先に 「万葉集の植物について 巻14 3451の「さなつら」についての考察 追記する 」で万葉集の1首について自己流の珍説を書いたが、そのころからもう一つ疑問に思っていたことがありました。
それはリョウブについて万葉集には1首も歌われていないことです。
偕楽園のリョウブ
リョウブは夏に白い小花が穂状に咲き、芳香があります。サルスベリのように樹皮が剥がれ落ち、斑模様の木肌を持つことが特徴です。
また若葉は山菜として、、たとへばリョウブ飯しなどとして食べられます。
リョウブの名前の由来は平安時代の飢饉の際に食用とすることを命じられた「令法」が語源です。古名はハタツモリです。山の尾根筋によく見られる木ですが、当時は畑にも植えられていました。
きっと万葉集には登場するはずと全4516首を調べたのですがそれらしい歌が見つかりません。
もう一度、白い花で香りがする花などがうたわれている歌などを手掛かりに探したところ、
巻09 1694番の歌が候補にあがりました。
細比礼乃 鷺坂山 白管自 吾尓尼保波尼 妹尓示
たくひれの さぎさかやまの しらつつじ われににほはに いもにしめさむ
この「しらつつじ」がもしかしたら、リョウブではないだろうかと思ったのす。
ツツジの花の中にも、ホツツジというちょっとこれに似た咲き方をするものがあります。
ホツツジ@鬼のしたぶるい
リョウブはツツジよりかなり大きいですから、もしリョウブに別名があったら、オオホツツジとでも言われそう。 また山菜ということから、オオツツジ菜とかともいわれそうです。またツツジにはほとんど香りがないが、リョウブは甘い香りが人を引き付けます。そう考えるとこの歌はリョウブではないかと強く思いました。
そこで一般に解釈されているこの歌意を調べました。
歌意は万葉ナビによると
「栲領巾のように真っ白な鷺の坂。そこに咲くこれまた真っ白な白ツツジ。その美しい白に私を染め上げてくれないか。帰ったら妻に見せたいから。」
とあり、「われににほはに」を私を染め上げてくれないかと。
色を染めるという意味もあるのかと調べたら、確かに匂うには、香りが匂うほかに、色づく・染まるなどの意味もあったのですね。驚きました。
ちょっと落ち込むも、もしかしたらリョウブの花の可能性もあるのではないかと、リョウブの名の方言などで古い名が残っていないかを調べてみました。
何とリョウブの名にあぶらつつじ・うまつつじ・オオツツジ・オニツツジ・しらつつじ・しろつつじ・しろとつつじ・つつじな・ハタツモリ・ぼーりょーつつじなどなどこのほかにもたくさんの名前が各地にあることがわかりました。
この歌の「しらつつじ」をリョウブとして、リョウブの甘い香りを着物ににおわせて持ち帰って妻ににおわせてあげたいというような男の気持ちがうたいこまれているという解釈ではどうでしょうかね。
またまた珍説、でもこれも良いかと自己満足しているしだいです。