como siempre 遊人庵的日常

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「独眼竜政宗」を見る!(14)

2009-05-01 22:03:55 | 往年の名作を見る夕べ
 この巻のみどころは、政宗が秀吉に反感をいだき、若い覇気のままに反抗をこころみる顛末です。政宗にとって秀吉は、目もくらむような天下人、いつかはオレも!という憧れであるのと同時に、どう戦っても歯が立たない、途方に暮れるほど巨大な壁でもあるのですね。
 カツシン秀吉の凄みは、前身が草履取りであったことなど夢にも想像させない絶対の貫禄です。同時にみている「真田太平記」の長門裕之さんが、微妙な小物感ただよう、俗物で情緒不安定な秀吉を演じていますが、カツシン秀吉の巌のような貫禄はそれと対照的です。が、共通するのは、秀吉本人の人格というよりも、周りの人の畏れや、追従などの感情が秀吉という異形の人を作り上げていることなんですね。勝さんも長門さんも、ぶっとんだキワモノ演技のようにみえますが、実は秀吉という虚像を「一人歩きさせる」という演技で、そのあたりの高度さは唸ってしまいます。
 やがて垣間見えてくる秀吉本人の実像は…それは、長門さんやカツシンさんの演技力の真骨頂とですが、とりあえず、物語をまわすのは若い主人公・政宗や信幸の秀吉への幻滅や、荒々しい反抗心です。
 そんな感じで、まだまだ秀吉が物語の中心に君臨する第27・28話を見ます。

第27話「黄金の十字架」

 秀吉(勝新太郎)に密書事件の申し開きをするため、京都に向かった政宗(渡辺謙)でしたが、秀吉は、家康(津川雅彦)らブレインたちを連れ、京都から尾張の清洲城に出張ってきて待ち構えてます。政宗のつるし上げというおもむきで、とくに石田三成(奥田瑛二)は政宗をよく思ってませんから、陥れてやろうと手ぐすね引いているわけですね。
 そこへ、秀吉がお成りとなります。奥羽の百姓一揆については、「加担して秀吉に謀叛を起こそうなどと、そんな気は毛頭ありません、何者がでっち上げたのでございましょう」…と、臆せず言い切る政宗に、三成は「だまらっしゃい!」とエラソウに上から目線。
 政宗の密書を蒲生氏郷(寺泉憲)にもちこんだ須田伯耆という家来は、政宗の父輝宗が亡くなったあと、殉死した者の子だったんですね。殉死厳禁の布令を政宗が出したあとだったので、その前に殉死した人たちみたいに遺族が手厚く加増されたり、優遇されることがなくて、それをずっとうらみに思っていたそうで、あの挿話がこんなところで伏線として利いてくるとは! 
 そのうち蒲生氏郷も出てきて、奥羽での政宗の動きはあやしかった、とか悪意の証言をするわけです。ケツの穴の小さい男です。政宗としては、あくまで何も知らない、密書は偽造だといって押し通すしかないわけですが、秀吉は、氏郷が提出した政宗の本物の書状の、特徴ある「鶺鴒(せきれい)の花押」と密書の花押をとくと見比べて、「同じ筆跡じゃ。政宗が密書を書いたのに相違ない」と。
 さあ絶体絶命の危機。政宗はどう切り抜けるでしょうか。「恐れながら!」と政宗は申し出ます。「それがし、このようなこともあろうかと、いつも花押の鶺鴒に針の穴で目を開けています。本来の書状の鶺鴒には目があり、偽の密書の鶺鴒には目がないはず! とくとご検分を!」。
 固唾を呑んで見守る一同。秀吉は、書状をじっくりと(老眼鏡をかけて!)見比べると、「おお、たしかに。真の書状の鶺鴒にはまごうかたなく目が開いているが密書にはそれが無い。密書は偽物じゃ、政宗の疑いは晴れた!」…と。そして、以後は詮議無用とアッサリと立ち去る間際、政宗に「都人は物見高い。入京のときは趣向をこらして参れ」と謎をかけます。
 退席した政宗は、小十郎(西郷輝彦)とふたりになると、どっと緊張が解けて力が抜けてしまいます。そう、本当は、政宗の花押の鶺鴒に針の目なんか無かったんですね。とっさのハッタリに秀吉が乗るか乗らぬか、自分の器量を買うか否かに政宗は賭けたのでした。政宗を殺して奥羽に騒乱を抱え込むのを秀吉は回避するだろう、という読みもありました。が、それにしてもギリギリの賭けだったんですね。
 急死に一生を得た政宗は、秀吉の期待に度肝を抜かせて応えようと、とんでもない趣向を考えます。なんと、死刑囚の格好をして、黄金を貼ったキンキラの磔柱を担いで、キリストよろしく三条大橋を闊歩して入京。このコスプレは京都人に大ウケで、政宗の名は都でにわかに知られるようになります。
 秀吉の覚えもさらに目出度く、政宗は、かねてから切望する千利休(池辺良)の知遇を得ることができました。利休の茶室を訪ねた政宗は、感激でいっぱい。利休も、「初対面でこんなに心のかよう点前が出来るのは稀です」といって、すぐに打ち解けます。が、政宗が、利休の所有する名器「橋立の壺」を拝見したいと所望すると、顔が曇り、あれは関白殿下が強引に所望されるので、やむなく寺に隠してしまった。なのでわたしも見ることができないのです…と。利休の茶を強権で支配する秀吉に、政宗の心にはじめて幻滅のようなものがきざします。
 京都滞在中の愛姫(桜田淳子)と再会できる日がきました。しばらく離れていたので感傷的になり、愛姫がまだ後藤久美子だった時代からの、甘い回想シーンがたっぷり挿入されます。あらためて見ると、後藤久美子が桜田淳子になったのもさほど違和感ありませんね。淳子さんが、暗くて自信がないのに芯は強靭な愛姫を、しっかり作り上げてきたからでしょう。
 久々の再会に固く抱き合うふたり。愛姫は、「本当に殿は謀叛を企てたのではないのでしょうか」と訪ねます。政宗は、「よく聞け、二度とは言わぬ」、謀叛を企てたことは一切ない!…と、妻の愛姫に、はじめて大嘘をつきます…。

第28話「知恵くらべ」

 政宗(渡辺謙)の京都滞在も長期に及びますが、派手なデビューが大ウケしたおかげで都の人気者となり、あちこちでひっぱりだこです。特に千利休(池辺良)とは交流をふかめ、親しく行き来するようになりますが、そんな交際のなかで、政宗は、利休秘蔵の「橋立の壺」を秀吉(勝新太郎)に渡す渡さない、という問題で、両者が深刻に対立していることを知ります。権力者の面目にかけて利休を屈服させたい秀吉と、侘茶の美学がわからない秀吉に秘蔵の一品をわたすことは絶対にできない利休。
 三成(奥田瑛二)は、茶々(樋口可南子)がいる寝室にはいって秀吉の体をマッサージまでする、むかつくような腰巾着ぶり。「利休めは殿下のご威光をかさにきてやりたい放題。この頃では伊達政宗とやたら仲良くしています」とかなんとか、悪意の告げ口を耳元で囁いたりします。それを聞きながら、秀吉、「三成、ツボを。もそっと強う押せ」…と、意味深なことを呟きます。
 そして間を置かず、ツボが原因で、利休は京都を追放され、堺に蟄居の身になります。理由は、勝手に茶器の売買で不当な利益を得たことと、大徳寺の山門に自分の像を飾らせ、秀吉を愚弄した…というもの。あきらかに秀吉の暴走とわかっていても、誰もとめることは出来ず、間もなく、京都に呼び戻された利休の邸を秀吉の軍勢が包囲し、利休は切腹を命じられました。
 あまりの仕打ちに取り乱した政宗は、晒されている利休の首級を取り戻す!そして懇ろに葬ってさしあげるのだ!!と言い出しますが、小十郎(西郷輝彦)が体を張って制止します。そんなことをしたら、政宗を潰すかっこうの口実、「このたびのことは、全て殿下の嫉妬から始まったもの。殿と利休殿の友情もその一因です」と分析する小十郎に、おれが利休殿を死に追いやったというのか!!と、なすすべもなく呆然となる政宗でした。
 利休の処刑からほどなく、奥州の領土仕置きが、秀次(陣内孝則)の口から申し渡されました。政宗には、伊達の本領に加えて大崎・葛西など12郡が安堵されます。有難きしあわせ、万遺漏無く統治にあいつとめるでございましょう、と低頭する政宗に、三成はせせら笑って「喜ぶのは早い。葛西大崎のかわりに、会津周辺の三春・塩乃松ほか5郡を没収!」…と。
 会津周辺の領土は、奥州地方に覇を唱える拠点として、多大な労力と犠牲をつぎ込んで勝ち取った領地。それをむざむざ…と、異を唱えようとする政宗の先を制して、小十郎が「有難きしあわせ、文句はなにもございません」と言って話を引き取ってしまいます。「伊達殿は良い家臣をお持ちじゃ」と嘲笑う三成…なんてイヤな奴なんでしょうか!!(いや、奥田さんが上手いってことなんですけど)、関が原でズダボロに負けるのが楽しみになってしまうような(笑)、もう素ん晴らしい感じの悪さです。
「小十郎め、本当ならぶった斬ってやるところだ!!」と、邸にかえっても怒りが収まらない政宗ですが、小十郎が伊達家を一途に思い、政宗が失言で墓穴をほるのを制してくれたのはよく解っているのでした。それでも素直に礼がいえず、自分が八つ当たりでぶん殴った顔の手当てにと傷薬を差し入れたりします。
 なにかと情緒不安定な政宗に、愛姫(桜田淳子)が、そろそろお東様と和解されてはどうでしょうか…と提案します。こんなときにお東のことなんか言われて、政宗はキレますが、心の底ではいまでも母のことが忘れられないんですね。でも、愛姫に対しては、バカ野郎ふざけんな、二度と言うな!!とか言って荒れてしまう。
 だんだんストレスの塊みたいになる政宗のところに、米沢から猫御前(秋吉久美子)と新しいふたりの側室、それ留守政景(長塚京三)と鬼庭綱元(村田雄浩)たちがやってきます。一行が到着した夜、政宗はベロベロに酔っ払って足腰も立たない状態であらわれ、綱元は思わず、「殿、情けない!京都暮らしで関白に骨まで抜かれたのですか!」と言ってしまいます。おれは骨など抜かれていなーい!!と泣き上戸で管を巻く政宗…もうどうしようもありません。
そんな政宗のストレス生活を救ったのは、伊達領の大崎・葛西でまた起こった百姓一揆。政宗はさっそく鎮圧を願い出て、許可されます。「もう鶺鴒の眼は通じぬぞ」と家康に釘を刺されながら…。
 小十郎や綱元たちは、政宗が、一揆鎮圧の戦をするのか、それとも一揆に乗じて秀吉に叛乱をおこすのか、判断がつきません。真意を問う家来達に、政宗は、「秀吉は化け物だ。化け物と戦っても勝ち目はないということがよくわかった」と。なのでこれからは別の戦をしてみせる。秀吉の懐深く入り込み、知恵くらべをしかけるのだ!…ということですが、知恵比べとは、さてこれいかに?

(つづきます)


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