リルケ(ドイツ人、詩人)
『マルテの手記』(1910)
昔はこうではなかった。
昔の人は知っていた。
ちょうど果実が果心を持つように、人は己のなかに死を持っていた。
子供たちは小さな死を、大人たちは大きな死を持っていた。
自分の死というものをみんな持っていた。
そして、死を持っているというそのことが、
彼らに独特の威厳と静かな誇りとを与えていた。
そういう状況はもうなくなった。
『マルテの手記』(1910)
昔はこうではなかった。
昔の人は知っていた。
ちょうど果実が果心を持つように、人は己のなかに死を持っていた。
子供たちは小さな死を、大人たちは大きな死を持っていた。
自分の死というものをみんな持っていた。
そして、死を持っているというそのことが、
彼らに独特の威厳と静かな誇りとを与えていた。
そういう状況はもうなくなった。