河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2768- メシアン、ブロッホ、アルトシュテット、コレッリ、メンデルスゾーン、鈴木優人、N響、2019.11.30

2019-11-30 23:18:04 | コンサート

2019年11月30日(土) 6pm NHKホール

メシアン 忘れられたささげもの  3+2+5

ブロッホ ソロモン  20
 チェロ、二コラ・アルトシュテット

(encore)
バッハ 無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調BWV1011第4曲サラバンド  4

Int

コレッリ(鈴木優人編) 合奏協奏曲第8番ト短調 クリスマス協奏曲 3-3-2-6
 ハープシコード、鈴木優人

メンデルスゾーン 交響曲第5番ニ短調Op.107 宗教改革(初稿/1830) 11-6-8+6


鈴木優人 指揮 NHK交響楽団


リフォメーション、ほぼノンビブでの初稿版演奏。いつも聴いているものと随分雰囲気違いましたね。それはそれとしてもだ。
第3楽章の滴るような涙雨、極美の下降ライン。途方もない美しさですね。ブロッホのソロモンの解は如何に。様式の違いを越えて、音楽がこんなにちがっていいものか、いや、たぶんいいのだろうけれども、あまりにも違いすぎる。こんなに違うものを一緒に聴けて幸せでした。
アルトシュテットのアンコールはピンを押し込んで、抱き抱えての熱演。

デカオケのサブスクで鈴木優人プログラムをビルディングするのはそう簡単ではない気がする。大も小も兼ねるものではないと今日、実感。メシアンは既にトゥーランガリラもやってるし、コレッリの弾き振りも既知。メンデルスゾーンは親譲りかよくフィットしてる。そこにコンチェルト作品を入れないといけないしね。

N響はメシアン音色でますますフィットしてきた感じです。
おわり



 
 
 
 
 
 
 

2767- シチェドリン、カルメン、ベルリオーズ、イタリアのハロルド、井上典子、ヴォルフラム・クリスト、新日フィル、2019.11.30

2019-11-30 22:36:45 | コンサート
2019年11月30日(土) 2pm サントリー

シチェドリン カルメン組曲  3-3-3-5-2-5-3-4-11   39

Int

ベルリオーズ イタリアのハロルド  15-8-7+11
 ヴィオラ、井上典子

ヴォルフラム・クリスト 指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団


ジェイド・シリーズ、ジョゼップ・ポンスがキャンセル、代振りはベルリン・フィルのヴィオラで良く知っていたヴォルフラム・クリスト。棒を振っていることは知らなかった。お初で見る棒です。また、演目の変更はないものの順番がひっくり返ってシチェドリンを先に演奏。

シチェドリンのカルメンを生で聴くのは、大昔、外山雄三&N響の定期で2日連日聴いて以来のこと(42年ぶり)。カラオケみたいな風味もあって面白い曲だなあとその時は思ったものだ。今回こうやって改めて聴くと風変わりな編成の音に俄然興味が湧いた。
ブラスとウィンズが無い。要は管楽器が無くて弦とパーカッション。ユニークな編成で音が抜けたという感じは無くて新たな空間が出来上がる。奇抜で面白いもの。
弦楽器とパーカスが造る音響空間、面白い。パーカスは4つのグループからできていて膨らんでいるが管の補完をしているのではなくて楽器固有の独特な音になっていてその主張は表現の幅をグッと広げている。シチェドリンのカルメンと言いつつ、他作品の引用もあって、まあ、フシとしては有名どころパレード状態ですからね。これを弦が馴染み深くタップリと歌い込む。弦がフルで鳴り、派手なパーカスがやむとき、これがNJPの弦音だったかと思い至る。ややキーンで、揺れながらも、稜線キワキワではない。光る雲。
クリスト&NJPによるシチェドリンのカルメンは拡散系ではなくステージの中央に向かって集中していくサウンドで、音楽の精髄が凝縮された素晴らしいエクスプレッションでした。

イタリアのハロルド。イタハロ。なにしろ、BPOの元首席ヴィオラのクリストの棒。これも興味津々。ソロヴィオラはこの前までNJPの首席だった井上さん。面白い組み合わせですな。
奇抜な作風、鳴りが突拍子もない面白さ。奇作と思う。ヴィオラ井上さんのソロは内面の安定を感じさせる音作り。気持ちの安定ですね。たっぷりとした鳴りがマイルドにホールに響き音が飛んでくる。元同じオケ連の響きには包容感がある。包み込む感じね。引き締まったブラスはこの奇作にふさわしい。大胆に響かせていて決して邪魔にはならない。ベルリオーズの作品の面白さが浮かび上がる。クリスト棒の成すところが大きいのかもしれない。オケが棒を信頼している響きですね。奇抜さとシンフォニックなスタイルがうまくブレンドしバランスしたよき演奏でした。

NJPのメンバー表に1Vn、2Vn、Vcの3名、イタハロ終楽章でバンダ、と書いてあってどこで弾くのかなと思ったら、ステージレベルのしもての大きいほうの扉を開けてちょっとだけ弾きましたね。R側寄りの席からだと丸見え。

指揮者がポンスからクリストに代わって、プログラム順もいれかえてイタハロを後プロにしたのはクリストのいわば、矜持だろうね。
楽しめたひとときでした。ありがとうございました。
おわり












2766- 作曲家の個展Ⅱ、望月京、細川俊夫、杉山洋一、都響、2019.11.28

2019-11-28 23:20:00 | コンサート
2019年11月28日(木) 7pm-9:15pm サントリー

望月京 むすび(2010)  15

細川俊夫 抱擁 ―光と影― (2016~17) JP  18
  オルガン、クリスチャン・シュミット

Int

望月京 オルド・アプ・カオ (2019) WP  24
  パーカッション、イサオ・ナカムラ

細川俊夫 渦(2019) WP  24

杉山洋一 指揮 東京都交響楽団


今晩の現音演奏会は短めのものでは無くて、最後の作品前の配置換えに10分かかったものの終演が9時15分。休憩後の2作は共に25分におよぶ規模の大きなもので、内容も大変に充実していました。
望月、細川の作風は明確に違っていてそれぞれ、音の刻印が作曲家の固有名詞そのものになっている。これが本来の作風と言うものなのだろう。納得の4曲でした。それに、終わってから、今日のプログラム順も良かったなと。

望月京 むすび
寿ぎ、めでたい多くの事、それらのもつエネルギーのむすびの場。
和の節、ウィンズにこぶしも。それに弦を中心にリゲティ風な高濃度。全体がトーンクラスターのモードに。音の充実感がもの凄い。中間部あたりから和太鼓の様な鳴りが前面に出てくる。ここでも弦の圧力が凄くて声のように絡み合う。色々なものがぎっしりと詰まった音の塊。持続するインスピレーションを感じる。
今日この作品が一番短くて15分。時間の凝縮さえ思わせるもので聴いてて火照ってくる。特に前半が秀逸の濃さ。


細川俊夫 抱擁 ―光と影―
陰影、二面性、等々。それらを音によるメタファーで。細川の作品は多様な表現の中、根底に変わらぬ信念を感じさせる。作曲家自身がオルガン協奏曲と言っている通りその中心的役割を担う。オルガンソリストはフルシャ&バンベルク響の2017年世界初演時の方。
杉山さんの指示無しでオルガンの弱音から始まる。二つのエレメントの掛け合いで徐々にオーケストラに広がっていく。高低の抑揚の無い持続する音。節は無くて裂ける様な音の連続。伴奏越えのオケがシャープに咆える。大仕掛けの音響構築は20世紀ミドルピリオドの頃を彷彿とさせるところがある。
終始苦し気に鳴っていた二つのエレメントは融合し、最後はかすかに予定調和的な響きになり弱音終止する。最後が大きい意味を持つだろうね。


休憩。
ここまでで結構満腹。作品が本当に大きく見えますね。


望月京 オルド・アプ・カオ
秩序とカオス。人間の秘めたる暴力性にインスパイアされたものか。それの表現として打楽器を。雄弁に活き活きとプレイしたイサオ・ナカムラがいたから出来た。作品と同じく演奏家の並々ならぬ腕前にも感服。色々と惹きつけられる魅力的な作品でした。
棒を持たない杉山さんが指揮台に向かう時イサオはいなかったので、おや、どうしたのかなと思ったけれども、よくよく見るとオケのパーカス下手側に既に陣取っていて、始まると一緒にまずはそこで身体ごといかにも打楽器の扱いという感じの大きなモーション、それに着てるものも身体全体を満遍なく動かせそう。派手。
曲はグイグイ進む。イサオは、指揮者の左側にセッティングされた数個の小太鼓からバスドラまで置いてあるコンボ風なところに音を色々と鳴らしながら向かう。ジャンプして床からの音も音楽のリズムになり切っている。天性のリズムの塊。叩くだけでは無くて手でこすったり、とにかく音を出す行為。バックのオケのサウンドが大きく広がり始める。と、
それまで指揮台より大きな譜面をめくっていた杉山さんが左手で指揮台の右横の低い台からなにやら札みたいなものを取り出してオケに見せる。白地にAと書いてある。これはなに?偶然性の音楽ならソリストはどうなるの?などと思っているうちに、その札を左横の台に置き、今度はBという札を取り出して示す。結局、A、B、C、D、E、F、G、H、I。計9回。なんだかよくわからないが、わからないものもいいものだ。ので、プレトークはいつもスキップ。この種の話が有ったかどうかは知らない。知らなくてよいの。
ここらあたりまでが前半。
音楽はさらなる盛り上がりを魅せ、オケがギザギザとはっきりと克明な響きで圧倒的なサウンドで席捲。やがて、オケのパーカス連中とイサオによるカデンツァの様相を呈していく。派手派手。
暴力性の一つの極限値としてなのだろう、パーカス員がピストルを上に向けてパーンと撃つ。見もの聴きものの全体モーションは律動の世界。破格奏者イサオ前提の作品が色濃い。とにもかくにも、世界初演だからね。
本能的野生と理性の共存。イサオの打楽器の雄弁さは弱音でも変わらない。音楽は落ち着きのある世界に向かい、最後は消え入るように終わる。終始息を呑むような演奏でした。


細川俊夫 渦
これもデカい作品。世界初演。還暦を迎えた準メルクルにデディケイトしたもの。
作曲家十八番の手法によるティピカルな細川作品のように聴こえる。松風を観たことがある人なら、あのヒュ~ドロ~の世界が随所に垣間見れる。かも。
同音持続、雅楽風な響き、大太鼓のドドドドッ。まさに、アレだよねと言う感じ。
客席Lサイドトップにはホルンとトロンボーン、R側にはホルンとトランペット。それぞれ二人ずつ配置。デカい音の効果を狙ったものでは無くて、時折ミュートも有ったりで、渦という立体感の強調のようなもの。LB席の上から見るとステージ併せ、なるほど全体が見た目も渦のようだ。
沈殿する渦のような開始から、細川流の進行、ヒュ~ドロ~で最高潮に達し、彼の新しいインスピレーションも肌に感じる。2曲目の抱擁と同じく長い弱音進行を見せながらやや予定調和を魅せて終わる。



杉山さんの現音にかける思いはその指揮を見ればよくわかる。世界初演、日本初演、自分初演、等々。良く咀嚼されたもの。この安心感。並々ならぬ熱意がこのような見事なタクトになって、むすび付き、作曲家やプレイヤー達との抱擁、ペンも乾かないうちのカオスが見事な秩序で創造されて新たな渦の空間を聴いているものにもたらす。
都響の音は冴えていて、現音における見事な立体感、研ぎ澄まされた鋭角な響き、素晴らしすぎて何も言う事は無い。圧倒的なプレイでしたね。

ということで、充実の演奏会でした。もっと長くてもいい。生の現代音楽演奏会の音を浴びる。実に愉悦のリラックスタイム。全身がほぐれました。
ありがとうございました。

ところで、望月京の秩序とカオスに出てくるピストル。演奏前の休憩でオケパカスさんがパーンとやっちまったんだよね。何事かと。
おわり


サントリーホール 作曲家の個展Ⅱ 2019
細川俊夫&望月 京
~サントリー芸術財団50周年記念~
20191128-2766 望月京細川俊夫杉山洋一都響













 
 
 
 
 
 

2765- ベートーヴェン、ピアノ・ソナタ・サイクル第2回、第5,6,7番、フランソワ=フレデリック・ギィ、2019.11.23

2019-11-23 23:28:07 | リサイタル
2019年11月23日(土) 7pm-8:30pm  小ホール、武蔵野市民文化会館

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第5番ハ短調Op.10-1  6-7-4

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第6番ヘ長調Op.10-2  8-3-5

Int

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第7番ニ長調Op.10-3  6-10-3-3

ピアノ、フランソワ=フレデリック・ギィ


ギィ、ベトソナ全曲リサイタル、お昼の1回目に続き夜の2回目。昼と同じく約1時間半、アンコールもなく、さっ、と終了。

お昼の1回目は作品2の束。夜は作品10の束。5番6番7番ですね。作品2は3つともに4楽章形式のシンフォニックなものでした。5番6番は3楽章形式となり7番でまた4楽章に膨らむ。

7番は特にシンフォニックな感じは無くて3品ともに3楽章モードの幻想曲風味に近づいているしまた、彼はこのようなスタイルの作品がより得意そうに見えますね。充実した内容で楽しめました。第7番の緩徐楽章は先々のものが見えているし、ギィもそういうところ意識したプレイのように見えましたね。

昼の1回目、夜の2回目、作品束でのリサイタルはよくわかるが、全体的にはちょっと短い。アンコールは求めるものではないけれども、少し熱に欠けたリサイタルではあった。
おわり









2764- ベートーヴェン、ピアノ・ソナタ・サイクル第1回、第1,2,3番、フランソワ=フレデリック・ギィ、2019.11.23

2019-11-23 22:25:13 | リサイタル
2019年11月23日(土) 2pm-3:30pm  小ホール、武蔵野市民文化会館

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第1番ヘ短調Op.2-1  5-4-3-5

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第2番イ長調Op.2-2  8-7-2-7

Int

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第3番ハ長調Op.2-3  10-9-3-5

ピアノ、フランソワ=フレデリック・ギィ


フレデリック・ギィによるベトソナ全曲リサイタル、今日はそのうちの第1回目と夜の2回目、両方聴きに来ました。
ギィさん、お初で聴きます。Wikiを見ると1969年の生まれとのことで50歳ですね。モジャモジャとしてるものの、近くで見るとなんだかもっと若く見える。
作品2の束、3曲のみの演奏でアンコールは無く、休憩入れて1時間半のリサイタル。とはいえオール4楽章作品でそれぞれの規模感は大きくて聴きごたえありました。

まずは駆け上がるような1番の素敵な出だし。ふくよかな響きでなかなかいい。シンフォニックな佇まいの3作品束の劈頭、いいスタート。3つ聴いての後付け印象としてこの1番冒頭ではむしろこなれたものを感じた。この振り返り感。

2番3番は更に規模が大きくなる。シンフォニックな作品が彼のプレイでは四角四面になることがなくて、常々オーケストラ編曲でもしたらと願望もちらりとよぎる作品ながら、今日はそんなことは感じなかったですね。柔軟。2番は艶がさらに出てきて曲に語らせるスタイル。一段踏み込んでいくといった話ではないですね。

リズミックで雄弁、豊饒な3番。濃い作品で、1楽章コーダ前の短いモヤッと霧がかかるあたりの表現の濃さ、絶妙。
第2楽章では、4番以降の先の作品に突き抜けたようなエクスプレッション。多様な表現がナチュラルに絞り出される。
味な演奏でした。
とりあえず、昼の部の3曲はこれでお仕舞。
おわり








2763- シューベルト1番、ロココ、山崎伸子、運命、キンボー・イシイ、新日フィル、2019.11.22

2019-11-22 19:51:58 | コンサート
2019年11月22日(金) 2pm トリフォニー

シューベルト 交響曲第1番ニ長調D82  11-7-4-5

チャイコフスキー ロココ風の主題による変奏曲Op.33  19
  チェロ、山崎伸子

(encore)
カザルス 鳥の歌  2

Int

ベートーヴェン 交響曲第5番ハ短調Op.67  7-9-5+10

キンボー・イシイ 指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団



太田弦に替わりキンボー・イシイが振った。演目は変更なし。これはこれで聴き逃せない。お初で観ます。

シューベルトは現在進行形の全曲シリーズの一環と思われる。
めったにない生演奏だし、しっかりと聴いてみるか。噛みしめながら聴くシューベルトでした。やや粘り気味な味が出ている。

ロココ、山崎さんのチェロは弱音まで美音で磨かれていて、1階席中段、良く音が飛んでくる。ニュアンスがものすごくよくわかり飽きることのない佳演でした。あまりウェットに傾斜することが無くて、むしろやや乾き目で作品の線がクリアになっている。そのものをジワッと愉しめました。ルビコン愉悦。
ルビーのコンサートシリーズはいつもゆっくり楽しめるもので好み。いいですね。

後プロの運命は代振りの運命なのかいま一つでした。弦の不揃い、トロンボーンがフラット気味、全体の音響バランスもギクシャク。これはイシイさんの得意演目に変えたほうがよかったのかもしれない。
おわり












2762- ブルックナー8番、ズービン・メータ、ベルリン・フィル、2019.11.21

2019-11-21 23:34:18 | コンサート
2019年11月21日(木) 7pm サントリー

ブルックナー 交響曲第8番ハ短調 ノヴァーク版第2稿(1890) 17-15-28-24

ズービン・メータ 指揮 ベルリン・フィル



2-2-2-4-2-2-2-c1
5-5-5
6-3-4-4-8-c3
2-2-2-8-3-2-2-c3

約85分、手綱から解放されたスペシャリスト集団の自由度マックス・サウンドは稜線キワキワの離れ技、やっぱり、底無し能力オケでした。ひと時の峻烈を追うことのないブルックナーは横広モーメントの連続で実質音幅に正比例しているかのようなもので、揺らして合わせて、この余裕。悠然としたブルックナー・サウンドに心からしびれました。一昨日の川崎公演の締まり具合とはまた別の味わい、このふところの深さ。

2760- ドン・キホーテ、エロイカ、メータ、ベルリン・フィル、2019.11.19

アダージョのABは、Aが2パーツ、Bも2パーツというのがよくわかるもので、ABABA計10回があっという間に過ぎ去る。なんだか、完璧な建築物件でも見ているかのようだ。
滴る3回目Aの経過句のコクが増し、しっとりしなやかにコーダの潤いへ。湯気でもでそうな楽章でした。第九同様、ここにあってよかったな、の第3楽章ですね。ブル9も同様。色々と思い浮かぶ絶品演奏でした。

終楽章は展開部と再現部が珠玉のような充実度、ここはすごかった。音楽の盛り上がりがくっきりと鮮やかに。
長めで変幻自在、たくさんのエレメントが複雑に絡み合う展開部をメータがゆっくりと極みの棒でほぐしていく。充実の展開。
提示部よりさらにスケールの大きい響きの共演となった再現部。大伽藍のコーダの先取りだ。蝋燭炎の狼煙から一転、全インストゥルメントでの一斉強奏。メータは何事もなくスルッと入る。圧巻の既出主題の重なりに、終楽章コーダではなく作品全体のコーダと知る。強烈に空高く聳え立つ最高峰の作品と極みの再現演奏。悶絶しました。

ベルリン・フィルの音はマッシヴで大砲級の威力。なみいる綺羅星のスペシャリストプレイヤー達が鳴らしきる絶対演奏ブルックナーに隙無し。
サラはワグチュー。ドール連中と結構な距離、音色が同質で極めて注意深く練り上げられているプロフェッショナルな色彩の味わいが濃い。アンサンブルの妙はいたるところに見られましたね。

ブルックナー8番、満喫しました。
おわり

8番の保有音源は99個です。
















2761- ベートーヴェン6番、7番、ヤノフスキ、ケルン放送響、2019.11.21

2019-11-21 22:18:57 | コンサート
2019年11月21日(木) 2pm コンサートホール、オペラシティ、初台

ベートーヴェン 交響曲第6番ヘ長調Op.68田園  11-11-6+3+8

Int

ベートーヴェン 交響曲第7番イ長調Op.92  14+7-9+8

(encore)
ベートーヴェン 交響曲第8番ヘ長調Op.93第2楽章  4

マレク・ヤノフスキ 指揮 ケルン放送交響楽団


平日午後の公演。最近はこういうのがたまにある。国内オケでも割と流行ってますからね。これで夜はベルリン・フィルを聴くのでスイッチが要る。

馴染みのあり過ぎるヤノフスキがケルンと来日。ベートーヴェンの6番と7番を並べる、あまり見ないプログラミング。音の出の遅れを好まないヤノフスキらしいラッシュな快演でした。
田園の第1,2楽章はさっぱりでしたが、3楽章になってオケが目覚めて活力がでました。ケルン放送響はドライでやや埃っぽい印象がこれまであったのですが、お目覚めオケは明るくて艶やかパワフルでエネルギッシュ。心象風景が眼前に迫る演奏で、田園らしい揺らぎを越えていってしまった感があるけれども、元気もらえました。ヤノフスキの棒さばきはワーグナーでもなんでも変わらずすっきりとお見事ですね。

後半に置かれた7番。ヤノフスキ棒の真骨頂だろうね。遅れ無き音。淀みなき音。回転する律動。パワフルな猪突猛進。16型であれだけ回るとすごい迫力。オーケストラ・サウンドを聴く醍醐味。音浴びですね。まあ、これだけ迫力のあるベト7、膨らみも感じるんですね。キンキン言わず、今出ている音、しっかりと吟味されたプレイだったかと思います。
6番7番、お見事な内容でした。

アンコールは8番の第2楽章。なかなかいい流れ。6番7番ときて8番全部でもよかったかなと、贅沢なわがまま。順序としては合っていそうだ。

ヤノフスキのレベルハイなバトンテクニック、信念や主張、考えがそのまま乗り移っているようで、このような棒はなかなか見られない。あらためて凄さを実感しました。ありがとうございました。
おわり










2760- ドン・キホーテ、エロイカ、メータ、ベルリン・フィル、2019.11.19

2019-11-19 23:19:17 | コンサート
2019年11月19日(火) 7pm ミューザ川崎

シュトラウス ドン・キホーテ  44
 チェロ、ルードヴィヒ・クヴァント
 ヴィオラ、アミハイ・グロス

Int

ベートーヴェン 交響曲第3番変ホ長調Op.55 英雄  16-15-6-12

ズービン・メータ 指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団


聴きごたえ満点のメインディッシュ2皿でした。
メータの棒に沢山沢山接してきた身としては椅子に座っての指揮は、よもやこの日が来るかもしれないとは思わなかったわけではないが、やはり現実になってみると痛々しい。ただ、弱々しいわけではない。むしろ意志の強さが浮き彫りになる。

後プロ、メータのエロイカ。
メータきっちり正統派3拍子振り貫き通し、そこに散りばめられた美的ニュアンス、いいエロイカでした。
音に隙無し。ささくれのないアタック、音量増減の滑らかさ、艶やかなベルリン・フィル・サウンド満喫。機能美というのは殊更に機能的な作品だけに発揮されるわけではなくて、古典派からズシリと足を踏み出した斬新エロイカでちからを発揮する。でかいエロイカでした。そびえたつベートーヴェン、メータ&ベルリン・フィルの底光りする圧倒的なパワフル・精密演奏。お見事でしたね。初楽章の提示部リピート無しはここのところ久しぶりに聴く。おお、この流れ、本筋じゃないかっ、と、何かを思い出した。新鮮であった。

2番に座ったサラさん。初楽章再現部を導くソロ。終楽章は横目で足の長い3番さんを、おい、そこ、遅れるなよ。などとモーションを送る余裕。余裕のアンサンブルはもはや、正の効果が恐ろしくもいたるところに波及し合い、結果、フルオケがうなりをたてて進む。この醍醐味。オーケストラ演奏を聴く醍醐味ここに極まれり。

それにしてもだ、このきれいなオーケストラ配置を見るにつけ、三つ目のホルンはいかにも突き出たものと実感。ベートーヴェンのこの作品の革新的なものをこういったところでも味わうことができる。
巨大なエロイカ、ありがとう。



前プロのドン・キホーテ。ソリスト2名はオケトップ。顔の知れた面々ですね。
シュトラウスも長いもの作ったよね。の、忍耐言葉が虚しい。空虚な言葉に過ぎない。もうなんだか、終わらなくていい。なんという説得力だろうか。
コンパクトな作品ではまるでなくて、ぎっしりと詰まった美音と美音の掛け合い。チェロのクヴァント、ギョロッと明快ででかい音。ヴィオラのグロスは余裕ありまくり過ぎの弾きですな、あちこち見たりしてても、そのことがいい刺激なんだろうね周りにも。みなさん、一人ずつの腕っぷし世界ではあるのだが、アンサンブルの作り込みはお互い最高の演奏を繰り広げるためのモーションに見える。

対向配置ながら第1ヴァイオリンの対はチェロでその後ろが第2ヴァイオリンという配置。何をどう狙って、はたまたどのような良き結果になったのか。わかりません。ヴィオラのグロスはヴォイラトップ位置だったので、なるほどというところはありましたね。

タップリ濃密な弦楽合奏に隙間無し。空洞ができているのではないかと思えるような透明感。ウィンズ、ブラスの微細なニュアンス。奥の奥まで入り込んでいく。雄大なティンパニの締まり具合の良さ。巨大編成が奏でるデリケートでナイーヴなアンサンブル・ミュージック。横と奥に大きな広がりを魅せてくれる驚異的パースペクティヴ。このホールの音響空間がパーフェクトに一致し、響きに大いに寄与。アンサンブル単位の音の増減もものすごくクリアでナチュラル。アンサンブル・モーメントが一体化し紡ぎだす音楽は最高峰で、メータが最高潮に達するまで盛り上げてくれる。目をつむると巨大な機織りが音を紡ぐのがいつまでも目に浮かぶ。最高のビューティフル・パフォーマンスでした。
ありがとうございました。
おわり



















2759- RVW富める人とラザロ、プロコフィエフPC3、松田華音、伊福部昭、サロメ、藤岡幸夫、東京シティフィル、2019.11.9

2019-11-09 23:01:51 | コンサート
2019年11月9日(土) コンサートホール、オペラシティ

ヴォーン・ウィリアムズ 富める人とラザロ 5つのヴァリアント  11

プロコフィエフ ピアノ協奏曲第3番ハ長調Op.26  10-9-9
 ピアノ、松田華音

(encore)
チャイコフスキー 18の小品Op.72-18 踊りの情景(トレパークへの誘い)  3

Int

伊福部昭 舞踏曲 サロメ  20-20

藤岡幸夫 指揮 東京シティフィルハーモニック管弦楽団


プロコフィエフの3番コンチェルト堪能しました。何度聴いても奇抜な響きの作品でユニーク。これから入ると前後の協奏曲もよく理解できるというものだ。興味が湧くというか。
松田さんの流れは素晴らしく素敵。それと、重力通りに指が鍵盤に落ちる、吸い込まれていく。これがとっても自然で粒立ちが一様、重力の計算通りなのかもしれない。この一様性が快感。的確な表現というのはこういうことを言うんだろうなあと、観て聴いて唸るばかりなり。
いきなりスピード感を持って動かないといけなくて、このノリの良さ。弾く前の律動感が冴えまくっている。ロシア風味のゴツゴツしたところもあって、さらにキラキラと光り輝くところもあって、静と動、刻々と変化していく表情。多彩な表現のピアノの凄技。
冷静なアトモスフィアを漂わせるところもあって、つまるところ、彼女の空気感が大きく広がっていく。場を占めていく、魅了しますね。


後半のサロメ。初めて聴く作品。
サロメの話は既に多く刷り込まれている訳だから、そのことはちょっと横に置いて全体印象を。
ソロのアルトフルート、それに絡むハープ、そしてイングリッシュホルン。この静寂の前までで一区切りの20分。このアルトフルートのあたりがセヴン・ヴェールのようです。
前半はなにかインド風味な響きが随所に聴かれる。セヴン・ヴェール以降はいわゆる西欧風なものと太鼓鳴らしメインの和風、これら3つの風がシャッフル、シェイクされながら大団円を迎える作品。ぶ厚いオーケストラサウンドが激しく燃え盛る、熱盛リフィニッシュ。なるほど、舞踏曲だなあ、と。

音展開は、ラッパのハイトーンによるファンファーレ、フィリップ・グラス風なシンコペの流れ、次第にマーラーが作りそうな葬送行進曲のモード、やがて平原(1回目)がやってくる、リズムの動き。ここまでで20分。
セヴン・ヴェールはアルトフルートとそれに絡むハープ、続けてイングリッシュホルン、平原(2回目)、リズムの動き、交錯する静と動、徐々に勾配を登りつめていく、初めにあったファンファーレが再帰。ここまで計40分。

全体的に腫れぼったい、ぶ厚いオーケストラサウンド。お化粧はそれほどいたれりつくせりでは無くて、ストレート。音圧だけでいうと表現の濃さが、音圧が強のほうに偏っているように聴こえる。馬力で強く気張る。大変です。


最初に演奏されたRVWの小品。弦楽とハープ。そのタイトル内容と出てくる音は一致しているのだろうが、そこらあたり理解を越える。民謡風なところは和風の趣きを感じるところがあり、鯉のぼり、赤とんぼ、雨降りお月さん、なんだか色々思い出した。

今日の3作品楽しめました。
ありがとうございました。
おわり









2758- グリーグ、秋に、ニールセンVn協、ダールネ、チャイコフスキー、眠りの森の美女、ズナイダー、新日フィル、2019.11.8

2019-11-08 23:12:16 | コンサート
2019年11月8日(金) 7:45-9:20pm トリフォニー

グリーグ 秋にOp.11  12

ニールセン ヴァイオリン協奏曲Op.33  20-17
 ヴァイオリン、ヨハン・ダールネ

(encore)
パガニーニ 24のカプリス より 第24番  5

Int

チャイコフスキー 眠りの森の美女 抜粋  11-3-5-8-5-2-6
プロローグより、パ・ド・シスとコーダ
第2幕 デジレ王子の狩り より パノラマ
第1幕 オーロラ姫の4人の求婚者 より ワルツ
第3幕オーロラ姫の求婚 より パ・ド・カトルとパ・ド・カラクテール
第2幕パ・ダクシオンのコーダ
第1幕コーダ
第3幕パ・ド・ドゥ より アダージョ

ニコライ・シェプス=ズナイダー 指揮 新日本フィルハーモニー管弦楽団


ヴァイオリニストが2人いるようなゴージャスな定期。

ニールセン国際音楽コンクール2019のチャンピオン、2000年生まれのヨハン・ダールネ、たまげた。
刻々と表情が変化するニールセンをいとも簡単になで斬りにする。もはや、大人の至芸ですね。2楽章構成で40分に迫る大作。なんといってもソロヴァイオリンが聴きごたえ十分。それに、オーケストラとの掛け合い、ドンと構えたソロの大きさは、申し分ない。めったに聴くことのない作品でしたが、昨今、ポツポツとニールセンが各オケ定期に乗るようになって、その変幻自在でユニークな作品に浸ることができてうれしい限り。巨大な作品でした。
この若き俊英、すでにニールセンのスペシャリストですね、輝かしく跳び、深く沈み込む。ニールセン、ダールネ、最高でした。
ライジング・コンダクター、ズナイダーはそれこそヴァイオリンプレイヤーですからね。ダールネをサポートしているのかどうかはわからねど、そんじょそこらの棒振りよりはコンチェルトのサポート、ものすごく奥行きの良い、行き届いたもののように見えました。
2年ほど前にN響定期ルイージの棒でメンコンを聴かせてくれたズナイダー。曲が曲だけにもう忘れています。楽器が凄く小さく見えた印象。

後半はスリーピング・ビューティー。ライジング・コンダクターがお好みで選んだ7曲をシャフル。これが結構な規模で40分におよぶもの。譜面無しで、彼の得意物件なのだろう。
巨体で、見た目はややラフな振りなのだが出てくる音は素晴らしく整っていてインパクトがある。下味、下ごしらえ十分のパフォームでした。聴きかたは、そのような作法、必要です。味わい尽くしました。素敵な演奏でしたね。遠近感、音のワクワク感。生き生きしている。

ところで1曲目に置かれたグリーグの序曲、秋に。あれはいったい何だったんでしょうね。年齢計算すると22歳ごろの作品。新鮮、気持ちがクリーンになる、レアものでしたね。こうゆう作品を聴ける。これはこれで、いい空気に触れた思い。満喫できました。
ありがとうございました。
おわり















2757- エロイカ、死と変容、タンホイザー、ブロムシュテット、N響、2019.11.7

2019-11-07 23:54:08 | コンサート

2019年11月7日(木) 7pm サントリー

ベートーヴェン 交響曲第3番変ホ長調Op.55 英雄  16-14-6+11

Int

シュトラウス 死と変容  22

ワーグナー タンホイザー 序曲  14

ヘルベルト・ブロムシュテット 指揮 NHK交響楽団


締め付けからの解放、意識された解放ではない所作。演奏が硬直しない。
冒頭に置かれたエロイカ、その劈頭楽章は最初の打撃2音のみ三拍子振り。あとは最後まで1拍子を貫く。2012年バンベルク響のときと概ね同じスタイル。あのときは最初の2音も1拍子振りだった記憶。
棒を持たなくなって空気をこねるような、粘土細工でもしていそうな動きだけれども、オケはそのほうがいい音が出るとでも言いたげなほどにナチュラルで、なにやら、邪魔じゃない指揮、N響ならではのハイスキル、ハイ意識集団からにじみ出てくるプレイはやたらと心地よい。阿吽の呼吸という話を地でいっているようなものだろうね。
途中、例の変則打撃も1拍子を貫くのでオケ共々なんだか見応えあり。提示部リピートしたので再現部合わせて3回見れる。また、2連八分音符はひとつ目にグサッと力を込める箇所多発。展開部の入りのところだけグッとテンポを落とす。等々いろいろなことはしていそうだけれども、結局のところ俯瞰するに、エロイカの勾配が極めてナチュラルにスロープしたしなやかな演奏でした。エロイカの自然勾配。

葬送に隙間は無い。のに、よく呼吸できている。硬直しない演奏とはこういうもんだろうね。
そして気持ちの良いホルンちゃんスケルツォ。いい演奏だなあ。

ブロムシュテットは棒を持っていた時代はアウフタクト長め、その直前符が短めの振り、それが今はほぼ解消されている。のに、終楽章ではオケが4拍目(2+2拍目)を長めにプレイしてるので、こういうの忖度って言うのかな(苦笑)。ブロムシュテットの癖まで移ってしまったN響ならではの美演。この楽章テンポ落としたところからコーダまでナチュラルな勾配が見事な演奏でしたね。


後プロは編成が膨らんだ。
死と変容はロマンチシズムの淵から離れた切れ味、若いこの作品にブロムシュテットは思いがあるに違いない。それはロマンチシズムではなくて飽くまでも作品の響きにだろうね。途中で放たれたようなメロディーライン、その続きは自分がするよって言ってる。無碍のアプローチ。小さな動きに見事な反応を示すオケは見もの聴きもの。

オケのみの品、最後はワーグナー。柔らかテヌートにぬめりなしのタンホイザー。
頭のホルンちゃんのテヌートモードが全般に拡散していく。さらに弦とウィンズの柔らかい響き。真綿モードのタンホイザーにはたして贖罪の気持ちが湧くのかといったあたりの世界観は別の話で、アナザーワールド、換言すると、今のブロムシュテットの音楽観だろうね。


今日、ブロムシュテット、N響が演奏した三作品。ともに終止後の空白が見事過ぎるもので、エロイカなんか、もう、拍手しないで休憩に入りたいな、ていう感じ。死と変容もタンホイザーも概ねそんな感じで、なんだかとってもいい演奏会。音楽が好きな方達の空気に支配された演奏会でしたね。
ありがとうございました。
おわり








2756- ラフマニノフPC3、ブロンフマン、春の祭典、オロスコ=エストラーダ、ウィーン・フィル、2019.11.6

2019-11-06 23:46:09 | コンサート
2019年11月6日(水) 7pm ミューザ川崎

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番ニ短調Op.30  17-10+14
 ピアノ、イェフィム・ブロンフマン

(encore)
ショパン ノクターンOp.27-2  5

Int

ストラヴィンスキー 春の祭典  17-18

(encore)
ヨーゼフ・シュトラウス ポルカ・シュネル 憂いも無くOp.271  2


アンドレス・オロスコ=エストラーダ 指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団



最強のプログラム。ではあるのだが、指揮者の方は以前、hr響とともに来日して2度ほど聴いたがさっぱりだった記憶があり、今回ウィーン・フィルを振るのだからそれそうおうの棒振りとしてビッグになったのだろうと、とりあえずは思うことにして。
まあ、ラフマニノフの3番コンチェルトをブロンフマンで聴けるから、と。彼のピアノは事あるごとに聴いているけれども今回の演目は初めて聴く(はず)。

プロコフィエフの戦争ソナタからリンドベルイの2番コンチェルトまで沢山聴かせてもらっているブロンフマンの最強プログラム。
思いの外、細めの音で開始、ささやくような感じ。秘密の音かな。それと、やけに先にドンドン進みたがる。なんだか、変容なのか。はたまた、抽斗の数の多さなのか。ブロンフマンのみぞ知る。ひっそりとしているがオケにまけない。まあ、ここらあたりの伴奏はウィーン・フィルであってもなくてもいいかな。中間楽章も秘境のような静けさ、それに高密度。ブロンフマンが弾きだすとそこかしこイエローな色彩が見えてくる。独特ですな。
終楽章中間部から唖然茫然のヴィルトゥオーゾプレイ。悶絶のエキサイティング・ラフマニノフ。椅子の蹴飛ばしはなかったもののかなりのフィニッシュ。アクションが見事に決まりましたね。


さて、エストラーダのハルサイ。
エストラーダは2015年にhr響と来日。メインプロ幻想、もうひとつメインプロがマーラー1番、その2公演を聴いて以来。今回のウィーン・フィルでも印象は変わらない。縦振り多発でどうもセカセカしている。太くてゆっくりなバスーンから始まり、ブラスは同じサイズのオタマの叩きつけが連発しても、いつまでも揃わない。もう、アナログのうまくいかなかった手作業という感じ。このアナログ感から得るものは何かなあ。
ハルサイの機能性を殊更にウィーン・フィルに求めても、今は昔と違い、腕っぷしの強いオケが沢山あるので、それだけでは、そう魅力的とは言えないもの、そういう時代。
縦軸が不揃いだとオケの艶が出てきませんね。譜面あり。
おわり


















2755- ヴィトマン、コンブリオ、エンペラー、辻井、ブラームス1番、ケント・ナガノ、ハンブルク・フィル、2019.11.5

2019-11-05 23:53:58 | コンサート
2019年11月5日(火) 7pm-9:30pm 文京シビックホール

ヴィトマン コン・ブリオ  11

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73 皇帝  21-8+9
 ピアノ、辻井伸行

(encore)
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調Op.27-2月光、第1楽章  6

Int

ブラームス 交響曲第1番ハ短調Op.68  13-9-5-19

(encore)
ブラームス ハンガリー舞曲第5番 2

ケント・ナガノ 指揮 ハンブルク・フィルハーモニー交響楽団



ヴィトマンのコン・ブリオを聴くのは2回目。サントリーのサマフェス2018で聴いてなかなか気に入っていたもの。もう一度聴けるので楽しみにしてました。

2600- ウェーバーcl協1、クール、アゲイン、ヴィトマン、コン・ブリオ、幻想曲、VC2、カロリン、イェルク・ヴィトマン、都響、2018.8.31 

ケント・ナガノの振るヴィトマンのコン・ブリオは全部の音がよく聴こえてくるもので、極めて現代音楽ジャストフィットなサウンド。硬質系響きのホールも曲によく馴染む。コン・ブリオと言いつつ最後はコリオラン的な終止が印象的。
ハンブルク・フィルは豹変というか柔軟というか、ナガノのもと素晴らしく引き締まった響きで現音の使徒のもとその演奏スタイルに徹しており表現の濃度が濃い。指揮者の意図がよく浸透した内容で呼吸の合い具合もマッチ、馴染みのるフシが多数出てくるとは言え、それ以上の親近感をもたらしてくれたお見事パフォーマンス。


エンペラー
辻井さんの弾くコンチェルトは割と聴いている。今は舞台で弾くことが成長そのものなのだろう。吸収して放射する、同時にしているような感じかな。
シックなエンペラーでした。隣の鍵盤と繋がっているように聴こえるところがありつつも、弱音重視のピアノで叩きつけせずに膨らませるメロディーライン。聴かせてくれる内容でした。落ち着きを感じるプレイで、昨今、こんな風になりつつあるのかなとふと思う。


ブラームス1番
コン・ブリオ的解決というか、現代音楽志向側からの演奏で、ひとつひとつの響きを確かめ、それらを積み重ねていく。いわゆる現代音楽好みからいうと大変にわかりやすいものでした。スキニーと言えるぐらいに絞り込んだオケサウンドはナガノのものだろう。スケール感よりもつぶし込みながら突き進む雰囲気が濃厚、瞬間瞬間の理解をかみしめて進む。みんな聴き合って指揮者意図を踏まえながらのプレイですね。浸透でしょうね。満足度が高い。
初楽章リピートあり。終楽章へのアタッカはせず。

ヴィトマンのコン・ブリオは現代という時代の音楽、ブラ1作品は随分と昔のもの。いわゆる現代音楽とトラディッショナルなものの、作品と演奏のハイブリッドは簡単ではない。そういう意味ではコン・ブリオは一段ハードルが低いのかもしれない、題材は題材としてもだ。
レベルハイなケント・ナガノ、ハンブルク・フィルではある。

筋肉質のハンブルク・フィル、堪能しました。
ありがとうございました。
おわり











2754- チャイコフスキー、ヴァイオリン協、リサ・バティアシュヴィリ、マーラー5番、ヤニック・ネゼ=セガン、フィラデルフィア管弦楽団、2019.11.4

2019-11-04 23:39:26 | コンサート
2019年11月4日(月) 4pm-6:30pm サントリー

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.35  19-6+9
  ヴァイオリン、リサ・バティアシュヴィリ

(encore)
マチャヴァリアニ ジョージアの民謡 より Doluri 2

Int

マーラー 交響曲第5番嬰ハ短調  13+14-17-10+15


ヤニック・ネゼ=セガン 指揮 フィラデルフィア管弦楽団


百花繚乱、快刀乱麻、草木騒然、奔放自在、爆発爆演、スッキリ溜飲、ゴクリと舌鼓。タップリ2時間半。

ネゼセガンが棒を振ることなく始まったトランペットのソロ、太くて柔らかい導きの音。彼、メンバー表に無い方、ロドニー・マーサリス(たぶん)。
ジェニファーさん、長い3楽章はクラリネット列に移動、吹きまくる。抜群の安定感。チューバのキャロルさん、余裕ありまくり過ぎ。余裕のブラス・セクション。このラッパ陣の音は元が束みたいに太い。光り輝く音たちは拡散系ではなく内なる中心点に向かって一束になる。弦の威力もすさまじい。初楽章の副主題、コントラバスのピツィカートでホールが揺れる。あの栄光の時代が息を吹き返した。

振り返れば、バンクラプトからのリザレクション。2014年、2016年と来日を重ね今年2019年。えぐる、叩きつける、なんでもごじゃれ、解放の圧倒的演奏。スキルレベルは元のようになり、ネゼセガンとの息の合い具合も時とともに厚みを増した。今回の演奏はこのような流れの中、聴くほうとして喜びもひとしおでした。
ネゼセガンの蛇腹のようなオペラ振り。オーケストラの呼吸、3連符アウフタクト3つ目で必ず合わせてくる、この、オーケストラ呼吸。見事だ。

GM5、毎度ここだけは聴き逃すまいと耳を皿にする第2楽章の結尾の輝かしいファンファーレ、猛速ファンファーレが圧巻、さらに速度を増し、果ては何事もなかったかのように楽章を終える。クラクラする第1クライマックスに悶絶。もはや、ここで、今日の百花繚乱極美演を確信。
ジェニファーが吹きまくビッグな中間楽章、しびれました。静謐でオケの心の安定を示すアダージェット、中庸な遅さだろうね。音は、また、ジェニファーに引き継がれ次々と広がりを魅せていく終楽章は全てが展開部のようだ。ころがるロンド。太く輝かしいサウンドは更に厚みを増し、機動性が最高潮をむかえ、ウィンズが喜びの歌をしゃくりあげ、コントラバスがゴソゴソとサントリーの床を彫り、圧倒的なフル全総でホールが揺れ、フィニッシュ。
見事な演奏でしたね。



プログラム前半、リサのチャイコンが凄い。フィラ管の音を先取りしたかのような太くて艶やかな美音。カデンツァ、ソロが始まるとほぼヴァイオリン・リサイタル的な独奏のワールドがワーッと大きく広がっていく。本当の安定とマッシヴサウンドてこうゆうことをいうんだろうね。
聴いていくうちに独奏にひたすら耳を傾け始めてしまって、ソロのところだけ聴いていればいいかな、などともったいないことを思ってしまった。
フィラ管の滴るアンサンブル、回転するリズム、ソロをかき消さないバランス、ネゼセガンのコントロールも合わせて、みなさんの妙技にチャイコン満喫。GM5が控えているのに前プロのチャイコンで結構な満腹感でしたね。

充実ナイト、ミラクル・パフォーマンス、フィラ管。
ありがとうございました。
おわり