庭の花たちと野の花散策記

山野草と梅が大好きの「雑草」。花以外は思考不可の植物人間の庭の花と野の花散策記です。

西の谷のムサシアブミを訪ねる 何と小葉5枚が見つかる

2021年10月31日 | 野草を訪ねて


顎鬚仙人さんから千波公園の「西の谷」にムサシアブミがあることを教えていただきました。合わせてご友人の洋ちゃんが『「西の谷緑地公園」を美しく!』というブログに掲載されておられることを教えていただきました。
そしてさらに顎鬚仙人さんに現地を案内していただきました。至れり尽くせりの顎鬚仙人さんに感謝感謝です。

西の谷は千波湖の北側にあって、上流は天王町の金魚坂です。ここから谷を南下して神崎寺の裏を迂回して常磐線に至ります。

西の谷公園やや奥から上流の金魚坂方向を見ています。

また国道50号泉町1丁目交差点から京成百貨店を左に見て280mほど南下して、路地を右折し、階段を降りることによって西の谷公園の中心的な広場へ行くことができます。

西の谷公園やや奥から下流を見る。左の建物が新トイレで、黄葉したイチョウのところへ階段で降りてきます。
正面の森が谷の東側で、今回はさらに下流にある駐車場からのぼってきました。右端の森が谷の西側でこの森の上に神崎寺があります。


西の谷の両側は急な斜面になっていて、地層がむき出しになっている場所があります。水戸層と言われる水を通さない凝灰質シルト岩の上に、上市層という水を通す砂礫の層があります。上市台地に降った雨水はこの2層の境目を流れてきて、西の谷の斜面などで湧水となっています。偕楽園の吐玉泉もこの湧水を利用したものです。また、この凝灰質シルト岩を切り出して加工したものが笠原水源から下市へ水を流した筧に使われています。
 西の谷公園では西側と東側に湧水があって、それぞれが公園の東西にある小川に流れ込んでいます。この湧水と小川の間の湿った森の中にムサシアブミが生えています。
 ムサシアブミは意外とデリケートな植物のようでして、この湧水と小川の間の範囲外にはほとんど生えていないようです。適度な湿潤と日当たり具合、そしてほぼ北限ですから低温にさらされないなどの条件をクリアする場所という限られた範囲にしか生育できないのだと思います。その点では湧水が豊富で、低温になりにくいことが自生地としては最も大切なのかもしれません。

そのような観点からムサシアブミを探しますと思いのほかたくさん見つけることができました。


ムサシアブミの株は3本の茎からなっています。中心にあるのが花径です。これに花をつけ、現在は実がなっています。
この花径を巻いている葉柄が2本あります。



4月に咲く花(仏炎苞)はとてもユニークな形をしています。実際の花はこの苞の中にあります。西の谷の花の色は黒っぽいようです。西日本では黒が少ない緑色の花があるようです。上の3枚はいずれも庭で咲いた花です。

花が咲いても間もなく5月初めには花径もろともに枯れてしまう株があります。このすぐに枯れてしまう花を咲かせたのはじつは雄株です。雌株は秋になっても花径は枯れず実をならせています。

秋が深まるとムサシアブミの実はこのように真っ赤になります。西の谷でも大きな実がなっていますので、真っ赤な実を期待できます。
 ムサシアブミは発芽から数年は雄株で、大きな株になると雌株へと性転換します。年数がたっても、環境が悪かったりして大きな株になれないときは花が咲かないか、咲いても雄花のために実がなりません。西の谷では写真のような大きな実は数株でしたが、小さな実をつけたのは結構見つかりました。


ムサシアブミは前述のように一株に二つの葉があります。ひとつの葉には通常3小葉がついています。(一株では合計6小葉です)
この3枚の小葉は葉体は独立していて繋がっていません。

ムサシアブミに非常によく似た葉があります。オオハンゲです。オオハンゲはカラスビシャクに似て、カラスビシャクよりも大きな花を咲かせ、実をならせますから、花を見れば一目瞭然ムサシアブミと区別できます。でも葉はよく似ていますので、顎鬚仙人さんから、比較的小さい葉のムサシアブミの写真を送っていただいたとき、オオハンゲではないかと思ってしまいました。もし西の谷にオオハンゲがあったら大発見なのですが、よくよく見ればオオハンゲではなかったわけです。オオハンゲの3枚の小葉は元のほうで葉体が繋がっています。(上の写真はオオハンゲです)ムサシアブミが花を咲かせるくらいに大きくなると、葉の大きさが全く違うのでわかりやすいのですが、同じくらいの大きさの葉では間違いやすいです。
さて、西の谷で今回不思議な葉を見つけました。

画面中央の葉です。小葉が5枚です。

分かりやすいように小葉に番号をつけました。
1・2・3が通常の3小葉です。4・5が通常の3小葉の上についています。これは大きな株の片方の葉で、もう一方の葉は通常の3小葉です。庭で、ムサシアブミを10年以上栽培してきましたが、このような葉を見たことがありません。ネット上でもこのような葉があるか検索しましたが見つかりませんでした。
どうしてこのような5小葉の葉ができたのでしょうか。今年限りなのでしょうか。それとも今後も毎年5小葉の葉が出るのでしょうか。興味深いことです。

いろいろなテンナンショウの葉を調べたところ似た葉がつくのはユキモチソウにあることがわかりました。

これは庭で咲かせたユキモチソウです。画面下の葉が小葉5枚です。ユキモチソウの葉は小葉が3枚か5枚のようです。
5小葉のつき方を比較すると微妙に違うこともわかりました。2小葉のつく方向が反対向きになっています。
分かりやすく描いてみました。

ムサシアブミの5小葉

ユキモチソウの5小葉
ユキモチソウでは5小葉は普通にみられますが、ムサシアブミの5小葉は誰も見たことがないと言ってもよいほど珍しいことと思います。来年も、再来年も観察を続けてみたいものです。
この度、顎鬚仙人さんにはムサシアブミの存在と地層のことも教えていただきました。さらに、千波湖へ自力で行くには遠くなってしまった雑草を連れて行ってくださいました。さらにさらに視力の衰えた雑草だけではほんの一部しか見つからなかったのに、たくさんのムサシアブミを見つけていただきました。こうして珍しい5小葉のムサシアブミにも出会え楽しいひと時を与えていただき感謝感謝です。また、来年も、再来年も観察したいという意欲までいただきました。ありがとうございました。





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