノ、今野尚美


今野さんのこの日のシリーズ名はベトソナ全曲第9回とバッハ鍵盤シリーズ第4回ということでシリーズが連立。バッハが1曲、ベトソナ3曲。まあ、ベトソナお目当てで。

ベトソナ11番は4楽章モードで、第2,3楽章あたりまではそのままシンフォニーにでもなりそう。シンフォニックな魅力に浸れる。後半は徐々にピアニスティック、終楽章はピアノの魅力全開。今野さんのピアノはすごく切れの良いもの、そして左手が温かい。終楽章はピアノ的なやつしがなくて、過度な主張は横に置きベートーヴェンに語らせる。これは気持ちの良いベートーヴェン。

後半20番はさっきの11番をさらに押しすすめたプレイ。ただそもそも最初期の作品で、息抜きの明るさ。

最後のワルトシュタインはドラマよりも進行にウェイト。くさびを打っていくような演奏とはちょいと違うもので、こういう横の流れのワルトシュタイン、気づきの多いものでした。
名曲は多様な解釈をすべて許す、というか、飲み込む。

冒頭に置かれたバッハ、パルティータ1番。ベトソナの間に置いたらどうなっていただろうかという思いが、あとになって湧いてきた。これは聴くほうのわがままで贅沢なものいいだろうねきっと。ちょっともっと真剣に聴くべきでした。バッハの流れに身をゆだねて油断大敵。

今野さんは座ってすぐ弾き始めます。

素敵なリサイタルでした。ありがとうございました。
おわり








2721- シモン・ボッカネグラ、柴田真郁、エルデ・オペラ管弦楽団・合唱団、2019.8.18

2019-08-18 23:01:14 | オペラ

2019年8月18日(日) 4pm-7:15pm モーツァルトホール、かつしかシンフォニーヒルズ

ヴェルディ シモン・ボッカネグラ (演奏会形式、日本語字幕付き) 26-34-20-28-26

キャスト、in order of voices’ appearance
1.パオロ、千葉裕一(Br)
2.ピエトロ、木村雄太(Br)
3.シモン・ボッカネグラ、渡辺弘樹(Br)
4.フィエスコ、ジョン・ハオ(Bs)

5.アメーリア、高橋絵理(S)
6.ガブリエーレ、寺田宗永(T)

エルデ・オペラ合唱団
エルデ・オペラ管弦楽団
指揮、柴田真郁


プロローグ 26
Int
第1幕第1場 34
第1幕第2場 20
Int
第2幕 28
第3幕 26


柴田真郁の指揮ぶりがよくわかる演奏会形式、歌い手たちのコンディションもとてもよくて、この透明ブルーなオペラを味わい尽くしました。

昨今は休憩回数の少ないオペラ上演が目につきますが、この日のシモンはプロローグが済んだところでまず一服。ここでの休憩は納得のいくものですね。ここで流れは一旦止めるべきと思います。そのあと2場構成の第1幕が済んだところでもう一度休憩。良い形と思います。

配置は、前方にオーケストラ、その後方にソリスト、最後方が合唱という布陣。
第1幕2場の五重唱はよく映えるものでした。とはいうものの全体をコントロールする真郁はプロローグ、第1幕とかなり大変そう。

オーケストラは2回目の休憩の後のチューニングで目覚め、ピッタリと揃えた。2幕3幕が圧巻でした。エンジンがもっと早めにかかるとさらによかった。

ソリスト6人衆と合唱は丁寧な縁取りで濃い熱唱で先に進むにつれてドンドン乗ってくる。メリハリのきいたもので存分に楽しめましたね。シモンはやるほうだけではなくて観るほうも手ごたえ十分なオペラですからね、心地よい充実感に浸りました。
真郁の距離感を保ちつつの押し引き、なかなか味な棒。オペラ沢山振ってますからね。安心してみていられます。
ありがとうございました。
おわり









ジョン・ハオ、フィエスコ


高橋絵理、寺田宗永、アメリアとガブ


渡辺弘樹、シモン





 










2720- チャイコフスキーPC1、藤田真央、ベートーヴェン7番、小林研一郎、日フィル、2019.8.7

2019-08-07 23:56:05 | コンサート

2019年8月7日(水) 3pm ミューザ川崎

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番変ロ短調op.23  21-7+7
  ピアノ、藤田真央

(encore)
リスト 愛の夢 第3番  5

Int

ベートーヴェン 交響曲第7番イ長調op.92  12-9-11+6

(encore)
ダニーボーイ  3


小林研一郎 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団


フェスタサマーミューザKWASAKI2019。
藤田さんは表参道のパウゼの頃から聴いていて、昨今のブレークぶりにびっくり。

ミューザの4階正面かぶりつき席、ものすごくいい音が飛んでくる。ピアノの音が、コロモが取れたようにすっきりと聴こえてくる。オケに埋もれることなく抜けてくるピアノ。弾きまくっても荒々しさ皆無でいかにも好調、実感ですね。パワフルさと細やかさ、表情を変えながら次々と奏でられる。美演満喫。最後はエキサイティング。

後半のベートーヴェン7番。響きがいかにも様になっているベートーヴェン・サウンド。プレイヤーが響きを知っているから鳴る。レパートリーだろうし、当然といえば当然か。
全体の佇まいはいまひとつ微熱でしたけれども、スケルツォ、スローなトリオ、面白くも余裕のルーチンワーク。
アンコールは例によってダニーボーイ。日フィル充実の深い弦を堪能しました。
おわり













2719- ベートーヴェン、ピアノソナタ31番、シューマン、謝肉祭、チャイコフスキー、18の小品、松田華音、2019.8.6

2019-08-06 23:28:46 | リサイタル

2019年8月6日(火) 7pm ヤマハホール、銀座

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 Op.110  8-2-10

シューマン 謝肉祭 「4つの音符による面白い情景」 Op.9  25

Int

チャイコフスキー 18の小品 Op.72 より  44
 1.即興曲
 2.子守唄
 4.性格的舞曲
 6.踊りのためのマズルカ
 7.演奏会用ポロネーズ
 8.対話
 12.いたずらっ子
 13.田舎のエコー
 14.悲しい歌
 16.5拍子のワルツ
 17.遠い昔
 18.踊りの情景、トレパークへの誘い

(encore)
チャイコフスキー 18の小品 Op.72 より 11.ヴァルス・ブルエッテ  2


ピアノ、松田華音


なんだか頼もしいというか心強いというか度胸がすわっているというか、実績凄そう。ツワモノな雰囲気濃厚ですね。惹きつけられる。
ベトソナでは31番が今のところお気に入りナンバーワンの曲。これまで聴いてきた31番とは随分と異次元のフレーバーテイスト。スタティックで不思議な静止衛星のようなユニークな演奏でした。何かディスカバリー。終楽章の2回にわたる嘆きの歌に殊更にフォーカスしているわけではなくて、それはこちらが思っているものと焦点が少し異なっているというだけの話で、全ての事に均等に配慮されたプレイ。等速の歩みということなのかもしれない。さてどうやってフィニッシュにもっていくのだベートーヴェン、エンディングのまとめ上げた歌い口がグワシと効いたお見事プレイ。印象深い演奏。32番も彼女のピアノで聴きたくなりました。

次のシューマンはもっと溌溂としていて意思が強靭、強さの中に表情がある。シューマンの情景、それよりも情がジワッと出たもので、ベートーヴェンとの対比が印象的。

今日の彼女のメインディッシュはチャイコフスキー、18個の小品のうち12個ピックアップ。この45分にわたる絵巻物、得意物件なのでしょうね。素晴らしい内容に舌鼓。満喫しました。
なによりも各ピースについている副題。これを眺めつつ聴くだけで表情がピッタリと重なってくる。伸縮自在なプレイと感じたのは、ひとつの小品の中での表情、それと全体を聴き終えた後の小品毎の異なる味付け、表情。それらが凄く副題に沿ったイメージで、聴かせてくれたなという、それでいて一つの大きなまとまりとなっていたな、という見事なコンクルージョン聴後感。大きな感動の圧力に襲われました。ビューティフル、お見事プレイ
ありがとうございました。
おわり

























2718- ジャン・チャクムル、ピアノ・リサイタル、2019.8.5

2019-08-05 23:00:56 | リサイタル

2019年8月5日(月) 7pm トリフォニー

ショパン ワルツ第1番 変ホ長調 作品18 華麗なる大円舞曲  5

メンデルスゾーン 幻想曲 嬰へ短調 作品28スコットランド・ソナタ  5-3-5

J.S.バッハ イギリス組曲第6番 ニ短調 BWV811  7-3-3-4-4-2

Int

シューベルト ピアノ・ソナタ第7番 変ホ長調 D568  7-4-5-6

ショパン 24の前奏曲 作品28より   2-2-5-1-2
   第6番 ロ短調、第7番 イ長調、第8番 嬰ヘ短調、
第15番 変ニ長調(雨だれ)、第23番 ヘ長調、第24番 ニ短調

バルトーク 野外にて Sz.81  2-3-2-5-2

(encore)
シューベルト(リスト編) 水車屋と小川   5
            (美しき水車小屋の娘 第19曲 D795-19)

ピアノ、ジャン・チャクムル



2018年浜コンチャンピオン。お初で聴きます。5作曲家6ピース並べたリサイタル。
休憩をはさむようにバッハとシューベルトが大きい。他のピースもそこそこ規模の大きなもの。レパートリーを楽しんだ。心地よい聴後感。

スコットランド・ソナタいいですね。いわゆる4楽章形式のソナタの初楽章が無くて第2楽章から始まっているかのような所作。その初めの楽章は雰囲気がリフォメーション第3楽章を思わせる。涙雨、しだれ柳の音楽。なかなかのいいモード。マーベラス・パフォーマンスでした。濡れて光る美演。

バッハは切り替えて、この規模感ですからね。見事な蛇腹のような絵巻物の音楽に惹かれます。息が続いていく。端正な表現でバッハを味わう。ライトレフトが明瞭分離で分かりやすく美しい。騒ぎ立て皆無で自在なバッハでした。

後半の最初の作品シューベルト、このあと同サイズのが2曲控えているとはいえ、一番しっくりとくるプレイだったかな。バッハからさらに一段踏み込んだ趣きがあり、ウェット・ドライの振幅が曲想によくマッチ。うねりがナチュラルな響きで申し分ない。

そういう流れでして、ショパンは華麗というよりも端麗な趣か。

最後に置いたバルトークはダイナミックなもので豊かな表情、これも得意物件なんだろうね。
いいリサイタルでした。ありがとうございました。
おわり








2717- キャリック、ライヒ、カーター、リチャーズ、ロックウッド、ホブタ、クラム、第5回 両国アートフェスティバル2019、アメリカに見る創造精神、2019.8.4

2019-08-04 23:13:14 | 室内楽

2019年8月4日(日) 7pm 両国門天ホール

リチャード・キャリック 《音の手触り》2台ピアノのための(2015)世界初演 7
  ピアノ、井上郷子、篠田昌伸

スティーブ・ライヒ 《ピアノ・フェイズ》(1967)  10
  ピアノ、篠田昌伸、榑谷静香

エリオット・カーター 《ピアノについての2つの考察》より II. カテナリー(2006)  2
  ピアノ、榑谷静香

エリック・リチャーズ 《フィールドの解明》(1988)  5
  ピアノ、井上郷子

Int

アニア・ロックウッド 《RCSC》(2001)  3
  ピアノ、井上郷子

エレノア・ホブダ 《スプリング・ミュージック・ウィズ・ウィンド》(1973)  10
  ピアノ、井上郷子

ジョージ・クラム 《時代精神》2台の増幅されたピアノのための6つのタブロー(1989)
         7-4-5-4-3-5
  ピアノ、篠田昌伸、榑谷静香



第5回 両国アートフェスティバル2019〜芸術監督:内藤明美 7/28/日〜8/5月


8/4と8/5の両日は、演奏会タイトルとして、
コンサート「アメリカに見る創造精神」
芸術監督内藤明美氏の視点から、30年近く暮らすアメリカにおける独創的なピアノ作品を紹介します。
とある。
プログラム冊子はコンパクトながら、資料的価値も高い。このようなときに、特に現音系で、いつも思うのは、開場して30分で作品紹介資料を読むのは大変、あとで読むのもいいが、ここに並んだ7人の作曲家のピアノピースの事はまるで知らないし、どうしてもあらかじめ読んでおきたい。まして、一旦、音になって消えてしまったら、音源が簡単に手に入るかどうかもわからないし、どうしても始まる前にじっくりと読んでおきたい。というわがままな願望が先に立つということ。

現音系のレア作品や初演ものは特に、身を粉にして観て聴いてできる限り記憶の中に押し込める。まず、その努力が必要だ。冊子はとりあえずかじり読みし、あとでじっくりと読むときに音がよみがえってくれれば自分の脳みそに感謝だ。まあ、これはこれで楽しみといえるかもしれない。


アメリカの作曲家7名というプログラミングは壮観です。ざっくり、前半が通常のピアノ作品、後半はプリペアードっぽくなる。


キャリック
世界初演となっているが、今回のオリジナルなピアノ・デュオでは世界初演。ソロピアノなどで既に演奏されているようですね。
ドビュッシーの遊戯が下敷きにあるようですが、響きというよりもイメージの拡大ですかね。遊戯よりも短く切った音、それが水滴のように広がっていく。後付けではないなあと実感できるものだ。


ライヒ
ライヒ初期の作品。フェイズ・シフティングによるミニマル・ミュージック。2台のピアノの進行が少しずつずれを起こしていく。同一波長で片方の速度を上げていくとこうなるのか。音響・響きが焦点ですね。と言いたいところだが、造形も練られていて12音での繰り返し進行から8音列へ、最終的に4音リピートへと帰結する。一度聴いて容易にわかるものではない。10分のタイミングはこれ以上長くも短くもできないだろうな、というエキスのみの世界ですね。考えぬかれた作品に聴こえる。ずれが、3つ目の音を生んでいるようにも思えるのだが。
終わる少し前のところで地震があって、それでもポンポコリン状態が佳境に入っていて、とにかくそのまま進行。


カーター
晩年多作型の作曲家で作品カタログのうちの半分が80歳を越えてから。このカテナリー懸垂線は97歳の時のもの。和音がない。単音の連鎖ですね。このアイデアは作者のみぞ知るだろうが、エネルギッシュな97歳が見えてくる。速いパッセージが強烈印象、あっという間の2分。
2つの考察とあるからもうひとつピースがある。ぜひやってほしかったですね。


リチャーズ
聴いてる限り、タター、タター、といった単音の連打。連続する単音、ここから何を想像していけばいいのだろうかとは思うのだが。
タイトルのthe unravelling of the fieldはアメリカの詩人ダンカンの詩集the opening of the fieldをもじったものという。ダンカンの死を知ってインスパイアされたもののようですね。
譜面は4枚で綴じられていない。どこから始めてもよい。同一ページを繰り返してもよい。自由ですね。


以上、前半4曲終了。休憩があって後半はピアノで色々なことを始める。


ロックウッド
ピアノの内部奏法が顕著。ピアノ線を叩く、弾く、擦る。といった世界がでかい譜面1枚に綴られている。もはや、過激な世界とは思えない慣れっこな日常となってはいても、あらためてこうやって至近距離で見ていると、思考と苦難がしのばれるものだ。
RCSCというタイトルはあまり思慮が感じられず、タイトル、めんどうくさいわ、の雰囲気すらある。ピアニストのサラ・ケイ(SC)が、女性作曲家ルース・クロフォード・シガー(RC)へ敬意を表して、女性の作曲家たちに委嘱した7つの小品のうちの一つ。でも、もう少しましなタイトルつけてもよかった気もするが。


ホブタ
鍵盤の蓋は閉じられたまま開くことはない。多種のマレットとマレットモドキと呼んでいいかどうかわからないが、とにかく、見て感じる作品のようだ。
スーパーボール・マレットのちのフリクション・マレットを紹介したアルシデス・ランツァのために書かれている。グランドピアノの内部全体を7つの部分に分けている。このイメージがポイントかもしれない。
ダンパーペダルは踏み続けたまま。スーパーボール3種とゴムバンドを巻いたもの2種と同じくゴムバンドを折って縛ったもの1種。0.5リットルの酒ボトルに水を満たしたもの1種。これで計7種。加えて、プレイヤーの呼吸音、口笛、ハミングも。
これで大体イメージ湧きますよね。見るに限るといったところです。どうやったこういった発想になるのか脳みそを見てみたい気もするが、このプレイ行動じたいが脳みそなのかもしれない。


クラム

Ⅰ前兆portent
Ⅱ2人の道化師two harlequins
Ⅲ一弦器monochord
Ⅳ彗星の日day of the comet
Ⅴモルフェウスの王国the realm of morpheus
Ⅵ反響reverberations

この日最後の作品はクラムで30分に及ぶ規模の大きなもの。クラムの作品はつかみどころのなさもあることはあるが、一つの作品を丹念に聴いていくと、その努力が報われる快感のようなものが走るから手ごたえ感がよいわけですね。
タイトルにある、増幅された、というのはアンプリファイということですから大体イメージは湧く。それを現実のものとする。こういう機会はめったにない。
なぜ総タイトルがドイツ語なのかは固有名詞だからですね。ツァイトガイスト。6つの絵画の副題もzeitgeistを知る方にとっては何でもないことなのかもしれないが、全くわからないので手の施しようがない。副題と実音のイメージをひたすら結び付けて聴くのが関の山です。
そういったことはあるものの、聴いているとやっぱり充実感に浸ることは出来る。副題と曲想のイメージをたどりつつ、それらがよく一致しているなあと。聴き進むと、もはや、言葉の意味合いそのものの音ではないかという思いに至る。Ⅰの前兆がこのなかではトップの充実度。最初が肝心。いきなり全開して、そのあとの絵も勢いにまかせることのない見事な作品と思いました。良かったですね。まあ、これを聴きたかったのだ今日は。


以上、全7作品。堪能しました。ありがとうございました。
おわり



























2716- サーカス・ポルカ、チャイコン、郷古廉、チャイ4、高関、仙台フィル、2019.8.4

2019-08-04 22:00:15 | コンサート

2019年8月4日(日) 3pm ミューザ川崎

ストラヴィンスキー サーカス・ポルカ  5

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲ニ長調op.35  19-5+10
 ヴァイオリン、郷古廉

(encore)
イザイ 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第5番 第1楽章  5

Int

チャイコフスキー 交響曲第4番ヘ短調op.36  19-8-6-9

(encore)
チャイコフスキー 交響曲第6番ロ短調op.74 第3楽章  6


高関健 指揮 仙台フィルハーモニー管弦楽団


フェスタサマーミューザKAWASAKI2019。このお祭りに初登場の仙台フィル。
チャイコンのソロは郷古。八面六臂の活躍ですね。凄く研ぎ澄まされていて音が前に来る。余裕の弾きでご本人が一度味わってから音が広がってくる感じ。
アンコールのイザイ、コンセントレーションが圧倒的にあって、ぐいぐいと引き寄せられる。作品に深く入り込んでいく弾きですね。

シンフォニーは四角四面な解釈の演奏で、指揮者の特質がよく出ている。流れ無い演奏で、チャイコフスキーのシンコペーションが疲弊している。四角い演奏にうまくシンコペのくさびがはまってこない。

最初のショートピース、ストラヴィンスキーがテンポ感やドライな雰囲気がよくてていたようだ。
おわり