先週のスウェーデンの新聞に、日本の社会・経済に関するレポタージュが掲載されていた。時代の波は今や中国で、西欧のメディアの関心も自然と中国にばかり向けられるため、日本の話題が新聞に登場することなんて、あまりないのだけれど、2ヶ月に一度くらいの割合でまとまった特集記事が載る。
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「経済ブームは一般国民を跡形もなく迂回している」
90年代からの長期にわたる不景気も、2002年辺りから回復に向かい、その後は平均年2%の経済成長を続けている。大企業も最近になって記録的な収益を上げるようになり、政府・与党もホッと胸を撫で下ろしている。
しかし、問題はこの好景気が一般の人々のもとに恩恵をもたらしていないこと。これまでのリストラなどでスリムになった大企業は、大きな利潤を獲得し、そのおかげで、これらの企業の株価は上昇していている。そのため、一般の人々も、株式所有者は恩恵を受けているが、従業員や労働者は一方で大きな敗者になった。
2002年から続くといわれる景気上昇は、統計上では事実であるが、国民経済のすべて映し出しているわけではない。ようやく達成された“デフレからの脱出”を政府・与党は大いに誇っているが、そのような経済の好転が実生活の中で感じられないのはなぜか?
同志社大学のNoriko Hama教授によると、この経済成長による恩恵の分配が驚くほどアンバランスであるため、だという。ある一部の人々が大きな恩恵を受けるために、別の一部の人々が大きく損をしなければならない、という「ゼロ・サム ゲーム」に半ば陥ってしまっている。
彼女によると、過去5年のうちに、高所得者と低所得者、都市部と農村部、大企業と中小企業の間の格差が、歴史的に類を見ない速さで拡大した、という。ジニ係数という、一国の不平等の度合いを示す値も上昇してきている。
大企業が記録的な業績を上げている一方で、一般の従業員や労働者がその恩恵に与っていないのは、実質賃金にも現われている。1997年から2005年の間に、実質賃金は10%も減少しているのだ。人々は日々をやりくりするために、貯金を減らす。そのため、所得の中からどれだけの割合を貯蓄に回すかを示す貯蓄率も、1997年の10.4%から、2005年には2.4%にまで低下している。
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日本の経済が上向き基調なのに、様々な問題にぶちあっているのは聞いていたけれど、人々の間の格差拡大がここまで深刻なのを知って、危機感を持った。この記事には具体的な原因は書かれてはいなかったけれど、考えられるものとしては、企業が正職員の代わりに、安上がりですぐにクビにできるパートや派遣職員などの非正規職員を多用するようになった反面、これらの職員にたいする社会保障制度が不十分であるために、人々の生活が不安定になったこと。とくに、非正規職員は、給料が安く、解雇しやすい上に、社会保障費などの企業の負担がないので、企業にとっては二重の意味でおトク。その一方で、しわ寄せの多くは一般の人々のに降りかかってくる、といったことが大きな影響を与えているのではないかと思う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/39/1ddb1792fdbe119a8c8e7f9fab59cb7d.jpg)
ジニ係数
上の記事とともに、ジニ係数(一国の不平等の度合いを示す値)の国際比較(2004年)が掲載されていた。アメリカのジニ係数が大きいのは予想通りだが、日本も先進国の中では0.30を超える「比較的不平等な国」に属している。一方、オランダ、スウェーデン、デンマークなどの北ヨーロッパはかなり下のほうに位置している。スウェーデンでも、格差が拡大しつつあることが国内では問題になっているが、国際的に見たら、まだまだ落ち着いていられそうだ。
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「経済ブームは一般国民を跡形もなく迂回している」
90年代からの長期にわたる不景気も、2002年辺りから回復に向かい、その後は平均年2%の経済成長を続けている。大企業も最近になって記録的な収益を上げるようになり、政府・与党もホッと胸を撫で下ろしている。
しかし、問題はこの好景気が一般の人々のもとに恩恵をもたらしていないこと。これまでのリストラなどでスリムになった大企業は、大きな利潤を獲得し、そのおかげで、これらの企業の株価は上昇していている。そのため、一般の人々も、株式所有者は恩恵を受けているが、従業員や労働者は一方で大きな敗者になった。
2002年から続くといわれる景気上昇は、統計上では事実であるが、国民経済のすべて映し出しているわけではない。ようやく達成された“デフレからの脱出”を政府・与党は大いに誇っているが、そのような経済の好転が実生活の中で感じられないのはなぜか?
同志社大学のNoriko Hama教授によると、この経済成長による恩恵の分配が驚くほどアンバランスであるため、だという。ある一部の人々が大きな恩恵を受けるために、別の一部の人々が大きく損をしなければならない、という「ゼロ・サム ゲーム」に半ば陥ってしまっている。
彼女によると、過去5年のうちに、高所得者と低所得者、都市部と農村部、大企業と中小企業の間の格差が、歴史的に類を見ない速さで拡大した、という。ジニ係数という、一国の不平等の度合いを示す値も上昇してきている。
大企業が記録的な業績を上げている一方で、一般の従業員や労働者がその恩恵に与っていないのは、実質賃金にも現われている。1997年から2005年の間に、実質賃金は10%も減少しているのだ。人々は日々をやりくりするために、貯金を減らす。そのため、所得の中からどれだけの割合を貯蓄に回すかを示す貯蓄率も、1997年の10.4%から、2005年には2.4%にまで低下している。
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日本の経済が上向き基調なのに、様々な問題にぶちあっているのは聞いていたけれど、人々の間の格差拡大がここまで深刻なのを知って、危機感を持った。この記事には具体的な原因は書かれてはいなかったけれど、考えられるものとしては、企業が正職員の代わりに、安上がりですぐにクビにできるパートや派遣職員などの非正規職員を多用するようになった反面、これらの職員にたいする社会保障制度が不十分であるために、人々の生活が不安定になったこと。とくに、非正規職員は、給料が安く、解雇しやすい上に、社会保障費などの企業の負担がないので、企業にとっては二重の意味でおトク。その一方で、しわ寄せの多くは一般の人々のに降りかかってくる、といったことが大きな影響を与えているのではないかと思う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/39/1ddb1792fdbe119a8c8e7f9fab59cb7d.jpg)
ジニ係数
上の記事とともに、ジニ係数(一国の不平等の度合いを示す値)の国際比較(2004年)が掲載されていた。アメリカのジニ係数が大きいのは予想通りだが、日本も先進国の中では0.30を超える「比較的不平等な国」に属している。一方、オランダ、スウェーデン、デンマークなどの北ヨーロッパはかなり下のほうに位置している。スウェーデンでも、格差が拡大しつつあることが国内では問題になっているが、国際的に見たら、まだまだ落ち着いていられそうだ。
景気回復で雇用情勢は改善していますが、パート、アルバイトや派遣などで非社員雇用の比率が高まり経済格差が拡大しているのです。
一部の大手企業は利益を上げているのに、中小企業は中国の台頭に直面して苦境に陥っています。
以前、メールにて自己紹介させていただいたものです。
私がこちらに来る前に、NHKで見た特集は結構衝撃的でした。
ttp://www.nhk.or.jp/special/onair/060723.html
最近、NHKでもよく取り上げられているテーマのひとつだと思います。
時代の流れが変わってパートへの考え方が変わっても賃金格差は大きいままです。
スウェーデンではパートと正社員の賃金格差は日本ほど大きくないと聞いています。
新聞記事の通り、一部の企業が記録的な好業績を見せているのなら、それを働く者の福利厚生や労働環境の改善に当てられないのでしょうか。
正社員とパート・派遣などの非正規社員の格差をなくす労働法制が必要だと思うのですが、“支持率が歴史的に高い”といわれる近年の政権は、手立てを打つ気すらないのでしょうか。
http://www.dn.se/DNet/jsp/polopoly.jsp?d=678&a=581990&previousRenderType=1
上のリンクで見てみてください。
そのしわ寄せが、現場の技術力とモチベーションの低下、出生率の低下、将来への不安の増大などという形で出てきているように思います。とにかく現場の技術力低下には目に余る者があります。
このまま「コストダウン」で「安かろう悪かろう」の労働力に依存し続ければ、日本の産業の屋台骨が崩れるのにさほどの時間はかからないでしょう。せいぜい、あと十数年というところでしょうか。
もし、私が海外留学して、海外で仕事ができるだけの英語力を有していたならば、今の日本に帰ろうなど夢にも思わないことでしょう。
>> 一部の企業が記録的な好業績を見せているのなら、それを働く者の福利厚生や労働環境の改善に当てられないのでしょうか。
日本では戦後において終身雇用制というポリシーの堅持とその実践によって、企業の内部で利益を労働者に対して再分配していたと私は考えています。また、企業もそれにより多くの利益を労働者から得てきたはずです。
一方政府は再分配システムに関してはほとんど構築努力を行っておらず、政府による再分配は官僚と距離の近い企業に対して公共事業や防衛費などの形で貫流する程度です。国民に対して再分配を積極的にしようとはせず、民間の再分配システムにまったく委譲してしまっているように見えます。これはおそらく、日本の「伝統的慣習」なのでしょう。
しかしながら、長い不況にあって今度は企業がその再分配システムを放棄してしまいました。これにより、日本における再分配システムはほぼ機能停止してしまったといえるでしょう。格差が拡大して当然です。
ただ、「企業」と一からげで語れないのも事実です。日本の大多数の企業は一握りの大企業の他は全て下請けを中心とした中小企業群です。強者たる使用者=企業に対して、弱者たる労働者という単純な構図だけで考えればうまくいくほど日本の経済構造は単純ではありません。
今後はむしろ、企業対企業の関係において、対等な関係を保証するために弱者に対する優遇的差別や積極的な利益の分配を現行の公正取引法以上に行わせるようなことも労働者待遇の改善とともに考えないと、日本では実質的な格差の縮小はできないでしょう。労働法制の改定とともに考える事項ではないのかという気もしますが、多くの日本の人達はその議論をしていないようです。
長々と失礼しました。
>>今日深く
興味深く、でした。失礼しました。