能楽・喜多流能楽師 粟谷明生 AWAYA AKIO のブログ

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『道成寺』見どころ その2 前シテ・白拍子の登場

2014-02-21 07:51:56 | 能はこうなの、と明生風に能の紹介
鐘が吊られると、アイ(能力=野村萬斎)は鐘の供養が行われ、その間は女人禁制であることを、観客に「ふれ」伝えます。そこへ前シテの白拍子が登場します。今回はこの前シテの登場の習之次第(ならいのしだい)を特別演出で行います。

通常はシテが幕を上げて姿を見せるのに3~4分かかりますが、今回は笛のヒシギ(甲高い音色)が鳴り響くと同時に幕上げとなり、すっとシテが姿を現す演出です。そして替之型(特別演出)として一の松辺りにて止まり、次第「作りし罪も消えぬべき・・・」を謡い、自己紹介の名のりをして、道成寺への道行を謡い、道成寺へ着いたことを観客に伝えます。今回の替之型はここまでのすべてを橋掛り一の松辺りにて行いますので、「日高の寺に着きにけり」と聞かれたら、「あ!道成寺に着いた」と想像していただければ、と思います。

その後、アイとの問答となり、女人禁制だから供養の場には入れぬ、と断るアイに、シテは白拍子なのだから鐘の供養の舞を舞いたい、と口説きます。
アイは白拍子の不思議な女の魅力に負け自分の独断で、面白く舞うなら供養の場に入れてあげようと招き入れてしまいます。
当時、白拍子は「芸能を提供する巫女」のような存在でもあったようで、芸能によって神事も行う白拍子をアイが女人禁制と言われながらも鐘供養の場に入れてしまうのには、単に白拍子の女の魅力だけではないのかもしれませんが、私は不思議な女性の魅力に男性だれもが弱い、と読み取った方が面白いと思いますが、いかがでしょうか?

つづく

写真 第39回粟谷能の会『道成寺』シテ粟谷明生、アイ故野村万之丞(耕介)
文責 粟谷明生


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2 コメント

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興味津々 (竹内)
2014-02-21 13:23:35
こうして解説してくださるととても(つづき)が、気になります。
そして、先生ならではの解釈にうなずいております。
我が家の娘無事に昨日旅立ちました。

日本の文化を異国の子供たちに少しでも伝えて良いところを好きになってもらえるようにいろんな準備をしていきました。
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お返事 (粟谷明生)
2014-02-21 23:44:21
娘様のご活躍をお祈り申し上げます。
と、まあ無難な、普通の、ありきあたりのことしか言えない粟谷明生です。(笑)
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