薫 風 ~KUNPOO~

初夏に薫る爽やかな風に思いをよせ、YukirinとKaorinが日々の出来事などを綴るページです。

武器としての<言葉政治>

2006-03-02 | 本  棚
■ 高瀬淳一『武器としての<言葉政治>』講談社選書メチエ。政治家の「言葉で政治をする手法」に注目して、現代政治を分析した一冊。

■ 利益分配型の“角栄型政治手法”から不利益分配型の“小泉型政治手法”へ…小泉首相の登場により、日本の政治は、いま大きな転換期を迎えています。つまり、小泉さんが「自民党をぶっこわす!!」と叫んできたのは、派閥と利益誘導型の金権政治システムだったのだ。

■ 派閥に自己の支持基盤を持たない小泉さんにとって、議会での支持よりも国民の支持のほうが重要視されることになってきました。確かに、昨年の「郵政解散」のときも、小泉首相が直接国民に訴えた言葉、「賛成か反対か国民に聞いてみたい」という呼びかけは、(特別な支持者でなくても)なにか心に迫るものがありましたね。

■ 著者によると、田中角栄以降の、いわゆるテレビ・デモクラシー時代の首相の<言葉政治>能力に着目したとき、もっとも評価が高いのは、中曽根康弘と小泉純一郎であるといいます。なぜなら、ともに言葉やイメージで政治を動かすことを明確に意識し、しかも話術やプレゼンテーション能力に秀でているから。しかし悲しいかな、われらが羽田孜(!?)と宇野宗佑は、在任期間がいちじるしく短かったため(64日と69日)、そもそも分析の対象とさえされていません…。

■ 相変わらず高い支持率を誇る小泉首相ですが、いいことばかりでもありません。首相には国民から絶大な支持が与えられるが、それは内閣に対するものというよりも、首相個人に向けられたものとなります。そのため著者は、「国民の支持さえあれば政党や議会の意向を無視できる、という風潮が広まれば、それは議会制民主主義の根幹を崩しかねない事態である」と政治のパーソナル化という点を危惧しています。

■ しかし、これだけ小泉型政治手法が成功してしまうと、後継者もこのやり方を模倣せざるを得ないでしょうね。われわれも政治家の甘言にだまされないように、<言葉政治>を読み解く力をつけていかねばなりません。