安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

HELEN FORREST 「ON THE SUNNY SIDE OF THE STREET」

2007-11-30 22:53:06 | ヴォーカル(E~K)

信濃毎日新聞社(長野県下で48万部発行)に用事があって、3年前に新築された本社事務室内に初めて入りました。ある記者との四方山話で、地方の景気がいま一つで、県内でも特に長野市から北の方はいま一つとのことです。景気が良くなる願いを込めて「On The Sunny Side of The Street」を聴いてみます。

HELEN FORREST (ヘレン・フォレスト)
ON THE SUNNY SIDE OF THE STREET (AUDIOPHILE 1949,50年録音)

Onthesunnysideofthestreet_3

「明るい表通りで」と訳されるこの曲は、1930年の不況時代に作られたもので、コーラスのはじめから明るい調子で、不景気を吹き飛ばそうというのでしょう。「心配事はドアの内側に置き去りにして表通りに出ていきなよ」といった内容です。聴くたびに歌詞「this rover crossed over」の巧みさに感心しています。

作曲ジミー・マクヒュー、作詞ドロシー・フィールズのコンビが放ったヒット曲です。このコンビの作品は、「I Can't Give You Anything but Love」(捧ぐるは愛のみ)、「I'm in the Mood for Love」(恋の気分で)が特に有名で、ロマンチックな曲想のものが多いように思います。

歌、演奏とも数あるうちヘレン・フォレストにしてみました。ヘレンは、アーティー・ショー楽団(1938年~39年11月)、ベニー・グッドマン楽団(39年11月~41年8月)、ハリー・ジェイムス楽団(41年8月~43年)に在籍したビッグ・バンド時代の代表的女性歌手です。40年代以降は、中断もありあますが、ソロ活動を続けました。

表現の幅が広く、声量、リズム感ともに優れています。もともとはトランスクリプションだったこの作品では、Carmen DragonあるいはRay Bloch楽団の伴奏により1930年代に作られた歌を中心として20曲がきけます。今となってはスタンダードとなっているものがほとんどです。

このアルバム中、私が最も気に入っているのは、「I Keep Telling My Heart」です。1950年に作られてるので録音したときの最新曲です。無名な歌で、どこかにありそうなメロディですが、いいバラードです。表題曲の他に「Dancing on The Ceiling」、「My Reverie」、「That's My Desire」などを歌っています。


ANDRE CONDOUANT 「BROTHER MEETING」

2007-11-29 21:31:16 | ギター

お昼休みに近くの本屋でパソコン雑誌を立ち読みしてきました。ヴォーカルのレコードをCD化しようと考えていて、簡便な方法はないか調べるためですが、曲目の入力・印字など面倒だという気がして今のところ手を出しかねています。BGM代わりに聞こえてくるラジオ放送では、ギター独奏の「禁じられた遊び」がかかっていて、ギターを聴きたいと思いました。

ANDRE CONDOUANT (アンドレ・コンダン)
BROTHER MEETING (DEBS 1970年録音)

Brother_meeting

フランスのギタリストですが、出身はフランスの海外県、西インド諸島(カリブ海)のグアドループです。このアルバムは、70年代のジャズ喫茶でもかかっていたので、懐かしい名前だといわれる方もいると思います。アンドレ・コンダン(この読み方でいいのかな?)の初リーダー作です。

収録曲目にも「Blues For Wes」があるように、ウェス・モンゴメリーに親しんでいるようで、この曲ではオクターブ奏法により曲を盛り上げています。アルバムの写真から見る限り、指で直接ギターを弾いているようです。そのせいもあるのか、音は柔らかですが、かなりブルージーです。ギターの前はベースをやっていたので、そのことも奏法や音に影響しているのでしょうか。

全6曲はすべてAndreの自作ですが、彼のギターを中心としたオーソドックなモダン・ジャズであり、すべていいのでたまに聴いています。共演者は、Edd Lou (p)、Percy Heath(b)、Connie Kay(ds)というメンバーで、モダン・ジャズ・カルテットの二人はミッシェル・サルダビー(p)のDEBS盤にも起用されていました。

1966年にアニー・ロスのサイドメンとして、フランクフルト・ジャズ・フェスティヴァルに参加してMPSにその時の録音があります。その感謝の意味もあるのか、「Ballad For Annie」という曲(このAnnieは、たぶんAnnie Rossのことだと推測します)も本アルバムで演奏されます。最初の「Brother Meeting」から最後の「Astrakan」まで、じっくりと聴かせてくれる好作品です。


STAN GETZ 「STAN GETZ & BILL EVANS」

2007-11-28 20:24:36 | テナー・サックス

今朝、早く自宅を出たので、長野市トイーゴ(生涯学習施設)内にあるモス・バーガーに寄ってコーヒーを飲みました。店内に流れていたのはボサノヴァで、仕事いくのいやになりかけたのですが、帰ったらスタン・ゲッツを聴くことにして我慢して職場へと向かいました。

STAN GETZ (スタン・ゲッツ)
STAN GETZ & BILL EVANS (Verve 1964年録音)

Stangetzandbillevans  

ゲッツ(ts)とエバンス(p)の大スターの組み合わせが実現した作品です。それぞれ好きにやっていますが、実はそうリスナーが感じるのは無理がなくて、出来に納得がいかないスタン・ゲッツが録音当時発売を停止したいわくつきのアルバムです。74年にヴァーヴレーベルが勝手に発売して聴けるようになったものです。

しかしながら、ベースが日によってリチャード・デイヴィスとロン・カーターが務め、ドラムスはエルヴィン・ジョーンズという顔ぶれです。これにゲッツ、エバンスですから発売停止の作品とはいえ聴きたい思いが募ります。

ゲッツのスイートな音色が抒情を醸し出す「But Beautiful」、「Melinda」がエバンスも含めていいと思います。「Funkallero」でもゲッツはのびのびと演奏をしています。しかし、「My Heart Stood Still」、「Carpetbagger's Theme」あたりは、ゲッツ、エバンスともちぐはぐなプレイをしている感じです。曲によって、エルヴィンのドラムもそぐわないように思います。

この組み合わせは興味深いですが、グループとしてのまとまりはありません。けれども、全盛時のゲッツはやはりいいなと思うアルバムです。


「水野式音楽理論解体新書」(水野正敏著)を読みました。

2007-11-27 23:21:41 | 読書

ジャズに関する本は、ディスク・ガイドはじめ多数出版されています。しかし、理論的な分野のものはプレイする人のためには当然いろいろありますが、聴くことを主とするジャズやヴォーカルファン向けの読んで面白いものは見当たらないのが実情です。

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「水野式音楽理論解体新書」(シンコーミュージック刊)は、ジャズやロックをプレイする人向けで、最低限のコードの知識がないと、とっつきにくいかもしれません。けれども、ところどころにジャズ・ファンが承知していると鑑賞上の楽しみが増す記述があり買って得をした本です。

例えば、「ビートの表情」をとりあげ、重い、軽いを音符の長さで表示した部分はわかりやすいものでした。「ポリリズム」を楽譜で示してあり、文字で記述するより一目瞭然です。さらに「モード」の解説は、ありそうな用語辞典よりはるかに明晰で、センスのあるミュージシャンでこそ使える方法であることを教えてくれます。

スケールの章の最後に「万能型ブルーノート・ペンタトニックの5音だけでソロが出来るという不思議さは、音楽の深さにも繋がっていますね。」と記してあります。「ブルーノート」はジャズファンには、レーベル名としても親しいものですが、ブルーノート(5度のフラットも含め)が理論上もたいへん重要なものであることに改めて驚きました。

著者の水野正敏さんは、べーシスト、作曲家、プロデューサーとして活躍中であり、CD、著書をたくさん出しています。いつか「聴衆のための音楽理論入門」を、できればCD実例付で出版してもらいたいものです。


JULIE LONDON 「LOVE LETTERS」

2007-11-26 20:41:03 | ヴォーカル(E~K)

プリンターが故障し電気店に持ち込んだところ、部品交換が必要で1万円以上かかるといわれ、結局新製品を購入しました。スキャナー付きですが、CDのジャケットをスキャンすると写真の粒子まで写り出来がよくありません。解像度がよすぎるかもしれませんが、メーカーに問い合わせメールをいれました。メールと年賀状から手紙に関する曲を聴いてみます。まずは「Love Letters」です。

JULIE LONDON (ジュリー・ロンドン)
LOVE LETTERS (LIBERTY  1962年録音)

Love_letters

「Love Letters」は、Edward Heyman作詞、Victor Young作曲のスタンダード。62年にケティ・レスターでヒットし、プレスリー、キング・コールの歌でひろまりました。「離れていてもあなたからきた手紙が僕らの気持を近づけてくれる」といった歌詞と自然なメロディです。(詳しくは村尾陸男著ジャズ詞大全12巻を参照)

ジュリー・ロンドンはアルバムのタイトル曲にしています。ヴァースは歌っていませんが、ヴァースがなくても十分うれしいといった気持が伝わってくる歌いぶりです。大きな音で聞くと彼女の声の魅力を堪能できます。編曲はボビー・トゥループで弦入りの伴奏です。他に「What a Diff'rence a Day Made」、「All The Way」、「My Heart Reminds Me」、「Broken-Hearted Melody」など彼女の魅力に溢れたアルバムで代表作のひとつだと思います。

「Love Letters」は、ナット・キング・コールのヴァースからの決定的な名唱、モーリン・オハラ、ベブ・ケリー、ゴギ・グラントが歌ったのものがありました。ケニー・ドリュー(p)などの演奏ものも持っていますが、これはヴォーカルで聞きたい曲です。

「手紙」に関係しそうな曲は、他に「I'm Gonna Sit Right Down and Write Myself a Letter」、「Love Letters in The Sand」、「My Letters」(Jerri Southern) が浮かびました。12月にかけて聴いてみようかと思います。