「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

        「ブンガワン・ソロ」 悠久の流れ

2009-12-14 06:41:01 | Weblog
先日、僕はある新聞社の若い記者から「ブンガワン・ソロ」について取材を受けた。
「ブンガワン・ソロ」はインドネシアの中部ジャワ流れる川の名前だが、この川を歌っ
た「ブンガワン・ソロ」が戦争中この地に駐屯していた日本軍兵士の間で愛唱され、
戦後復員してきた藤山一郎らによって日本でも大ヒットした。おそらくインドネシアの
歌では日本人に一番親しまれている歌だろう。

この歌は戦後長い間、インドネシア民謡とされ、教科書にもそう紹介されていた。藤
山一郎も自叙伝の中で民謡と書いている。ところが、実際にはソロ在住のシンガーソ
ング・ライター、ゲサン氏のものだった。昭和19年版「ジャワ年鑑」(ジャワ新聞社版)
には◇ゲサング(Gesang)「廿六歳、ジャワ人 「ブンガワン・ソロ」「サプタンガン」等の
名作曲があり、ビンタン・スラバヤ劇団員」と書いてある。

僕は昭和41年9月、当時勤めていた新聞社の取材でソロでゲサン氏に会い「ブンガワ
ン・ソロ」を記事にしているが、その時はまだ「ジャワ年鑑」の記述を知らず、自分が初
めてゲサン氏のことを日本に紹介したと思っていた。なぜか、その当時インドネシアで
もゲサン氏をこの歌の作者と公認していなかった。

昭和55年2月、僕はゲサン氏を札幌の雪祭りに招待し「3時のあなた」という当時あっ
たテレビ番組にも出演して貰った。その後もソロを訪れるとゲサン氏に会っていたが、
ここ数年はゲサン氏が病床にあると聞き、遠慮していた。しかし、取材を受けた記者に
よると、最近、またお元気になられたとのこと。すでに90歳を越えている。ご長寿だ。
なにか「ブンガワン・ソロ」の悠久の流れを感じた。