091:締
帯締めをきゅっと締めたる心地よさ秋風の声拾う夕暮れ
092:童
幽玄の湖畔に佇む菊慈童の春草描きし気高き姿
093:条件
いつの世も変わらぬ結婚の条件は心やさしく笑顔よきひと
水に土 肥料と条件そろえても思う通りにはいかぬ農業
094:担
四半世紀ぶりに会いたる担任の思いがけなき髪の白さは
095:樹
096:拭
テーブルを拭く手が止まるテレビでは爆破の街と痩せたる子らと
097:尾
尾道の友よはるかな海原を眺め子育てしているだらうか
尾花揺るる河原の先の秋の空君住む町へ長く続けり
098:激
身の裡に激しき流れを抱えつつ静かな笑みを君は見せをり
099:趣
加賀藩の栄華を偲ぶ城跡の秋の雲さえ趣のあり
趣味はお茶お花に料理昨今の女子には遥か遠き時代か
100:先
先達の言葉は重し素直なる心を持ちて受け止める日は
鍵盤の上を流れる指先の確かな動き立ち上る音
2012.09.08 完走