como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

「花燃ゆ」第9回

2015-03-02 23:08:22 | 過去作倉庫15~
 えーっと、今週はダウントン・アビーのシーズン2最終回が控えてましたので、「花燃ゆ」は限りなく前座ポジションでした。ダウントン・アビーが終わっちゃったら何を頼りに「花燃ゆ」をみたらいいのか、心配だったんですけど、間をおかず来週からシーズン3を引き続きやるということで、ちょっと安心しています。これで折り返しの6月くらいまで、テンションを下げずにいられます。
 テンションと言えば、今週は1方向の来日ウィークということで、本格的にTwitterなどがお祭り状態。わたくしもいい年をして軽くハイになり、Twitter廃人みたいになってライブ実況の追っかけにうつつを抜かしておりました。いや、ホントに。あまりにも楽しそうなんで(白状すると、ライブにいくのを最初から想定しなかったのを後悔した)。
 そんな感じで、先週にひきつづき頭の中は1方向とダウントン・アビーの二大舶来アイテムに占拠されており、尊王攘夷ってなに?それ美味しいの??みたいな状態。そこで花燃ゆをみて感想をまとめるというのもなかなかの苦行ではありましたが、まあ今週は、別の意味でテンションが上がるトンデモ回ではありました。まじめに見ると怒りで頭がキレそうになるので、べつのものに心を持っていかれて程よく脱力していたのが、良かったと言えばよかったと思います。
 では、今週も見てまいりましょう、第9回「高杉晋作惨状」…いえ、「高杉晋作、参上」です。

 もう先週の予告の時点でいやーな予感が毒ガスのように漂っておりましたが、予想を超えた猛毒でした。こんなん本気で見てたら血圧が上がって具合が悪くなるんで、ほんと、今週いっぱい私の心を奪っていてくれた1方向には心から感謝しています。
 このblogも無駄に長くやってるんで、こういう駄作回をみるといろいろキーワード検索みたいに浮上して、いらんことまで思い出してしまうんですけど、とくにサブタイつながりで、あのワースト大河「天地人」中の名作回(の、ひとつ)「真田幸村惨状(参上)」が検索トップに…。おかげであのときの笑うに笑えず、怒るに怒れずという壮大な脱力感がよみがえってきて、なんかもう、そんなものよみがえらせてほしくなかった…。
 つい先だって「天地人」の原作者の火坂雅志氏が亡くなられるということもあり、故人に鞭打つようなことホント言いたくないんで、このタイミングにつまらんサブタイで関連付けて思い出させないでほしかったですね。
 では、ざっくりと今週のおもなイベントを思い出して見ます。

 松下村塾に暇な志のある若い者が集まってくるようになり、毎日その連中に昼飯や夜食やおやつを振る舞うというのがフミちゃんのあらたなミッションに。ただ、お握りも甘いものもタダではでないので、だんだんコストがかさみ、フミちゃんは「ちょっとでも謝礼をいただいたら…」とか言い出す。開塾の発案者のくせに軌道に乗ると金儲けを考え出す、いがいとこすっからい娘だったことが判明。
 それを松陰先生は「ぼくが皆から学んでいるのだから、金などとっては罰が当たる」などといい、塾は当面杉家の持ち出しで運営。家族がお粥や雑炊をすすっても、ただ飯食いにくる塾生への振る舞いは欠かさない。陰でブツクサいいながらも。

 そしたら、ひとりだけ妙にいい服を着た金持ちのボンふうのが現れる。これが高杉晋作ですね。絵に描いたよう不良で、最初っから超態度が悪い。でも、フミちゃんは高杉の金のかかった服装しか見ていない。「金持ちそう…」と踏んだ通り、藩のセレブ階級・大組士の家のお坊ちゃまだと判明。フミちゃんの目が輝く。「金づる…」。ということで、急に高杉を下へも置かぬ勢いでちやほやしだし、おやつの饅頭もほかの連中とは別皿で数も多いし。よかったらおうちにうかがって妹さんたちにも振る舞いますとかいいだす。
 げっ、ほんとにスイーツ大河してやがる。冗談かとおもったら本気で、フミちゃんは高杉家のお屋敷にいって三人の妹たちにスイーツづくりしてご機嫌をとったりなどする。そんでお父上に「罪人の家の娘が。二度と来るな」とかいわれてたたき出される。
 ちなみにこの高杉晋作の三人の妹がドラマなどに出てくるのは非常にレアだと思います。じつは、この幼い妹のひとりが、のちに諸事情から高杉家を「廃嫡」扱いになる晋作にかわって家を継ぐため、新婚の婚家から強引に戻されるという秘話がある由なのですが、そんなことまで期待するようなドラマじゃないやね。

 で、高杉は、なんかもう尾崎豊のうたの世界で、家とか学校がつまらなくてしかたがない。小田村伊之助にすすめられて村塾にいってみるものの、そこで天敵の久坂玄瑞と比べられて半ギレになって飛び出したりする。完ぺきな中二ですが、もともと高杉晋作という人は実際の幕末史的にも、中二がまちがって歴史をまわしてしまったみたいな人なので、キャラが中二っぽいのは織り込み済みでしょうけど、それにしても…。

 いろいろおもしろくない高杉は、退屈まぎれに、杉家の聾唖の末息子・敏三郎を悪の道に引きずり込む。敏三郎は酔っ払って帰ってきたり、体じゅうすりむいていたり、家のお金を持ち出したりする。どうしたの、敏三郎。塾生の注進で衝撃的な事実を知ったフミちゃんは、敏三郎を追っててみると、なんと昼間っからキャバクラ遊郭に、家の生活費を持ち出して、キャバ嬢はべられせて酔っ払いくさっておる。未成年のくせに。
 で、フミちゃんが問い詰めると、敏三郎は懸命の手話で、ボクはもう子供じゃない!ボクもう男だ!!みたいなことをいう。高杉先輩も便乗して、お前は弟のことをなにもわかっていなーい!こいつは強い大人になりたいんだ、それをわかってやれとかいって、でもそれって、未成年連れてキャバクラにしけこんでるようなシチュエーションで言ってもぜんぜん説得力ないですけど。じつは写本を作って売って家計の足しにするつもりだったとかいっても、現実に家の生活費を持ち出してキャバクラで豪遊するとか、未成年の後輩にそういうことやらせてる高杉にしても、まったく正当化する余地が無いと思いますけどね。

 あまりのことに混乱し、ありえねーーーっつーーーの!!!…じゃないや、バカッタレー!とか言って号泣するフミちゃん。それを見て、どどどうしたんや、高杉になにされたんや!!とオロオロうろたえる久坂玄瑞。
 いやあ、今週も、この久坂玄瑞の棒っきれみたいな直球の存在感が、一服の清涼剤でしたよ。高杉晋作の、あまりにも無理のある花形満キャラが恥ずかしくてしょうがないので、この久坂玄瑞に癒しと安心感をもとめてすがるように見てしまった。いやいや…わたし東出君をなめていたかもしれませんわ。先週に引き続き輝いてましたもん、彼。この、あまりにもどうしようもないシチュエーションの中で。
 どうみても、花形満みたいな高杉晋作にたいし、重いコンダラをひいて試練の道を行く(注*)星飛雄馬なキャラはこの久坂玄瑞だと思うんで、ほんと、ドラマの重しになって頑張ってほしいと思います。しかし、東出君にそんなこと求めることになるとは、ほんとに想像もしてなかったわ…

注* テレビアニメ版の「巨人の星」のOPテーマ「思い込んだら、試練の道を~」というくだりを「重いコンダラ、試練の道を」と空耳し、そこのところのOP画で飛雄馬が引いているグラウンドならしのローラーが「コンダラ」という物体だと誤解したまま成長した人が少なからずいたという、有名な昭和の実話)

 そんで最後は、とりあえず敏三郎が、写本がちょっと売れたかなんかでできたお金でゴティバのチョコレートみたいな高級菓子をお姉ちゃんに買ってきて、あっさり和解。高杉晋作はついに盗んだバイクで走り出し松下村塾に転がり込み、さらに村塾には、町で高杉とぶつかって骨折した伊藤利助という男が追加される。この男、のちに日本初代の総理大臣になるということは本人ですらする由もない。…って本人が知ってるわけないだろうが
 同じことをラストでもう一回いいますが、このしつこい「内閣総理大臣推し」ってやめたほうがいいと思うよ。誤解を招くから。なんか、談合とか癒着の腐臭が永田町方面から漂ってきちゃったりするから。いや余計なことですけど。

そのほか、ちょっと思ったことなどを

 この無駄に長くやってるblogで何回も感じたことなんですけど、大河ドラマの良作というのは、ドラマ上で歴史上の出来事と現代の突発事件・事象がぴたっとタイムリーにシンクロすることが、まま起こります。
 古今東西人間のやることというのは基本的にそう変わらないので、ある意味人間ドラマの本質に触れる、ということから起こる現象なのかもしれません。そういうことが起こるとちょっと襟を正す気持ちになるし、本来歴史を知って「勉強になる」というのはこういうことだなあ…としみじみ思ったりするのです。
 で、駄作や愚作の場合そういうことはおこらないかというと、実はすごくネガティブな形で発生することもあるんですね。
 以下、ちょっと不謹慎な話になるかもしれませんがご容赦を。このまえチラッと触れた、長州=テロリストの側面を、中東の過激派組織が世界を揺るがしているこの時節柄どう処理していくのか、といったことなどもその例かもしれませんが、今週の、高杉晋作が杉敏三郎を遊郭に連れ出して悪い遊びを教えるといった、荒唐無稽にもほどがあるエピソードとシンクロするように、大変にいたましい事件が実際にありました。
 こういうことはホントに二度と起こってほしくないですし、大河ドラマの内容となんの関係もないのはもちろん承知の上で言うのですが、やっぱり、いろいろ不純な動機を集めて作ったようなドラマって、不穏な話題を図らずも引き寄せてしまい、シャレにならない空気をまとうことは、実はあるんじゃないかと思うのです。

 こんなことは、過去の大河ドラマではあまり感じたことはないのですが、なんかこう、先週冗談で「はやめに話をたたんで打ち切ったほうが」となどといったのが、だんだんシャレじゃなく現実味を帯びてくるような…。

 そんなのはふと頭をよぎった戯言としても、吉田松陰の聾唖の実弟を、高杉晋作が遊郭に連れ出して遊びを教え、家の金を使い込ませるというようなフィクションは、低レベルにもほどがあるし、面白ければなんでもよいという次元を超えているように思います。
 こんな下品な創作を入れる必要はまったくないばかりか、くだらない創作以前に、実話にドラマ性をもとめる姿勢を最初から放棄していることに、怒るまいと思いつつも、やはり怒りを覚えます。
 あいかわらず視聴率は最低レベルをフラフラしてるみたいですが、こんなドラマは多少でも評判をとったりしなくていい。NHKの黒歴史として、二度とこんな駄作は作るまいと製作者が懲りるくらいで丁度いいんではないでしょうか。

 で、まあちょっとまとめてマジ怒りしてみました。来週は、「諸君、来る板前」…じゃない「諸君、狂いたまえ」ですっけ? なんか、こんなどうでもいい感じで安政の大獄まで続くんでしょうけど、そこまでの年表上の出来事をぜんぜん説明してなくて、どうやって松陰を処刑まで持ってくつもりなのかな。
 そんでは、また来週お目にかかります。


6 コメント

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今回は残念な方の脚本家でしたので。 (背高)
2015-03-03 22:09:13
OPで脚本家を見て、やはりな内容。
松陰が死ぬところまでは頑張って見るつもりですが、正直つらい。
30年前とか40年前の脚本をそのままにリメイクとかダメなんでしょうか。(徳川家康とか。)
向こう5年くらい昔の脚本でリメイクを続けて、基準線を上げれば、脚本の質が上がるのではと妄想します。
この作品のいいところを考えてみたら、BGMとナレーターしかなかった。(あくまで、現在のところですが。)
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成長した敏三郎 (SFurrow)
2015-03-05 22:54:18
最初、誰だかわかんなかった。塾生のひとりかと思ってた・・・

>開塾の発案者のくせに軌道に乗ると金儲けを考え出す、いがいとこすっからい娘

そりゃ長州の女子ですから、状況の変化には機敏に対応しまっせ♪どっか北の方の、まわりがどう変わってるのか全く理解しないまんま、鉄砲ぶっ放し続けるようなのとは一緒になりまへん。っていうか、「こすっからい」とか甲州人に言われる筋合いはないどぉ~~(ってどこの方言じゃ)

火坂雅志さん、訃報にびっくりしました。まだ五十代の若さ…大河原作者で、次々と精力的に長編を発表されていて、その割には扱いが地味だったような・・・(まぁ、庵主様も触れておられたとんでもない事件もありましたし)
火坂さんの作品は、セリフ付Wikipediaとでもいうのか、「この人何した人だっけ」っていうのを知りたい時は便利な、それ以上でもそれ以下でもないような感じで、「江」の作者と同一視されるのは気の毒かも。
むしろ見識ある脚本家なら上手にふくらませられる、脚色しやすい素材ではないかと思うので、「虎の城」とか「北条五代」などをきちんとドラマにして、誰か故人の名誉挽回をしてあげてほしいと思います。
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だから、晋作は脱がすなと・・ (ようこ)
2015-03-06 08:30:39
今週の記事も楽しく拝読いたしました。
個人的には、シャアが「大事なことなので2度言う!」をしてくれたので、3点差し上げます・・。

本作のおかげ?で「明治維新という過ち」という書籍を注文しちゃいましたよ。増補・重版の際、「日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト」ってサブタイが付いたようで。

やっぱり大河って、歴史を知ろうとするきっかけにはなりますね。
「花モニュッ」が、いっそ会津藩や「八重の桜29話まで」の再評価にでもつながればいいな。
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リメイク! (庵主)
2015-03-08 12:48:35
>背高さん、コメントありがとうございます。

ほんとに、残念なほうの人とマシなほうの人の作風の違いが顕著になってきましたが、制作的には残念な方推しという感じを受けるのはわたしだけ?

昔の大河の脚本そのままリメイクというのは、一度見てみたいと思います。ただ、俳優の存在感とか演技力が付いてくるかなあと。
でも、なんとか基礎体力を取り戻さないとどうにもなりませんよね。
昔の、大野靖子さんが脚色していたころの司馬遼太郎ものなどは、かなり原作の台詞そのままだったりもして、リメイクには好適な素材な気もしますね。その際は、ぜひ音楽も林光さんなど、当時のままでお願いしたいです。
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火坂氏の訃報 (庵主)
2015-03-08 12:59:11
>SFurrowさん

ほんとにびっくりしましたね。次の木曜時代劇かな?原作をつとめられると聞いたばかりで、しかもそれが内藤チーフP・小松江里子氏脚本という、どっかで目にした悪夢再びみたいな陣容だったので、Twitterでさんざ罵倒した直後のことだったので、なんか呆然としてしまいました。
ひところ、パツキン三流丹前作家とか言ったりして申し訳なかったと思いますが、つくづく、大河ドラマ迷走の影響でで評判落とした作家だと思います。

>セリフ付Wikipedia

ってまさに(笑)
興味深い歴史人物を取り上げる取材力と、創作力がバランスとれていなかったのかと思いますが、ほんとに、名誉回復をしてあげていただきたいと思います。
ジェームス三木先生あたりで大河ドラマ化したっていいと思うんですよね。山岡荘八だって、多作と長編ばかりで小説の内容的にはスカスカと言われていて、それでも取り上げられつくしてネタ切れになってんですから。
真田三代が「ぼくの三作目の大河原作あたりで」とかおっしゃってたご本人がその目で御覧になれないのが、一番残念なことでしょうけど。

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反薩長史観 (庵主)
2015-03-08 19:21:31
>ようこさん

>「花モニュッ」

うけました(笑) もうこのドラマのタイトルはそれでいいかと。

>日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト 

この本おもしろそうですね。反薩長史観の本って、八重ちゃんの時に会津関連をいろいろ読んで、これはこれで歪んでるよなあとおもって軽く辟易した印象があるのですが、これはそればっかりでもないような。
どっちにしても、明治維新は正しい正しくないは置いておいて、いろいろ視点を変えて検証するのが望ましい読み方だと思います。

>「八重の桜29話まで」の再評価にでもつながれば

すでにそうなってるような気がします。遅いですけどね。
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