スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

相次ぐ大幅利下げ

2008-10-24 07:08:14 | スウェーデン・その他の経済
<前回に引き続き、今回も外出先から携帯電話を使って書き込んでいます。頂いたコメントに対する反応が滞っていますが、お許しください。>


経済統計に関するカンファレンス。参加者は40名程と、こじんまりしたカンファレンスなので、参加者の一人である私も大勢に埋もれることなく、統計局の職員やスウェーデンの行政機関の職員と食事やコーヒー休憩のたびに情報交換ができるのが嬉しい。昨日の夜は会場のホテルでディナーパーティーがあった。

さて、2日目。スウェーデン中央銀行の副総裁Svante Öbergを交えたパネルディスカッションが午後から開かれた。その始まりに、彼がパワーポイントを使った簡単なプレゼンテーションをしたのだけれど、ここで彼は大きなニュースを発表した。「スウェーデン中央銀行は今日、政策金利を0.50%引き下げて、3.75%とする決定を下した。」

このニュースはその数時間前に一般に公表されていたのだけど、カンファレンスの参加者はほとんど知らなかったようだ。お互い顔を見合わせながら、「ホント?」って確認し合っていた。

そう。ある意味、驚きのニュースである。つい2週間前に、スウェーデンは欧米6カ国と一緒に、0.50%の協調利下げを行ったばかりだった。世界的な金融危機とそれに続く不況を受けて、今日の中央銀行の定例会合では利下げの可能性があると見られてはいたけれど、せいぜい0.25%だろう、と思われていた。一方で、インフレ率はいまだに高い水準にあるので、インフレターゲットを金融政策目標とするスウェーデン中央銀行としては、次の定例会合まで利下げを見送るのではないか、とも見られていた。(今日の朝刊では、大体そのような見方が大勢だった。)

そのような期待を覆すかのように、一気に0.50%も利下げがされたのだ。今の不況がそれだけ深刻だという証拠であるとともに、中央銀行として金融政策を最大限に使った素早い対策を打ち出すことで、落ち込みを少しでも和らげようとする積極的な意思の表れとも受け取れる。

9月初めに物議を醸した利上げ(0.25%幅)によって、政策金利が4.75%に設定されてから、わずか1ヵ月半の間に1%も引き下げられる結果となった。

<以前の書き込み>
2008-09-09:景気後退局面での公定歩合の引き上げ
2008-09-11:景気後退局面での公定歩合の引き上げ(2)
2008-10-09:国際的金融危機の中でのスウェーデンの現状

利下げは、自国通貨の為替レートを引き下げる。今日の利下げによって、スウェーデン・クローナはさらに弱くなるだろう。ただし、果たしてどこまで悲観的になるべきか疑問だ。輸入品や国外旅行が高くなる一方で、輸出品は外国で安くなり国際競争力が増すので、製造業を中心とした輸出産業にとっては救いになるだろう。