安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

フィリップ・ジョルダン著「100語でたのしむオペラ」(白水社)

2017-08-28 20:01:51 | 読書

白水社の「文庫クセジュ」シリーズの一冊として、フィリップ・ジョルダン著「100語でたのしむオペラ」(武藤剛史・田口亜紀訳)が2016年6月に出版されましたが、現役指揮者がオペラの舞台裏などを語っていて面白そうなので読んでみました。

   

著者のフィリップ・ジョルダンは、1974年スイス生まれの指揮者で、父は指揮者のアルミン・ジョルダン。現在、ウィーン交響楽団音楽監督・首席指揮者およびパリ国立オペラの音楽監督で、2020/21シーズンからウィーン国立歌劇場音楽監督に就任予定。この11月にウィーン交響楽団を率いて来日予定。

   

フィリップ・ジョルダン

選ばれた100語について説明を加えることより、オペラの歴史、舞台裏で支える人たち、オペラ制作の過程などがわかるようになっている入門書です。著者は、実際に上演に当たっているので記述が具体的で、ところどころ自説もいれていて、入門書とはいえレベルが高い。100語は例えば次のようなものです。

は行・・・配役、バレエ、版、伴奏、ピット、『フィガロの結婚』、フィナーレ、普及、舞台、舞台監督、舞台装置、舞台配置、プログラム

名前が登場するオペラはいくつもありますが、100語として目次にも出てくるのは、、『ヴォツェック』、『オルフェオ』、『トラヴィアータ(椿姫)』、『トリスタンとイゾルデ』、『フィガロの結婚』の5作品で、とりわけ、モーッァルトとワーグナーの作品を高く評価しています。

興味深い内容ばかりですが、合唱の重要性について述べているのが新鮮でした。「練習」のところでも、『最初に練習を始めるのが合唱で、初日の三か月から四か月前からである。』と記されていて驚きました。

「再生」のところで、『生きたスぺクタルにおいてかけがえのないものとは、演奏者と観客がひとつになることから生まれるあの魔法の力である。どんなディスクも、どんなDVDも、同じ瞬間、同じ場所で、数百の人々が同時に味わうあの感動の力に取って代わることはできないのだ。』とあり、コンサートやライブへ出かけたくなりました。