como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

「太平記」を見る。その3

2012-07-16 22:09:06 | 往年の名作を見る夕べ
第5話「あやうし、足利家」

 前回、京からの帰国途上で逮捕された高氏(真田広之)は、そのまま侍所へ連行され、拘置される身となってしまいます。そして、長崎円喜(フランキー堺)がついに足利に宣戦布告したと、鎌倉には異様な緊張感が…。
 とりあえず貞氏父さん(緒形拳)は、執権・高時に高氏の放免を嘆願するのですが、「騒がしいのはイヤダ、面倒なことはぜんぶ円喜にまかせておる」というばかり。ようは、自分の裁量で混乱を起こしたくないんですね。奇妙にゆがんだ平和主義者です。
 がっかりして執権のもとを辞したところで、円喜と長崎高資(西岡徳馬)父子に会います。執権殿になんの御用じゃと、ネチネチと尋ねる円喜。いささか私事で…とこたえる貞氏に、「私事、私事ならこの円喜が受けたわまりましょうものを。執権殿になんのお願いじゃ、ええ?」っとまあ、実にネットリネットリと絡み、貞氏の胸を扇でペチッと叩いて侮辱します。
 屈辱をかみしめ、黙って背を向けて帰ってきた貞氏は、妻の清子(藤村志保)に言います。
「手をついて慈悲を請えば少しは道が開けたかもしれん。それができなかった。20年やってきたことが、できなかった。おろかじゃのう…。一生手をついて、慈悲を乞うて、それで安穏にくらせるなら、なぜ手をつかん」
 うう…(泣)。ここで、緒形さんの、子を思う気持ちっていうよりも、家を守る家長と、一門の誇りと、北条一門への憎しみの板挟みの男心が滲み出て、ほんとタマランのですよね。

 そして貞氏は、親友の連署・金沢貞顕(児玉清)のはからいで、逮捕後はじめて高氏に面会します。
 こういう緊迫した状況でも、親子らしく、家族のようすを話したり、しょうもない冗談でフハハハと笑ったりするんですけど、高氏がふと真顔で、言うんですね、
「我らの鎌倉がいかほどのものか、この目でしかと見届けとうござりまする。合点のゆかぬときは、高氏はこの牢を蹴破ってでもいで、鎌倉と一戦交える覚悟。父上はいかがなされまする」
…そう、この回の主役は、高氏というより貞氏なんですね。咎人になった息子の高氏からも、どう行動するべきか、どうしたいのか、男としての回答を迫られているのです。
 貞氏は息子に、「…そのほうを、いかなることがあろうと見殺しにはせぬ」と答えるのですが…。

 そして、長崎円喜を裁判長に、高氏の裁判がはじまります。
 京で日野俊基(榎木孝明)と会い、密談をかわしていた件で厳しくとがめられます。すべてを当局に通報した者がいる。その通報者が、なんと佐々木道誉(陣内孝則)だったわけです。
 相変わらず派手な着物で、デカイ態度で登場した道誉は、方々ご存じのとおり、この判官は執権殿のご命令でひそかに謀叛人一味に近づき内情をさぐっておったのじゃ、とシャアシャアと言います。そこで出会ったのが足利高氏に相違ない、と。ですが円喜に、この男が足利高氏に間違いないかと聞かれると、
「これはいかなること。足利高氏は赤ら顔の六尺もある大男、この御仁とは似ても似つかぬ」、さてはあれは偽物であったか、この判官一生の不覚…!と。
 こうして、道誉のふざけた芝居で、高氏の謀叛への関与はウヤムヤになりました。判官殿、どういうことか!!と、廊下で血相変えて問い詰める円喜を、道誉はあやしく笑って、
「この判官を動かせるのは執権殿だけじゃ」
…と、扇で円喜の胸をペチッと叩いて、立ち去るのでした。

 いよいよ高氏奪還のために足利家が謀叛を起こすか、という緊迫感のなか、新田義貞(萩原健一)が、安東十郎という者を連れて足利家を訪ねてきます。奥州で安東家という豪族の内乱が起き、それが幕府打倒の乱に発展しつつある。それに乗じて倒幕の決起をしないか…というのですね。
鎌倉幕府が内憂を抱えているのはたしかで、運次第では倒せるかもしれない。でも運が無ければ足利家全滅…。貞氏は、迷いを顔には出しませんが、「これは、新田殿のはかりごとよの?」と水を向けます。義貞はミステリアスに含み笑いして、「それがしは足利殿とちがい、無位無官の貧乏御家人。力もなければ思うところもござらぬ」と。

 登子(沢口靖子)の兄・赤橋守時(勝野洋)は、妹に請われて高氏と面会します。東国の武士が京都をちょっと見ただけで、謀叛に肩入れして鎌倉に弓を引くようなことがあるものなのか、と尋ねる守時に、高氏は率直に、「鎌倉は腐りきっている。東国武士が京都にいって、幕府に弓引く気になるというのは、ありうることだ」と。
 高氏の正直さに驚き、感動した守時は、高氏を円喜の陰謀から救うことを決意。執権・高時同席の評定の席で、「奥州の安東家の家督相続争いに乗じ、双方から莫大なる金品を受け取り、乱を悪化させた者がこの中にいる。そのせいで奥州の内乱は倒幕に傾いてしまったのだ」と暴露します。
 いわずもがなで、それは円喜のバカ息子・高資だったんですね。そのせいで、円喜はそれ以上謀叛の追及ができなくなります。歪んだ平和主義者・高時の「わしは疲れた。何事も穏やかがよいぞ穏やかが…足利とは仲ようにいたせ」と鶴の一声で、話はすべて決着。
 バカ息子のせいで目論見が外れた円喜は、高資をぼこぼこに打擲します。「北条家はいま傾いておるのじゃ。北条家が倒れたら幕府も倒れる、そうなってはならぬゆえ血を流してきたのがわからぬか、このウツケ!!」…と、まあ、円喜は円喜なりの正義感に基づいて行動しているのが、チラリと見えるのでした。

こうして高氏は無罪放免に。知らせを聞いた貞氏父さんが家の廊下で、ぴょんっ!と、釈放された高氏が侍所の廊下で、よっしゃー!!と、同時にジャンプして喜びを表現するのがかわいい(笑)。


第6話「楠木登場」

 いよいよ南北朝物のキーマン、楠木正成が登場。これが戦前教育で一般的な「青葉繁れる桜井の…」のイメージではなく、武田鉄矢が演じてしまったので、当時世間を騒がせたのは、なんとなく覚えています。
 ことしの王家問題とかもそうだけど、天皇家が濃く絡むドラマだと、多少は物議をかもしたりするんだよね。でも、武田鉄矢のおなじみのトボケたイメージでかなり世間を巻き込んだところがあって、最終的にはなかなか好評であった、ように記憶してます。
 それはあとにして、高氏のお見合いから。前回、赤橋守時の助力で無罪を勝ち取ったので、足利親子は赤橋邸に挨拶にいくのですが、お母さんの清子さんは、もう完全にお見合い気分で、「この直垂は似合いませぬ、もっと素敵なのがあるのに…」とか、舞い上がっていろいろ言います。弟の直義(高嶋政伸)は、なんで北条一門にへーこらしなくてはならんのか、と気に入らず、このあたりに足利家の、北条一門に対する微妙に分裂した感情が垣間見えるわけです。
 貞氏父さんは、「謝りにいくのではない。そもそも今回のことは北条が謝るのが筋だ。向こうの出方をみて、筋が通らなかったら帰ってしまおう」とかいって、かなり強気…。
ですが、赤橋守時は、親子を迎えて開口一番、このたびは申し訳なかった、こっちが出向いて謝るのが筋なのにわざわざお越しいただいて恐縮の極み…といって深々と低頭します。
 この誠意あふれる態度に感動したお父さん。登子姫も登場し、若い人をふたりにして、お兄さんと語り合います。守時さんは、登子と高氏の縁談に本気で入れ込んでいて、ぜひ足利家と縁を結び、高氏殿とそれがしとで鎌倉の政治を正していきたい。いまならまだ間に合う。ぜひぜひお考えいただけないか…と、乗り気を通り越して、ほとんど切羽詰まっています。

 高氏と登子がイイ感じでいるころ、花夜叉(樋口可南子)一座は、佐々木道誉の鎌倉屋敷にいます。藤夜叉(宮沢りえ)は、あの京都の一夜で、高氏の子を妊娠していたんですね。それを聞いた道誉の目が怪しく光ります。
 正中の変の一件は、北条高時が病的な戦嫌いなため、捕縛された日野俊基か、日野資朝のどちらかを斬首して沙汰やみになりそうだと。「だがそう丸く収められてはわしの出番が無い」と怪しく笑いながら、突然、はっしと刀を抜いた道誉は、床にガシッと突き立てます!曲者!!…っと、うーん時代劇でおなじみのこの呼吸(笑)。
 ですが、床下の曲者は…暗くて画面がよく見えなくて(「太平記」全般に言えることだけどとにかく画面が暗い)、二度見してしまいましたが、どうも一色右馬之介(大地康雄)だったようなのです。右馬之介って…。

 その曲者騒ぎのどさくさまぎれに、花夜叉は、ましらの石(柳葉敏郎)に、日野様の一件を楠木正成さまに…と、使いを託します。
 花夜叉の伝言と、その前に日野俊基から託されている形見の短剣を胸に、河内に旅立った石でしたが、道にまよってしまい、空腹のあまり、そこらの畑の大根を盗み、がつがつ食ってしまいます。そこに、畑の持ち主らしきオッサンが現れますが、石を咎めるでもなく、「今年は雨が降らなくていかん、河内の大根はもそっとうまいのじゃがのう」とかのんきなことを言い始めます。
 これが楠木正成(武田鉄矢)だったんですね。村人といっしょに雨乞いをするような、農村の区長さん風情の田舎っぽいオッチャンなのですが。話の流れでこれが噂の楠木正成と知った石は、驚愕…。
 館では、弟の楠木正季(赤井秀和)が、どうも六波羅の強権で港の使用権が奪われた、こうなったら一戦交えるとかなんとか言って(赤井さんの滑舌の問題で、このあたりイマイチ何言ってるかわかんない)、戦装束で大騒ぎしてるのですが、正成はそんな気ないらしい。雨乞いのほうが重要らしいのですね。
「刀を抜けば相手も抜く。斬り合えば双方傷がつく。それでコメの一石も余分にとれるか?ウリが山ほどとれるか?田畑が荒れて百姓が泣くだけだ」
…っと、なんだかいまどきのヘーワ主義大河ドラマのようなことを言います。そして、俊基への伝言として、
「とにかく死んではならぬ。世の中は自然に変わるでのう。悪い種が自然にほろび、良い種が良いコメをつくる。良い世の中が見たければ、長う生きねば駄目じゃ。そう伝えてくださらんのう」
…といっても、俊基は明日にも処刑されてしまうのですが…。なんだかそのことを言い出せない石に、正季が囁きます。「日野殿を助けたいと思わんか。手立てはあるのじゃ。お前も乗らんか」と。
 そして思わずうなずいてしまった石の運命は…。

 鎌倉では、華やかに流鏑馬が行われています。的をすべて当てて喝采をあびた高氏(真田さんかっこいい!!)を、高時が特に呼び出して称賛するのですが、褒めるというより、
「儂はのう、良い犬と良い一座を抱えた大名を良い大名と呼ぶことにしておる。何故かおわかりか?犬と踊りが好きな者は戦など好まぬ。儂に歯向こうたりはせぬ。この佐々木判官のようにな」
 と、暗に高氏を牽制します。で、同席した道誉が、「戦を厭われる平らかなお心がしのばれまするな」とかムカつくくらいヨイショして、高時も、「オホホホ…この口の巧さよ」とか言って、ほんと爛れた空気が漂ってるんですけど、道誉は曲者で、そのあと高氏を捕まえ、登子と結婚が決まったことを白々しく祝福するんですね。そして、「藤夜叉と申す女、御辺の子をみごもり鎌倉に来ておりますぞ…」、という爆弾を落とすのです。
 明日うちにお越しくだされ、藤夜叉に会わせましょう。「この判官は、足利殿の味方ぞかし」と言って、例の、扇でペチッと、高氏の胸を叩いて、ハッハッハッ…と笑いながら去っていく道誉。あやしさ満々です。
 とても道誉を信じる気になれないのですが、でも、藤夜叉のことを聞いてめちゃめちゃ動揺する高氏。それも、可憐な登子と結婚まぎわというこのときに…。で、登子と結婚して北条と親戚になって、行政改革に参加するのも、それもいいと思ったけど、果たしてオレはそれでいいのか?というところに思考が広がってしまい、激しく自分を責めて、立っていられないくらいグラグラ。
 そんな高氏を、「とにかく判官様の誘いに乗ってはダメです。私めにおまかせください」と申し出る右馬之介。お任せをって、どうやって? この回、思わぬ忍者(!)の顏も見せた右馬之介、どのよーに佐々木道誉に立ち向かうのでしょうか~~。


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