「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

       勤労動員と孫の職業実習

2009-12-05 07:08:36 | Weblog
中学2年の男の孫が3日間職業実習で近所のお菓子屋で働いてきた。いつから、こんな
単元が始まったのか知らないが、社会の仕組みを知る上でよいことだ。自分たちの希望
で職場を選んだそうだが、学校からの"お達し”で報酬はいっさいないとのこと、いってみ
れば”タダ働き”なわけだ。それは当然だが、最後の日に"ご苦労さん”の言葉とともに実
物の支給ぐらいあってもよいと思うのだが、手ぶらで帰宅してきた。

孫と同じ中学2年から3年にかけて、僕は勤労動員で軍需工場で働いていた。○六という
海軍の秘密潜航艇の部品を製造していた。毎日いも入りのご飯を弁当箱につめて出勤し
たが、昼食時弁当箱をあけると、すきすきで、ご飯が一方に片寄っていた。空襲警報がな
り防空壕に逃げこむと、敵の艦載機が低空で飛来し搭乗員の姿までみえた。

工場での動員は昭和20年4月までで、空襲で工場が焼けた後は、千葉県の江戸川と利根
川を結ぶ運河の浚渫工事に泊まりがけで動員された。敵の本土上陸に備えての突貫工事
であった。ここでの想い出は空腹から畑の人参を盗んで食べたことだ。

後年、亡父の当時の日記を見たら、敗戦後の11月になって4か月勤めただけの軍需工場か
ら40円退職金を貰っている。敗戦をはさんで混乱のあの時期でも、きちんと社会の秩序が保
たれていたのに驚いた。孫は"タダ働き”に文句をいっているわけではない。娘夫婦も社会の
一端が理解できて逆に良かった、といっているが、僕にはいまひとつ理解できないものがある。