スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

「スウェーデンの人口が950万人を超えた」の意味

2012-08-16 00:57:07 | スウェーデン・その他の社会
スウェーデンの人口は?と訊かれたら、大雑把に900万人と答えてきた。実際、人口が900万人に達したのは2004年のことだった。そして、その後も増え続け、今年の4月に950万人を超えた。現在の人口予想では2021年に、とうとう1000万人になるという。


では、現在、スウェーデン人(スウェーデンの国籍保持者)が950万人か?というとそうではない。実は、この数字が示しているのは「人口」であり「国民(国籍保持者)」ではない。だから、スウェーデン国内に在住する外国籍保持者もたくさん含まれている。(私がこれに気が付いたのは7年ほど前。人口統計を扱っていたときに辻褄が合わない部分があり、それを調べて行ったらこのことに気が付いた)

では、スウェーデン人はどのくらいか?

まず、スウェーデンの人口である950万人のうち、外国籍保持者は66万人(2011年末の数字)。つまり、人口の7%になる。ここには当然ながら、もともと外国出身だがスウェーデンに帰化した人は含まれていない。

スウェーデンに住む外国人で一番多いのは、フィンランド人(68,000人)、イラク人(56,000人)、デンマーク人(40,000人)、その次がポーランド人(43,000人)となる。フィンランド人は戦後から70年代までの高度成長期に多く移住してきた。生活の基盤を完全にスウェーデンに移したものの、帰化はしていない人がたくさんいるということだろう(一時的に働きに来ている人もいるだろう)。デンマーク人でもそういう人がいるかもしれないが、むしろ、デンマーク人の場合は本国の住宅事情が悪く、スウェーデンの南部に移住して、そこから海峡を越えてデンマークに通勤している人が多いのではないかと思う。

【過去の記事】
2012-03-05: スウェーデン・デンマーク、国際地下鉄の建設

イラク人は、2003年の英米軍によるイラク侵攻以降に難民としてスウェーデンに移住した人が多い。難民といえば、70年代末のイラン革命の際のイラン難民や、90年代前半のボスニア紛争のときのボスニア難民も数が多かったが、いま統計を見てみると、スウェーデン国内のイラン人は14,000人、ボスニア人は7,000人しかいない。イラン人は分からないが、ボスニア人の場合は帰化した人がかなり多かったのではないかと思う。ちなみに、スウェーデン在住の日本人2400人(帰化した人は含まれていない)。

次に、国外に在住するスウェーデン人はどれくらいいるのか? 実はこれが不思議なことに、公式統計がない。生活の基盤を完全に移しているかどうかが、把握できないためだという。推計では、だいたい30万人ほどと言われ、一番多い居住国がアメリカノルウェー、そしてフィンランドと言われる。

だから、スウェーデン国籍を保持しているという意味でのスウェーデン人は、950-66+30で、だいたい914万人くらいではないかと推測される。

他の国の人口統計が、国籍保持者を示しているのか、人口を示しているのか分からないが、国境を越えた行き来が盛んになった今、国籍ではなく、その国内に何人住んでいるか?という数字のほうが、集計も現実的だし、実用的な意味を持つものなのかもしれない。

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4 コメント

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Unknown (Hiro)
2012-08-17 13:26:01
いつもながら示唆に富むお話をありがとうございます.国籍と人口の違いを考えるだけでも興味深いことが見えてきますね.
最近,スポーツ選手がより活躍しやすい場を求めて国籍を変更したり,超富裕層が税金の有利な国を求めて住民票を移したりなどという記事を見るにつけ,ある国の国籍を持つ意味,とか,ある国の国民であるとはどういうことか,といったことを意識させられる機会が増えました.単なる区切りの問題ではなく,それを誘起する事情まで思いを巡らす必要があるということですね.
Unknown (おぐし)
2012-08-22 02:28:06
例えば、スウェーデンでは毎年3万人くらいの難民申請があって1万人弱くらいが認定されていますが、申請を受理されなかった人達の多くも「ペーパーロス(不法滞在)」として国内に残っていますよね。この人達は、ペーパーロスなのに、人口にカウントされているものなのか、よく頭を傾げることがあります(たぶんそうでしょうね)。また、関係ないですが、去年の難民申請のリストを見ていたら、日本から一人申請がありました。却下されてましたが。
Unknown (Yoshi)
2012-08-24 08:52:44
>Hiroさん

私は今のように国境を越えた行き来が自由になり始め、別の国で長期に渡って暮らす人が増えてくれば、その居住地域の自治という点からは、国籍がどうであれ、その地域社会を構成する一員であるわけで、個人をそのように地域の一員として考えれば、このような人口の数え方も良いと思います。スウェーデンでは、外国人にも居住が3年以上であれば地方参政権が与えられますが、背景にはそのような個人の捉え方があると思います。

(正直なところ、私自身も「日本人」という国籍で見られるよりも、このヨーテボリという町に暮らす住民の一人、とか、このスウェーデンという社会を支える一人の個人、と見てもらったほうが嬉しいです。)
Unknown (Yoshi)
2012-08-24 08:55:34
>ペーパーロスなのに、人口にカウントされているものなのか

人口統計は、外国人の出入国管理とは関係なく、personnummerを持ち、どこかに住所があり、国税庁で戸籍登録をしているかどうか、に基づいていると思います。

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