ひょうきちの疑問

新聞・テレビ報道はおかしい。
2020年のアメリカ大統領選以後はムチャクチャ

日経平均が上昇した真相とその賞味期限

2016-07-24 16:46:15 | 国際金融

日曜日

東洋経済オンライン より
http://toyokeizai.net/articles/-/128632

日経平均が上昇した真相とその賞味期限

海外投資家が今度こそと期待する景気対策

 
 
22日の日経平均終値は182円安となったが1万6000円台後半を維持した

足元の日経平均株価は、1万6000円台後半で底固く推移している。
英国のEU離脱が伝わった6月24日の終値1万4952.02円、
あるいはその後の二番底である7月8日終値(米雇用統計発表直前)の1万5106.98円からみて、かなりの上昇だ。
この背景には、大きく分けて次の3つがあると考えている。

1)行き過ぎた日本株安・円高の修正

日本株は、最近の値動きだけ見ても、他の主要国と比べて劣後し過ぎていたし、企業収益との比較のため予想PERで測っても、行き過ぎた株安であることが示されていた。
こうした投機的な日本株安の背景には、リスク回避というニュースが増えれば円を買い、
円が上昇すれば日経平均先物を自動的に売るといった、まさに機械的な売り買いを行なうプログラム売買の存在も疑われる。
そうした円買い・日本株売りの行き過ぎが反動を迎えたわけだ。
また、「英国のEU離脱はリーマンショック並みの危機だ」
「円高に歯止めがかからず、95円、90円は必至だ」といった、
いたずらな悲観論に煽られてしまった面も大きいだろう。

ポジティブサプライズだった会見

2)米国経済の堅調推移と、それを受けた米株高および米ドル高・円安

前回の投稿(7月10日付)では、
「今週は米雇用統計を転機として、当面米株高・米ドル高の流れが生じ、それが日本株を側面支援すると見込む」
と書いたが、まったくその通りとなった。
米10年国債利回りをみても、雇用統計発表までは1.3%台を中心とした動きだったものが、
時折ザラ場で1.6%を超えるようになり、
先週末は1.57%で引けている。
米景気が良く、米国株が上昇し、それを受けて長期金利が強含んでいる、
ということであれば、米ドルが対円で上昇するのは自然なことだ。

3)日本の経済対策への期待

参院選(7月10日)の直後に、安倍首相が景気対策について記者会見したのは、タイミングとしてポジティブサプライズであった。
第2次補正予算は9月下旬から開かれる臨時国会で審議される予定であり、
景気対策が話題に上るのは、その少し前(せいぜい8月頃)だと見込まれていたからだ。
経済対策が市場に好感されたのは、タイミングの早さもあったが、4年ぶりに建設国債を発行すると報じられた点もあっただろう。
なぜ建設国債発行が好材料視されたかという理由は2つある。

1つは、税収だけで経済対策をまかなう場合に比べ、国債増発分だけ、対策の規模が大型化するとの期待が生じたこと。
もう1つは、ヘリコプターマネーの「ようなもの」になるという解釈が、特に海外投資家の間に広がったことだ。
いわゆるヘリコプターマネーの厳密な定義は、政府が発行する国債を日銀が直接引き受け、
しかもその国債は永久国債(あるいは国債の償還が来るたびに、日銀が機械的に新しい国債に乗り換える)など、政府が償還を気にしなくてよい形にすることだ。
この意味での実施はありえないだろう。

「ヘリコプターマネーのようなもの」への期待

7月21日の日本時間夕に、英BBCラジオが黒田総裁のインタビューを放送し、
そのなかで総裁がヘリコプターマネーについて、
必要も可能性もない、と述べたため、一時為替相場が円高に振れた。
しかし、上記で述べたような定義によるヘリコプターマネーの実施は、もともとありそうもないのだから、黒田総裁の発言は当然のことだ
(余談だが、BBCの広報担当者によれば、総裁のインタビューは、だいぶ前の6月17日に収録されたものだそうだ)。
また、7月13日に菅官房長官がヘリコプターマネーを政府が検討している事実はない、
と述べているのだから、黒田総裁のインタビューは、ますますサプライズではない。

そうしたサプライズでもないことをサプライズのように騒ぐ市場の体たらくは横に置いて、
海外投資家が期待しているのは、ヘリコプターマネーそのものではなく、
前述したような、ヘリコプターマネーの「ようなもの」(米国投資家は、like-helicopter-money と言っている)だ。
すなわち、政府が建設国債を増発する意向で、それと協働しているのか勝手に独自に動いているのかはさておき、
日銀が国債買い入れを増額すれば、それは結局ヘリコプターマネーのようなものだろう、
という考え方だ。

この「ようなもの」の考え方に沿って、
なぜ海外投資家が円安・日本株高が進むと見込んでいるのかを述べよう。

これまでの量的緩和は、政府が財政赤字穴埋めのための赤字国債を予定通りの額だけ発行し、
最初は銀行などが保有したものを日銀が銀行から買い取る、という形だ。
つまり、国債の保有者が民間銀行から日銀に移転するだけだ。
当初は、民間銀行にとって、国債が現金に化けることになるため、その現金を、国債ではなく融資や外貨建て資産・株式への投資に振り向けることで、
景気や株価を支え、円安になるという期待があった。
しかし実際には、銀行は景気低迷で融資が伸びず、
株式や外貨建て資産への投資リスクを冒すこともできず、
消去法的に、再度国債へおカネが流れることとなっている。

これに対し、意図しているのか否かは別として、建設国債の増発と日銀の国債買い入れのセットになれば、
最終的には日銀から政府に資金が流れ、
政府はそのカネを経済対策に確実に使う(建設国債の資金使途の縛りによる)ため、
資金は経済全体に散布されると見込まれる
(ただし今回の建設国債の発行額は1兆円程度と見込まれており、規模は限定的だ)。
とすれば、今度こそ経済全体にとって、これまでよりはカネ余り効果が生じ、
その資金の一部が外貨建て資産に向かうかもしれない、という期待が生じているわけだ。

8月半ばまでなら1万8000円超えも

ここで、今週からその先の国内株式市況を展望しよう。
日銀金融政策決定会合(28日~29日)では、
展望レポートで日銀自身が物価見通しを下方修正すると見込まれることもあって、
国債等の買い入れ増は打ち出されると予想している。
またその先には、8月上旬とみられる経済対策の具体化が控えている。
とすれば、今週から8月半ば辺りにかけては、日経平均株価は上伸し、
1万8000円を超えてくることもありうると見込む。
そのなかで今週の日経平均株価は、1万6500円~1万7300円を予想する。
ただし8月半ば以降は、残念ながら株価は下落基調に転じると考えている。
これは次回の本欄で述べることとしたい。