良い初夢を見たいと思っていたのに夢を見ない。
今年に入って全く夢を見ていないと思っていた。
しかし昨日、夢を見ていたことに気がついた。
何日前に見たか分からないがあれは夢だったのだ。
1枚の写真を見ている夢。明治生まれの曾祖母も写っている家族写真。
もう私の記憶が曖昧になっているその写真を、夢の中で細部まで見て
ああ、あの写真はこういう写真だったのだと記憶を新たにし、喜んでいる
私がいた。
二十数年前、その写真を見ながら詩らしきものを書いたことがある。
『一枚の写真』
セピア色した一枚の家族写真
わら屋根の軒が障子に淡く影を落とし
明治十二年生まれの曾祖母と
三十代の父母(ちちはは)と 私らきょうだい三人が
妙にすまして写ってる
着物姿の曾祖母は 白い足袋などはいていて
学生服の弟は 胸に名札をつけている
父はVネックのセーターで
母は4~5才の妹の肩を抱きしめ写ってる
私は結構やせていて ショートカットでうつむき加減
この一瞬のひと時
この一瞬のひと時よ
ドラマのように時は流れ
それぞれの人生を それぞれが歩いて行った
七十代の老い母がひとり住んでるふるさとで
何十年ぶりかに見つけた写真
夜更けにひとり眺めていたら
上がり框(がまち)に腰掛けたみんながフワッと動いた気がした
どうしてこういう夢を見たのか?
思い当たる節がある。
私は毎朝7時15分からNHKプレミアムで『本日も晴天なり』という以前放送
された再放送の15分ドラマを見ている。
そのドラマに出てくるお婆さんの姿が私の曾祖母の姿と重なるところがあり
「ババさんも、こういう髪型をしていたなあ。顔の彫りの深さもよく似ている」
と思いながらそのドラマを見ている。
テレビでお婆さん役を演じているのはプロレタリア文学作家の中野重治さんの
奥さんの 原 泉 さん。
明治12年生まれの曾祖母は家付きの娘で大人しい婿養子を取り、長いキセルで
タバコをぷかぷか吸うが我々ひ孫のしつけには親より厳しかったりした。
原 泉さんをテレビで見て曾祖母のことを思い出したりしていたので
こういう夢を見たのかもしれない。
夢で見たその写真と実際の写真がどう違うのか確認したくて昨日から
その一枚の家族写真を探している。
でも、もうその写真は見つからないような気がする。
私は気に入った写真をアルバムから剥がして何度も眺め 、そしていつしか
紛失してしまう事が今まで何度もあった。
曾祖母が写っている唯一の写真だったのに・・・残念だなあ・・・
右端 ドラマの中の原泉さん。
ババさんは歌手の三波春夫のファンでテレビに三波春夫が出ると急に掃除を
始めていた。
テレビからこちらの状況が見えてしまうと思い込んでいるようだった。
肘をついてご飯を食べてはいけないとか箸の持ち方とか箒の使い方とか
色々教えて貰ったが、素直に従う性格では無かったのであまり身についていない。