ペーパードリーム

夢見る頃はとうに過ぎ去り、幸せの記憶だけが掌に残る。
見果てぬ夢を追ってどこまで彷徨えるだろう。

生涯修行ということ

2012-01-26 10:55:33 | 美を巡る
121121.sat.
国立劇場にて「伝統歌舞伎保存会 研修発表会」。



正面にはいきなり六代目菊五郎を模した彫像、
平櫛田中の『鏡獅子』がどーん! と。
四方は餅花飾りが賑やかに揺れて、お正月らしい館内。
昨夏、サントリー美術館の「不滅のシンボル 鳳凰と獅子展」で見た鏡獅子は
これのミニチュアだった。
当たり前だが、全然迫力が違います。
獅子の毛のリアルさといったら、木とは思えないほど。
畠山記念館やニューオータニ美術館の創業者の木彫に会う
(見る、ではなくて会うがぴったり)たびに
平櫛田中が描いたその存在感に敬服するのだが、
このひとも今にも毛振りをしそうで・・・
・・・・ああ、本題からずれました。

 

思っていたより場内は熱気にあふれていて、
新進歌舞伎役者らへの期待の大きさが伝わってくるよう。
宝塚の研修生を応援する大人たちみたいな?(笑)

本日の公演は
「三人吉三巴白浪~本郷火の見櫓の場」と「素襖落」。
監修は松本幸四郎丈。

若手俳優、演奏家の研修を目的としたもので、
平成17年以来6年ぶりの開催とのこと。
子供のための歌舞伎教室は知っていたが、
こんなこともしていたのですね。
しかも大劇場!
大道具、小道具、衣装、もちろん台本も本公演と同じだそうで。

どんな趣向かしらと思っていたら、奥からどーんどーんという雪の音。
花道の幕がバッと上がると、
番傘をさした幸四郎丈が雪を避ける仕草をしつつの登場です。
「高麗屋っ!」
久々の花道横での席で、たっぷりの臨場感を味わう。
解説のあと、「若い者をよろしく」と言って去っていくと・・・

舞台に現れた町人三人。
いきなり染五郎丈、福助丈、友右衛門丈ではありませんか。
当然、会場が沸きます。
こんなちょい役にベテランが出ることを「ご馳走」ともいうが、
初っ端からこれなら、なんて贅沢な!(笑)

その後、両花道から登場したのは、
お坊吉三・松本錦一丈とお嬢吉三・中村芝のぶ丈。
和尚吉三(松本錦弥丈)を救い出すためのひと場面。
ほう、振袖をそう結べば襷がけになるのね、なんて
変なところに目がいってしまった・・・(笑)
雪降るなか、火の見櫓の前での三人の大立ち回り。
争いの様式美とそろって見得を切る美しさに拍手喝采。

後半は、花道のすっぽんから幸四郎丈がぬーっと現れました。
新歌舞伎十八番の一つで
狂言の「素襖落」をもとにした作品であることを解説。
手にした小道具の扇子には裏表に堂々たる蝙蝠の絵。
代々自らが絵を描いて使うのだそう。

幕が上がると、松羽目が目に飛びこむ。ザ・お正月。
主役の太郎冠者には染五郎丈。
あらら、なんだかいつもの大劇場と変わらないのでは?
我々観客はとっても得した感が強いのだけれど、
染五郎丈にとってもここは修行の場。
先だって、山種美術館の講演会で聞いたとおり、
彼とて芸を磨いている真最中なのだ。
http://blog.goo.ne.jp/ezn03027/e/323a81c20c0726be785f33e8a5915554

舞いのシーンで染五郎丈が持っていた扇子、
お父上よりのよりはいくぶん小ぶりな
お上品な蝙蝠の絵とお見受けしましたぞ。

ともあれ、狂言の衣装が私は大好き。
大胆なデザイン、意表をつく配色・・・
昔は最先端のファッションだったわけであるから
観客もわくわくして通ったのであろうなあ。

児太郎丈、いまの福助丈が児太郎ちゃんだった頃は好きだったけれど
息子の児太郎ちゃんは・・・頑張ってましたけど
もう少し声が良ければいいのに。(ごめん)
役者にとて声質はもちろん、声に色気があるなしって、重要。

竹本連中、長唄囃子連中がずらり揃っての演奏も華やかで見事。
本舞台で見るよりも、たしかに若いお顔が多い、ような。
こうしたバックの方々にとっての研修会でもあるのだ。

パンフに名前があった鳥羽屋里一郎さん。
人間国宝・里長さまのお弟子さん。
そういえば、里長さまの娘・里夕(りせき)さんの邦楽ライヴには
8、9年前からちょくちょく行っていたが、
最近ご無沙汰・・・と思っていたところ、つい先日、
来月13日に2年半ぶりのライヴをするという情報をいただきました。

と、だいぶんずれたところに着地してしまった、本日の日記。
でも、こうした研究発表会、続けていくそうなので楽しみです。
なんでもそうだが、こうした発表の場、機会があるということで
芸も技も確実に昇華していく。
生涯修行ということですね。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
まさに様式美! (アルキメデス)
2012-01-26 16:14:03
歌舞伎の振興を図る予算が300万から3,000万になったことで
この会が復活したようです。
次回は三月、桜の頃でしょうか。
様式美がピッタリだね。
すばらしいです! (kikkoro)
2012-01-27 01:47:41
アルキメデスさま

そうだったんですか。
世界遺産にもなってますからねえ。
次回もたのしみ~~

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。