como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

「独眼竜政宗」を見る!(18)

2009-05-28 22:40:08 | 往年の名作を見る夕べ
 いよいよ終わり3分の1に掛かりました。このへんから存在感を増してくるのは、津川雅彦さんです。このドラマでは、40代くらいからの家康を演じていますが、ちょっと前までの家康は、頭がよく、有能で、考え深い人という感じ。でも全体的には地味でした。カツシン秀吉の極端なエキセントリックさに隠れていたこともあるのですが。
 秀吉の死から急に、なにかの封印を説いたようにしたたかな地を出す家康、それに振り回され、いいように利用されて関ヶ原の戦いにもつれ込んでしまう三成ら西軍の大名達。ほんものの家康の迫力ももこんなだったかと思わせるのは、大河ドラマの役者としては最高レベルでしょうね。
この「政宗」をみていて、これぞ大河ドラマだなあ…と思うのは、迫力満点の合戦や騎馬シーンとかより、1年の尺を存分につかって、すべての登場人物の成長や変化、隆盛や凋落などを、すごく長いスパンでじっくり描いている ことなんですよね。
 そんなわけで、この巻は、政宗がうまいこと利用される関が原の戦い、その序盤が描かれます。しばらく引きずった成実の離反の結末も描かれますが、これがまたいい!

第35話「成実失踪」
 
 関白秀吉死後の世の中は、短期間でめまぐるしく激動しています。政宗(渡辺謙)のところに、家康(津川雅彦)のネゴシエーターをしている茶人の今井宗薫(谷啓)がやってきて、長女・五郎八姫と徳川家康の六男・松平忠輝との縁談を打診してきました。徳川家からの縁組に、「これからの世の中は面白くなる!」と昂揚した政宗は、縁談を快諾。
 同時に、淀の方(樋口可南子)と石田三成(奥田瑛二)から申し入れられた、嫡男・秀宗を秀頼の小姓に差し出す話は、「まだ幼いから」といって断ります。我ら一派にお味方しておかないとなにかと不都合…と淀の方にエロく迫られた政宗は、「その義は秀頼さまの母君・北の政所様に相談の上」と、ふたりをあからさまに無視した物言いをわざとし、淀の方から往復半のビンタ(!)をくらいます。
 家康が政宗はじめ有力大名と縁組をつぎつぎ結んだことで、三成ら奉行は、「関白殿下のご遺言に逆らっている」といってつるし上げにきますが、家康は動じません。そんなことより関白殿下のご遺言を盾にご政道を歪めるやからのほうが問題ではないか、と、あからさまに三成を挑発。
 そんなころ、出奔して2年になる成実(三浦友和)の行方がわかります。相州で百姓になり、武士を捨ててエコロジー生活を送っていた成実のところに、政宗は再々帰参を促す使者を送りますが、成実は応じません。
 ついに盟友の小十郎(西郷輝彦)が送り込まれます。が、質素ながら自給自足の生活に安定を見出している成実は、「もうおれは武士が嫌になった、戻る気はない」と言い切ります。小十郎が送り込まれる最後の使者であり、これで帰参をしないなら、居城の角田城は召し上げとなる…という小十郎の言葉にも、「存分にいたせ、おれは政宗殿を見限ったのだ」と…。言葉を失った小十郎は、ガックリ肩を落とし、「無念至極でござります…」と男泣きに泣きます(こういうところがたまらくなイイ!!)。
 こうなるともう、成実の処分を保留にしておくと家臣に示しがつきません。が、成実を捕らえて処刑するなんてつもりはなく、ここは言ったどおり、居城と所領を召し上げるだけです。ところがそれが思いがけない事態をひきおこします。角田城を守る成実の妻・登勢(五代路子)と、城代の羽田右馬之助(河西健司)の決意が固くて、殿のご帰参がかなうまでは断固城を守り抜く!といって伊達家本軍の城明け渡し要求を拒否。攻め込まれた本軍によって城代は討ち死にし、登勢もおいつめられて、幼い子供たちともども自害してしまうんですね。
 なんかもう…胸にググッとくるくらい非情なんですよね。こういう、戦国時代の原理ってものの描き方が!「しまった! 成実になんと詫びたらよい」と我がことのように慟哭する政宗もたまらないですし、何より、妻子の悲劇を知った成実のショックというものは!!ベーベー泣くとかなんとか、しらじらしい表出をしないぶん、ちょっとした過ちが引き起こした悲劇の重さが伝わります。そして成実はそのまま姿を消し、こんどは本格的に失踪してしまいます。
 大坂では、三成の立場はどんどん悪くなっています。大納言前田利家が亡くなると、暴走した反三成派の加藤清正・福島正則たちにクーデターを起こされて、脱出したもののいくところがなく、家康の邸に庇護を求めるという捨て身の作戦にでます。
 豊臣家の安泰を世間にアピールするため、仲良く轡をならべて大坂入りしてくれませんかという三成の申し入れを、家康は「ことわる。猿芝居の片棒は御免こうむる」とキツく退けます。「そこもとは在所にひきのかれよ、もはや生き延びる道はない」と、同席した柳生宗矩(石橋蓮司)とともに迫力たっぷりに脅し、三成をコテンパンにビビらせます。いやーっ、見ているほうも快感だなあ!!(笑)
 たまたま家康邸をたずねた政宗は、憔悴しきった三成が帰るところと鉢合わせし、「これはこれは、まだ息をしてござったか三成殿」と、ここぞとばかりに嘲笑します。三成は、「伊達殿…何時の日かそれがしの志をおわかりいただく日もござろう」…と、ここで、ホントに相手を殺したそうな目で見詰め合う政宗と三成の視線の応酬にゾクゾク!!
 こんな動乱の間に、政宗が秀吉に下げ渡されて預かっていた侍女が妊娠してしまい、認知できずに困ったり、長く不妊に悩んだのに急に生まれ変わったような絶倫ぶりなんですが(笑)、正室の愛姫も懐妊します。「めご…!!」と長女のときのようにお姫様だっことかはしませんが、喜びを噛み締める政宗なのでした。

第36話「天下分け目」

 政宗(渡辺謙)の長女、五郎八姫6歳が、家康(津川雅彦)の六男・松平忠輝と婚約しました。が、このボクちゃん、ちょっと頭悪そう…。大丈夫でしょうか。
 アンチ三成で結託した政宗と家康は親密の度を深めますが、佐和山に隠棲した三成(奥田瑛二)が挙兵の兆しをみせて、天下はきな臭くなっています。そんななか、上杉景勝と家老の直江兼続(登場しません。名前だけ)が、頑固に家康をシカトし続け、東北地方に割拠の態度をみせたため、家康は上杉討伐の挙兵を覚悟することになります。
 そんなおり、愛姫(桜田淳子)が出産。待ちに待った嫡男です。喜びで一杯の政宗は、虎菊丸と命名。が、先にうまれた秀宗を、露骨に廃嫡とかは、自分の辛い過去にかんがみて出来ないわけです。そこはようすを見て決める、とにかく兄弟仲よく…と子供たちに言い聞かせる政宗が、若いお父さんの顔です。
 いよいよ家康は上杉討伐に討って出るため、自らも江戸に出陣、東北の最前線には政宗と最上義光(原田芳雄)を配します。家康までが東に異動しては大坂が手薄になり、三成が西国の大名を糾合して挙兵したら危険なのでは…と政宗はあやぶみますが、それが、いわゆる空城の計であり、三成に挙兵をさせて討伐の名目をつくる。そのために自分は囮に利用される…ということまでは、政宗は思い至りません。さらに、愛娘・駒姫の非業の死のショックからまだ立ち直っていない義光は、どうも目が暗く、戦といっても信じて同盟できるかわからないわけです。
 政宗は家族を京都邸に残して出陣し、地元の岩出山に戻ります。が、岩出山は地の利がよくないので、北ノ目城というところを本陣に上杉と対峙、久しぶりに戦国大河ドラマらしい、甲冑姿の男たちがうごめく合戦シーンが展開。上杉は手ごわく、北ノ目城に陣取った伊達軍は苦戦を強いられます。
 そこへ、とつぜん踊りこんできた一騎の騎馬武者が、目も覚めるような働きぶりで、伊達軍をバッタバッタとなぎ倒していくんですね。その戦いぶりに活気づいた伊達軍は、上杉軍を退けて大勝利しますが、そう、この騎馬武者こそ、伊達成実(三浦友和)だったんですね。
 いやー、これって非常にベタな展開なんですけど、恥ずかしながらジーンときちゃった。政宗の陣に帰参した成実は、「また乱世が戻ってきて、俺の時代が来るとおもった」とか冗談ぽく言いながら、目は少年のように潤んでいるんですもん。政宗の前に手をついて真摯に詫びる成実に、政宗も、「そなたの妻と子供を殺めたことに許しを請わねばならない」と率直に頭をさげます。その義は忘れ申した、なんとなれば成実には妻も子も初めからおり申さぬ、と磊落に笑う成実と、目に涙をためてウンウンと頷く小十郎……いいなあっ!こういうシーンがベタベタにならないのは、これまで35話で積み上げた友情の年輪が視聴者にも刻まれているからなんですよね。
 さて、京都では、石田三成が挙兵し、いよいよ天下分け目の関が原へのカウントダウンが始まります。三成は淀殿(樋口可南子)をたずね、家康討伐のお墨付きをいただきたいというのですが、淀殿は、挙兵の志は有難いが勝敗は時の運じゃ…とかいって煮え切らないわけです。このとき三成、ほとんど目がイッちゃってるというか、なんともいえない病的な、挙動不審な、ぶっ壊れた感じになってるんですよね。ムカつくほど横柄な秀才ヅラできた三成のこの変貌振、奥田さんやっぱスゴイ!と思っちゃう。
「家康の首をとってくれば、お墨付きでもなんでも…」と妖しく笑いながら、三成の手を自分のオッパイにあてがう淀殿、劣情に耐えかねた三成は、淀殿の手から肘までがぶがぶと噛み、ベロベロ舐める……って、ひええー! なんつーキモいシーンだよ。強烈にキモくてぶっ壊れてて、ちょっと息を飲む迫力!
 上杉抑えの囮に使われていることは、三成の挙兵にいたって政宗にもわかります。政宗は、いったん上杉と手打ちにして家康の出方を見ますが、家康は、政宗のいちばんのツボを利用して懐柔に出てます。つまり、上杉を倒したあかつきには秀吉に没収されていた伊達家の本領、伊達郡、米沢、田村などを返還してくれるというんですね。
南無八幡大菩薩!!」と俄然やる気になった政宗。が、上杉とはすでに停戦協定を結んでいます。どうするか…と迷ったところへ、山形の最上家から、上杉勢に攻められて陥落寸前の山形へ救援の要請がきました。
 しかも、懐かしい母・保春院じきじきの懇願。腹をくくった政宗は、最上に援軍を出して上杉と再び対峙することに決めます。


(つづきます)


6 コメント

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はじめまして (じゅん)
2009-05-30 17:17:51
じゅんと申します。
ときどきお邪魔させていただいてたのですが、はじめてコメントさせていただきます。

「独眼竜政宗」はリアルタイムで見ていました。最近また見ているので、庵主様のブログでさらに楽しませていただいています。

>すべての登場人物の成長や変化、隆盛や凋落などを、すごく長いスパンでじっくり描いている

本当にそうですね。
丁寧に描いてくれているし、役者の器量もあり、堂々たる戦国ドラマで毎回ほんとに内容が濃いです。
歴代の大河において私の中では一番なんです。

さて、関ヶ原あたりになると、たびたび直江兼続の名前が出てきて、伊達の家臣たちがやたらとほめるんですよね。
いまの大河と並行して見ると、なんだか笑えるような気の毒なような…
「天地人」のコーナーも楽しく拝見しております。
庵主様のブログで溜飲が下がる思いです(笑)

またおじゃましますので、よろしくお願いします。


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第35話、第36話見ましたッ (レビュ丸)
2009-05-30 22:14:23
庵主様こんばんは。本日は時間があったため、続けて35話と36話を鑑賞することができました(笑)。この2話、関ヶ原へ向けて家康と三成の対立が決定的となった―――という話の大枠の中で、失踪した政宗の片腕・成実の去就を重ね合わせることで、改めて主人公・伊達政宗の視点によって眺められた物語であることを、再認識させられるものでした。成実が帰参したあの場面、庵主様が触れられているように「非常にベタな展開」ではあるのですが、それまでの伏線がしっかり張られていたこともあり、自然で、かつ感動的に映りました。成実の潔さ、政宗の心の広さ、小十郎の優しさ・・・。みんな「漢(おとこ)」だなァ・・・、うんうん。女性が不自然に割り込まない(割り込むスキも無い)演出も、重厚感を増しているようで、好感が持てました。

石田三成と淀君との、あの頽廃的なエロさの場面、レビュ丸は初見でしたが、あれが却って「斜陽の豊臣家」を表現しているかのようで、キモかったけれど印象的でした。樋口可南子さんは現在でも非常に美しい女優さんですが、当時はこういう「エロス」を前面に出した演技をしていたんだなァ・・・ということも、今回『独眼竜』を見て気づいたコトのひとつです。

そして36話ラスト、従兄弟の義康自らが請うても「山形へは援軍を送らぬ!!」と決めていた政宗が、母からの手紙を読み、瞬時に援軍を出すことに決した―――という場面、これがこの2話の中で最も印象的でした。いかに世は移ろうとも、母子の情愛は何物にも代え難いということの表れであり、大人になった政宗の「優しさ」が垣間見えた場面でもありました。

いよいよ終盤に差し掛かりました。庵主様、毎回レビューを楽しみにしております。これからも頑張って下さい!!
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不在の兼続の存在感。 (庵主)
2009-05-31 23:26:27
じゅんさん

ようこそいらっしゃいました。コメントありがとうございます!

やっぱり「政宗」が一番!とおっしゃる方は多いですよね。わたしも、あらためて見直してみて、ほんとに奇跡のように全てがハマッているというか…役者の人選も、脚本も、タイトル前の趣向やナレーションなどの斬新さも(笑)、すべてが噛み合って相乗効果を生んだドラマだったと思います。

上杉景勝と直江兼続主従は、登場しませんが、けっこう存在感あるんですよね。
「直江兼続は名うての戦上手…」とか言って。そのたびに軽く吹いてしまったりして(笑)。20年以上後にまさかこんな直江兼続が登場するとは思わなかったでしょうが……。

またいつでも遊びにお寄り下さいね。お待ちしてます!
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漢です! (庵主)
2009-05-31 23:31:02
>みんな「漢(おとこ)」だなァ・・・

ですよねですよね! あの、手を重ねるところとか、かなりベタなんですけど(笑)、ジーンときてしまった。
男なのはあたりまえですが、漢だ!と思わせるというのは、実はすごいことなんじゃないかと思います。

樋口可南子さんは、お若い頃は、やっぱりちょっとエロい感じの女優という印象でしたね。いまのほうが透明感が増してお美しいとおもうんですけど、でも、このエロくて邪悪な淀殿はかなりの好演ではないでしょうか。こんなに女の愚かさと邪悪さを、容赦なく描いた脚本も凄いと思いますけど。

お母さんとの確執は、もう梵天丸時代から引きずってますから、ホントに根気強い伏線ですよね。
それも穏やかに和解の方向に向かい、おかあさんが話に絡むときに政宗が見せる表情に、いちいちジーンときたりします。
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脚本力 (vico)
2009-06-02 01:36:37
こんにちは! いつも楽しくレビューを読ませてもらっています。
「独眼竜正宗」レンタル視聴してますが、
ようやく庵主さんにおいついてきました。

ここにきて、家康の存在感がぐーんとでてきましたね。
手の平の上で転がされてる正宗が気の毒だな・・・。
リアルな家康像がイメージできちゃうほど、描き方がうまい!

成実の登場は、私もジーンときちゃいました。
ベタですけど、そこらへんは、しっかり視聴者の心をとらえていて、
やっぱり、このドラマの脚本はすごいなーって思います。

そして、淀殿と三成のエロなシーン・・・。
子供も見てるであろう日曜夜8時にいいの!!って
おもわず、ドギマギしちゃいましたけど、
淀殿の悪女っぷりと妖艶な雰囲気がでていて、よかったですね。


まあ、とにかく主役から脇役までキャラが立ってて
戦国武将の生き様から、お涙ちょうだいシーン、夫婦や家族、
はてはエッチなシーンまで・・・繊細かつ大胆に描いてますよね。
どの役者さんもドンピシャだなって思ってましたけど
これって、脚本の力でしょう。
ジェームス三木ってただもんじゃないな。
(アラサーの私の年代からすると、スキャンダルのほうがイメージ強かったんですけど、見直しました)

小松女史に彼の爪の垢を煎じて、飲ましてあげたいです。
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日曜8時のエロ場面! (庵主)
2009-06-03 21:27:31
vicoさん

>リアルな家康像がイメージできちゃうほど、描き方がうまい!

津川さんの家康は、有能だけど花が無い感じの40代から登場し、だんだんに頭角を顕していって、食えない狸ぶりが全開になるまで、長いことかけてじっくりじっくり、家康のキャラを育ててきたところが、ホントの家康みたいに粘っこくてすごいです!

>子供も見てるであろう日曜夜8時にいいの!!っておもわず、ドギマギ

あそこは凄かったですよね~。個人的には、毒殺騒動のときの最上義光とお東の方の近親××??を思わせるシーンとならぶ、二大エロ・シーンだったと思うんですが(笑)、大人の大河ですよねえ。こういうところも今年の大河には勉強して欲しかったですが…それ以前の問題か??

>どの役者さんもドンピシャだなって思ってましたけどこれって、脚本の力でしょう

よい大河ドラマというのは、優れた脚本と、優れたキャストと、そのハマリっぷりまで、相乗効果を起こして、無限大に良い効果を波及させていくんだな…ということがこのドラマをみているとよくわかり、それだけで感動です。
いろんな意味で感激するんですが、もうNHKでこういうのは作れないのかなあ…というのが、「天地人」を見ていていちばん不安に感じるところだったりしますね。
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