明日は大阪府教委委員会7月定例会です。「日の丸・君が代」強制反対ホットライン大阪は大阪府教育委員会に下記抗議と撤回要求書を提出します。
大阪府教育委員会様
大阪府教委の教科書選定への不当介入に抗議し、撤回を要求する!
2013年7月24
「日の丸・君が代」強制反対ホットライン大阪
大阪府教育委員会は7月9日、各高校での教科書選定に関し、特定の教科書を名指しで、その記述内容が「一面的だ」との見解を和田良彦(教育振興室長)名で、各学校長・准校長に通達するという異例な行為を行った。
その教科書は実教出版の「高校日本史A」「高校日本史B」で「国旗国歌法」についての注釈の記述についてである。注釈には、「国旗・国歌法をめぐっては、日の丸・君が代がアジアに対する侵略戦争ではたした役割とともに、思想・良心の自由、とりわけ内心の自由をどう保護するかが議論となった。政府は、この法律によって国民に国旗掲揚、国歌斉唱などを強制するものではないことを国会審議で明らかにした。しかし一部の自治体で公務員への強制の動きがある」とある。
この記述は全くの客観的事実である。文部科学省の検定にも合格している。だが、それにもかかわらず、大阪府教育委員会はこの記述について「一面的なものであると考えます」という。その理由を「学習指導要領の趣旨や、平成24年1月16日の最高裁判決で、国歌斉唱時の起立斉唱等を教員に求めた校長の職務命令が合憲であると認められたことに、全く言及がない」こととしている。
また「過日、東京都教育委員会は『実教出版株式会社の教科書・・・(中略)・・・を都立高等学校において、使用することは適切ではないと考える』との見解を示しました。」と付記している。東京都教育委員会は教育委員長の主導により「都教委の方針と異なる記述があることについて、指導部に指示して教育委員会の見解をまとめさせ」教育委員会の審議にかけ、その決定として各高校に6月27日に周知したと報道されている。東京都教育委員会が見解を示したから、大阪府教育委員会も見解を示す必然性は何もない。
私たちは以下の問題点を指摘し、大阪府教育委員会へ抗議し、「見解」の撤回を要求すると共に誠意ある回答を要求する。
(1)教科書選定の第一義的権限は教員にある。教員には憲法23条の「学問の自由の保障」に基づく「教育の自由」「教授の自由」が保障されなければならない。教科書の選定はその自由の要素のひとつである。この自由を侵す政治介入は許されない。
(2)教科書記述批判を敢えて示すことは、憲法21条の表現の自由、出版の自由や検閲の禁止条項を公権力が侵す憲法違反である。「この教科書の採択しないとの結論まで至っておりません。」といいつつ、「校長の権限と責任のもと、選定理由を十分明確にし」と暗に不採択への圧力をかける文章表現をしている。これは明らかに政治介入である。
(3)教育委員会は、「地教行法」23条の五で「教育課程・学習指導、六」で「教科書その他の教材の取扱いに関すること」の管理・執行の権限が規定されている。だが、これらは外形的事案に関する処理であり教育内容に介入すべきものではない。教育基本法第16条にも「教育は不当な支配に服することなく」と規定し、「この法律と他の法律の定めるところにより行われるべきものであり」としている。だが、人権保障の憲法原理に反する執行は許されるものではない。
(4)「学習指導要領の趣旨に言及がない」からと「一面的」との理由をあげているが、学習指導要領は生徒への起立斉唱を「指導するものとする」とされており、教員への起立斉唱義務は規定されていない。
(5)「平成24年1月16日の最高裁判決で、国歌斉唱時の起立斉唱等を教員に求めた校長の職務命令が合憲であると認められたことに、全く言及がない」と述べている。だが最高裁は職務命令は教員の「思想・良心の自由」の「間接的制約」であることを認めている。
最高裁(2011.6.14)第3小法廷田原睦夫裁判官の反対意見でも「『斉唱』は、斉唱者が積極的に声を出して『唱う』ものであるから、国歌に対して否定的な歴史観や世界観を有する者にとっては、その歴史観、世界観と真っ向から対立する行為」であり、それを強制することは「思想、信条に係る内心の核心的部分を侵害するもの」と直接的制約に言及している。
東豊中高校事件大阪高裁判決(2009.9.9確定)でも、「君が代という国歌が担ってきた戦前からの歴史的役割に対する認識や歌詞の内容から、君が代に対し負のイデオロギーないし抵抗感を持つ者が、その斉唱を強制されることを思想信条の自由に対する侵害であると考えることには一理ある。とりわけ、『唱う』という行為は、個々人にとって情感を伴わざるをえない積極的身体的行為であるから、これを強要されることは、内心の自由に対する侵害となる危険性が高い。したがって、君が代を斉唱しない自由を尊重されるべきである。」と判示している。
「君が代」斉唱時の教員への起立斉唱の職務命令による強制には、数々の問題点があることを府教委は認識すべきである。
(6)「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」という客観的事実を隠蔽し、偏った現実認識・知識を提示することは、最高裁1976年5月21日の旭川学テ判決の法理に反している。旭川学テ判決は、「殊に個人の基本的自由を認め、その人格の独立を国政上尊重すべきものとしている憲法の下においては、子どもが自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような国家的介入、例えば、誤った知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制するようなことは、憲法26条、13条の規定上からも許されない・・・」とも言及しているのである。
(7)今回の「見解」について大阪府教育委員会として事前に審議し、委員会決定としてだしているのか、また事前審議をしていないのなら、点検・評価をどのように行ったのかを府民に明らかにする必要がある。
(8)今回の「見解」で府教委が問題視した「日本史A」の教科書はすでに昨年度から新課程用のものとして採択の対象にされていたものであり、複数の府立学校が同教科書を選定し、府教委がそのまま採択した事実が存在している。「日本史A」で学習している現在の1年生は、来年度の1年生が他の教科書を使うことになったと報道などで知ることとなった場合、自分たちは不適切な教科書での学習を強制されているのかという不安感と学校への不信感を抱くことにもなりかねない。つまり府教委は、2012年度採択の際には何も問題にせず、2013年度の採択で突如として問題視する「見解」を表明することは、学校現場の教科書選定に少なからぬ影響を及ぼす行政行為であり、行政の一貫性、統一性と公平・公正さに反するものである。
私たちは、以上の諸点について大阪府教育委員会は見解表明を文書で行い、その内容についての「応接」をすることを要求する。文書回答は8月5日までにお願いする。
以上