como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

花燃ゆ 第10回

2015-03-09 22:55:11 | 過去作倉庫15~
 はい、今週はダウントン・アビーの第3シーズン初回ですけど、15分押しの11時15分始まりで75分拡大版という、日曜の夜にはあまりにもキツいタイムスケジュールでした。しがない勤め人は月曜のことを考えて録画で我慢するしかありません。それに1方向も帰っちゃったし…(涙涙)
 ということで、なんか先週と打って変わって、脳内に攘夷の嵐が吹き荒れたような殺伐たる日曜日でございました。皆様いかがお過ごしでございましたでしょう。

 さて、この「花燃ゆ」の脚本家は二人いるんですけど、役割分担ははっきりしてきたような気がします。つまり「どうしようもない脚本家」と、「そうでもない方の脚本家」です。
 今週はそうでもない方の担当でしたけど、うーーーーーーーん……、なんといったものか。

万有の真相は唯一言にして盡す、曰く『退屈』
 
…という感じですかね。

 今週は吉田稔麿がクローズアップされた回でした。身分も低く地味な存在の吉田稔麿は、じつはあれで大河ドラマにクレジットされる率がわりに高い役でもあります。その際、かならずセットででてくるチョイ役に宮部鼎蔵がいます。って、まあこんなブログをわざわざ読んでくださってるような方で知らない方はいないと思いますが。幕末ものに欠かせないあるイベントに(いちおうネタバレ自粛…)絡むので、必ずといっていいほど出てくるんですね。ただ、セリフと、ちゃんとした人となりをもって出てくるとなるとこれがまず皆無という、実に恵まれない役でもあります。
 長い間、わたしは吉田稔麿のそんな不遇に同情していました。ずいぶん前ですけど、あなたは幕末人物だと誰タイプ?的な占いで吉田稔麿が出たので、親近感もあります。ちなみに花燃ゆ公式サイトの推しメン占いでは伊藤利助でした(やったのか…)。あまり身分の高い役じゃないほうがタイプなんですかね。
 そして大河と吉田稔麿というと、ちょっといまだに忘れられないのが、2004年の「新選組!」での、吉田稔麿にあやまれ!的な、ひどい扱いのことです。吉田稔麿は本気で怒るべきだと思いました。吉田稔麿という役をもっと大事にしてあげてほしいとけっこう真面目に考えるようになったのも、あの件がきっかけだったと思います。
 とはいえその後の吉田稔麿にリベンジの機会が訪れるでもなく、あいかわらず、戦隊ものでなんとかブルーとかグリーン役で出ててました的な兄ちゃん向きのチョイ役として、幕末ドラマの「その場面」に単発で出続け十有余年。そしていよいよ今年、たぶん史上初めて、彼にセリフと人格を与えたドラマが登場した。これは、ちゃんと扱ってあげなければ罰が当たります。
 ということでいよいよ吉田稔麿がピンクレジットで登場します第10回、「躍動!松下村塾」(ってなんだこのダサいサブタイは…)を見ます。


今週のおもなイベントをざっくり振り返ると…

○吉田稔麿が、自分の様な身分の低い者でも江戸へ行って見聞を広めたいなあと思う。

○その夢を知った文ちゃんが、稔麿の夢をかなえるために奔走。叔父の玉木文之進も巻き込んで、「松下村塾から江戸留学生を出そう運動」が一瞬盛り上がるものの、椋梨藤太さまに潰される。「吉田松陰の門下などから首都外交の顏たる江戸藩邸詰めを出すなど許されん!」みたいなこと言って。
 そんで、その運動を潰そうと小田村伊之助に工作を命じるんだけど。

○で、留学願いが取り下げになって落ち込む稔麿に、松陰先生は、君は江戸にいって何を学びますか、何のために、学んでどうしますか、君の志はなんですか、と畳み掛ける。んなこといわれたって実際萩から出たこと無くて江戸がどういうとこだかしらないわけだし(というのは史実と違いますが)、とりあえず行ってみたい!なんでもやってみたい!でイイじゃないですか。でも松陰先生的にはそれはNGで、長期計画と達成目標をレジュメにしてプレゼンできないような者が江戸へ行っても無駄です!!とか言うわけです。じぶんが後先考えず脱藩したり密航未遂したことは棚に上げて。

○そんなことで夢をくじかれた稔麿は、塾にもいかなくなります。文ちゃんが心配して船着き場などにいってみると、稔麿は雑用係や荷物持ちで江戸に行ったことある庶民を訪ねて、話を聞いてたんですね。又聞きした江戸の市井の火消の話などを文ちゃんに夢中で話す稔麿。その話が面白かったのですね、
 ちょっと、それってあなた才能よ!みんな攘夷だ尊王だなんだかんだいって、史実の説明が足りない、朝ドラは朝やれとかいって何もわかってないのよ!こんなに話を面白くする才能はもったいないわ!!とか言う。さりげなく自己弁護する匂いがしたのは考えすぎでしょうか。

○そんで文ちゃんと稔麿君がいっしょにいたら、明倫館の生徒にからまれて、そこに久坂君と高杉君も現れて、双方大喧嘩になりかけます。文ちゃん「やめてーやめてー」って…なんだこの70年代の青春ドラマ…。そして明倫館VS松下村塾の投石試合になって、文ちゃんはその投石の真ん中に飛び出しボコボコになりながらも体を張って争いを止める。あ、いやそれじゃ「愛と誠」だ。
 残念ながら「愛と誠」ほどのカオスにはなりません。ヒロインはひたすらケンカの間にはまって「やめてーやめてー」言ってるだけで、なんか役に立たない上にテイストが古臭いですね。

○で、稔麿の留学が却下されたのは明倫館の差し金だと思った高杉君と久坂君は、一緒に小田村の兄さんのところに直談判にいくのです。そのふたりに向かって、小田村の兄さんは「君たちは口ばっかりでなんか実行したとか聞いたことないんだけど」などといって挑発します。
 さらに、師匠の松陰先生が、常識なんかクソだ!大人はキタネエっ!!
 諸君、狂いたまえ!!
…とかいって塾生を煽る。連中、なんか違法ドラッグでハイになった人みたいに雄たけびを上げて飛び出して、殴りこんだ先は明倫館。折も折とて、たまたまその日はお殿様の学校視察の日で、ハイになった塾生連中は礼儀もなにもなくお殿様ともろに鉢合わせします。お殿様のアテンド役をやってる椋梨様は大パニックです。
 そしてどさくさまぎれに稔麿の江戸留学をお殿様に直訴する塾生たち。なにげに殿様に塾生たちのヤンキー語を標準語に翻訳して通訳する小田村先生。「殿も吉田松陰に学ばれたことがあり、この者たちはいわば同門の弟弟子で」などと首が飛びそうな不敬なことを耳元でささやいたりして。でも、ヤンキーとかいう人種を知らないお殿さまは、某黒服ダンスパフォーマンス集団の団体競技をご覧になった今上陛下のような慈顏で(こういうのができる欣也さんてすばらしいわ)、究極の名台詞を吐きます。「ん、そうせい」

○と、この鶴の一声で稔麿君の江戸留学が実現するのですね。これもあれも文さんのおかげ、とかいってさりげなくヒロイン手柄。さいごは文ちゃんの髪についた枯葉をさり気なくとってあげたりなんかして。
…いや、このさい吉田稔麿が岩清水君みたいになったっていいです(というと誠さんは高杉晋作か)、この十何年かの稔麿の不遇を思えば。せりふと人格をあたえられ、しかも瀬戸康史君という、アップに堪える、むきゆで卵みたいな清潔なイケメンが演じるんだから。本人も草葉の陰で喜んでいるはず……たぶん。

○そして今週のさいごは新キャラ・前原一誠の投入で次週につづくとなりますが、この人この時代には佐世八十郎って名前のはずですし…
 幕末人物、とくに長州人の改名、それもそれまでの名前と一字もかぶらない別人みたいな改名を、いちいち視聴者の理解を気にして最終進化態の名前に統一してたら、ものすごく一貫性を欠いたへんなドラマになりそうな気がするんですけど。ちなみに久坂玄瑞も変だと思います。たしか第一回のアバン学芸会では「義助は…」とか呼ばれてたはずですが。そっちのほうが正解なのにな。


そのほか2、3気になったことなどを。

 椋梨藤太さまが、学園ドラマのなさけない教頭先生みたいな役柄になってる件。
 まあ幕末の長州藩を学園ドラマフォーマットでやろうとすると、どうしてもそこの役回りになるんでしょうけど、それでも、「内藤剛志さんになにをやらす…」と思っちゃいますわ。もうこの憤りも何度目かになりますけど。

 あと、玉木文之進はこういうキャラでいいんだろうか、と根本的に疑問に思います。怒りっぽいけどほんとはイイ人な、気難しい親戚の叔父さん。いや、ホームドラマや朝ドラだとそれは定番のキャラクターでしょうけど、朝ドラに出てる風間杜夫とは背負ってるものがちがうからね、この役は。このあと乃木稀典の教育にもかかわり、萩の乱で自死、精神的に多大な影響を与え、その乃木が昭和天皇の教育係になるので、戦前日本の精神史にもかなりディープにかかわってる人なんですぜ。
 そういうひとを徹底的に毒抜きして人畜無害な隣のオジサンに解体しちゃうのは、ある意味大河ドラマの解体に通じるような気がする。「坂の上の雲」でこの上なく本気で描いた「二百三高地」の世界を、無造作にぶち壊すような悪意を感じるんで。これは、なにかちょっと只事ではない…ような、悪寒を覚えつつ見てます、わたし。

 これもしつこいようですが、「攘夷」とか「尊王」とか単語だけ提示して、それがどういうものなのか、いままで一切説明してません。そのせいで、松下村塾で河豚を食う食わないみたいな話を「そんなこと真剣に議論しているおかしな塾」とかいっても、まともな時勢論もそれはそれでやっている、という想像をさせる余地がないので、ほんとに昼食おやつ付でバカ話をしてるだけの場所みたいにみえてしまいます。
 そんで多少偏差値高そうな描写というと、とつぜん四書五経の引用をベラベラとお経みたいに喋り出し、それで知性を表現してるらしいので、見てる方は感心というよりびっくりしちゃいます。ほら、お坊さんが膨大な経典を上から下にバラバラっと流してそれで読んだことにする儀式ってあるじゃない、ああいう感じ。
 これもひとつの様式美ではありましょうが…。あまり歴史に興味が無い人が、これで松下村塾が知的な場所だと認識することができるのか、よそ事ながら心配になりますね。
 というか、尊王攘夷の説明を完全にスルーしたままの状態で、この後の安政の大獄と桜田門外の変、8.18政変、禁門の変などをどう説明する気なのかと思います。

 いや、どんなトンデモなものができるか、別の意味で楽しみだったりなんかして。

 今週はこのくらいで。また来週お目にかかります。ではっ!


11 コメント

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花もユル (芥川大輔)
2015-03-10 00:13:58
今年の大河ドラマ昨日初めて見ました。
私の個人的な思いでは、幕末ってある意味みんなちょっと頭に血が上って、血潮がほんとに流れて、危険な香りと、革新と、新旧のぶつかる軋むような音がする時代と思っているんですが・・・・私の思い違いだったんでしょうか?
なんなんでしょうか、このユル~い、全員でぬるま湯の風呂につかって、ちくわでも食っているような雰囲気は?
ふぐを食うだの食わないだののエピソードしかり、・・次は宇部かまぼこでも出てくるんでしょうか?
とにかく私はもう二度とこのユルユルの「花もユル」を見ることはないでしょうが、聞くところではNHKは大河ドラマの制作に年間30億とか50億、一回の放送に5~6000万円かけているという話を聞くと、正直「もうやめてもいいんじゃないの?」と思います。どーしてもやるんだったら予算5分の1でいいよ!
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伊勢谷GJ (ようこ)
2015-03-10 20:00:02
庵主様こんばんは。
モニュッが何処まで堕ちるかすら見る気が失せたので、あとはこちらの記事を拝読するにとどめます・・。

松陰先生の「伊藤くん、エロ(偉)うなりなさい」にお茶噴きました。
そうかー、伊藤くんは、その言いつけを忠実に守ったんだね!
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Unknown (じゅでぃすみす)
2015-03-10 21:57:45
Twitterの質問ですが・・・

おそらく、「ふく」でしょう。ちなみに、大阪などの関西地域ではご存知の通り「てつ」で、これは上方落語では時々出てきます(ただ、それぞれの落語の成立年齢がいつかはわかりませんが)

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『街道をゆく』の長州路編で (小紫)
2015-03-11 20:33:37
庵主様、こんにちは。

吉田稔麿について、司馬遼太郎氏が「幕末の長州の若者のなかでも好きな人物」と言っておられますね。
庵主さまの仰る「幕末ものに欠かせないあるイベント」の際、藩邸に急を知らせた後そのまま留まっていればいいのに現場に戻って…(ネタバレだったらお許しを)に共感し、「走れメロス」に通じるものがあるとも言っています。
私もこの人は気に掛かっていて、今回のドラマで取り上げられるのは嬉しいのですが、あの演者さんはどう見ても髷には無理のある現代人顔で、見ていて落ち着かないのですけど…。(ファンの方ゴメンナサイ。)
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シャーリー・マクレーン! (SFurrow)
2015-03-13 23:27:44
「ダウントンアビー」拡大版、アメリカからやってきたコーラのお母さんが、まさかのシャーリー・マクレーンじゃありませんか!!「よく似てる人だなぁ」と思ってたら、最後のクレジットで本人だったとわかりました。まさにマギースミスと英米大女優対決!「噂の二人」「あなただけ今晩は」・・・(年がわかる(^^;、)いや~PartIIIも楽しみですね!
というわけで、大河ドラマはすっかり吹っ飛んでしまいました。

吉田稔麿の瀬戸康史くんは「江」の森蘭丸だったのが災いしていますよね~彼の責任ではないのですが。

>これで松下村塾が知的な場所だと認識することができるのか
同感です。でも「竜馬伝」の、半平太の塾も大概だったよな~
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思い込みじゃないです。 (庵主)
2015-03-15 17:37:01
>芥川大輔さん、コメントありがとうございます。

いいえ、思い違いじゃない…です多分。
八重の桜・1/3をみて、やっと幕末ものドラマの基本的前提を思い出し、安心してたのですが、幕末の火薬庫・長州を舞台にしてこれでは…。
個人的には、こういうドラマは1年続けず、基本12話くらいを1クールにして、評判が良ければパート2、3と続けていくような、英米のドラマのようなスタンスがよいと思っているのですが。そのほうが、失敗作を垂れ流す予算は節約できますし。
失敗とわかってて1年続くのをみるほうもつらいですしね。
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伊藤君! (庵主)
2015-03-15 17:39:51
>ようこさん

>伊藤くん、エロ(偉)うなりなさい

あ、わたしもそこお茶吹きそうになりました(笑)
個人的には今年の伊藤君はなかなか良いと思ってます。今回も、どーしようもないユルい空気の中でけっこう光ってました。
あとは、出てくるたびにナレーションで内閣総理大臣推しをやらなければ、普通にみられるのですがね…。
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ふぐ・ふく (庵主)
2015-03-15 17:44:00
じゅでぃ・すみすさん

やっぱり「ふく」で正解ですね。毒があり、食べて命を落とす人もいるから縁起を担いでそう呼んだのかな?
ただ、「てつ」って実は知りませんでした…。内陸県にいるので、ほんとに海のものの名前に疎いです。正直言って、河豚をたべるのはもちろん、売っているところも日頃見ることはありません。ふぐは県外で旅行の時などに食べるもの、という認識です(涙)
ほかにもそういう魚は多いんですよね。蝦蛄とか…。
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吉田稔麿に同情 (庵主)
2015-03-15 17:50:40
小紫さん

そうそう、吉田稔麿と藩邸の門のエピソードは、司馬さんが紹介したんですよね。
じつは「新選組!」でのひどい扱い、といったのは、このエピソードを土佐の望月亀弥太のエピソードとしてそっくり転用したことで、まあドラマ上のことといっても、吉田稔麿が可哀想だな…と思ったのをいまでも忘れられないのです。

「江」の森蘭丸は、単体では結構良かったと思うんですけど、ああいうひどいドラマは出番が少ない方が儲け役といいますか(笑) 悪い印象じゃないんですよね。
顏きれいですけどねー。蘭丸のヅラは悪くなかったんですが、ちょっと月代ヅラはいまいちかなと。すごい童顔にみえちゃうので。
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英米大女優の漫才は (庵主)
2015-03-15 17:58:43
>SFurrowさん

いやーすごかったですね、英米二大女優の漫才!!豪華すぎてクラクラしました。なんか、ものすごいもの見た感があってお腹いっぱいです。
あいかわらず群像劇のポテンシャル高いですよね。どのエピソードも置き去りになってなくて、忘れたころに再燃するので目が離せません。大河ドラマもこうなら……あ、いやそれは言っても……。

>「竜馬伝」の、半平太の塾も大概だったよな~

大概でした(笑)
共通するのは、幕末の政治運動の前提になる尊王攘夷という概念を頑なに説明しようとしないことだったり。
かわりに、個人のぐちゃぐちゃしたコンプレックスだのなんだのが前面にでてくるので、ほんとに知性に欠ける残念な空気になるんですよね…。
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