薫 風 ~KUNPOO~

初夏に薫る爽やかな風に思いをよせ、YukirinとKaorinが日々の出来事などを綴るページです。

ラッセルのパラドクス

2005-11-18 | 本  棚
■ 三浦俊彦『ラッセルのパラドクス』岩波新書。西欧文明最大の恩恵である科学と民主主義は、討論と論証の精神にもとづいており、その論理をもっとも鮮明に打ち出しているのが、バートランド・ラッセル(1872~1970)の哲学思想なのである。・・・

■ 本書は、いきなり次のクイズから始まります。A「この犬は、吠える」、B「犬は、吠える」、この二つの文は、それぞれ正しいだろうか。論理学の用語で言うと、上の二つの文はそれぞれ、“真”でしょうか。この二つの文の区別が、伝統的アリストテレス論理学と、現代論理学との重大な違いを表している・・・。ふむ、ふむ

■ 床屋のパラドクス――ある村の床屋は、自分で髭を剃らない村人全員の髭だけを剃る。さて、村人の一人であるこの床屋自身は、自分の髭を剃るのか、剃らないのか・・・。そういえば、高校生のころ、クラスの仲間とそんなたわいもない議論をしたことを思い出しました。

■ このような例題から本書は始まりますが、後半に進むにつれ、次第に議論が複雑になっていきます。それはともかくとして、今まで気になっていたけど、人に聞くに聞けない疑問が一つ解消しました。それは、全世界に核兵器廃絶を訴えたラッセル・アインシュタイン宣言の“ラッセル”って、このイギリスの哲学者の“ラッセル”のこと?という疑問です。

■ 特殊相対性理論発表百周年である「世界物理年」(2005年)は「世界哲学年」と言ってもよい。なぜなら、分析哲学のパラダイム(ラッセルの記述理論)発表の百周年でもあり、哲学者と科学者が初めて全世界に核兵器廃絶を訴えたラッセル・アインシュタイン宣言五十周年でもあるからだ、と書かれているのを読んで、やっと胸のつかえがとれた思いです。

<photo:中尊寺にて>