スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

若年者の失業対策のために・・・

2008-03-27 23:45:49 | スウェーデン・その他の経済
スウェーデンの経済が好調であったことを書いてきた。ここ3年ほどを見ても、輸出産業の国際競争力が強く、輸出が拡大し、また伸びる賃金に伴って国内消費も大きく拡大してきた。また、90年代半ば以降の傾向を見ても、90年代初めの経済危機から順調に回復して、他の北欧諸国とともにヨーロッパの中でも優等生と捉えられるようになってきている。

ただ、なかなか解決しない問題も抱えている。その一つが「若年者(25歳以下)の失業」だ。計測の仕方によっていろいろな数値があるが、13-20%くらいだと言われる(例えば、現在勉強中の大学生のどのくらいの部分を潜在的な失業者とカウントするか、などの違い)。好況のおかげでここ2年ほどは若干減少したものの、それでも高水準にとどまっているといわれる。

主な原因は2つ考えられる。
(1) 厳格な雇用保護制度
(2) 初任給が比較的高いこと(言い方を換えれば、年齢間で賃金格差が比較的小さい、とも言える)

雇用保護というのは、解雇を行う際の事前通達期間の長さや、解雇の順番に関する規定。事前通達期間は勤続年数とともに長くなっていくし、「Last in, first out」と言われるように、勤続年数が少ない人ほど優先的に解雇される規定がある。結果としては、後者の規定のために若者が不利を被っているという指摘がある。また、前者の規定のために、中年以上の層の転職率が低く、労働市場の流動化を妨げているといわれる。そうすると、これから労働市場に入ろうとする若者になかなかチャンスが与えられないのではないか、と指摘されている。

しかし、それ以上に問題なのは、厳格な雇用保護制度のために、一度雇ってしまうと下手に解雇できなくなることだろう。雇う側も人選びに慎重になる。好況で人手不足だから、新たに人を雇いたいけれど、誰を選ぼうか…? 若者、それとも30代以上の人?

もう一つの原因としてあげた高水準の初任給のために、若年者の労働コストも、30代・40代の人の労働コストに比べて、そこまで低くない。そうなると、まだ職歴が少なく、企業側にとってリスクが高い若年者を雇うよりも、履歴書によって経験や技能がある程度、判断できる30代以上の人を雇おうか、ということになる。結果として、若年者が労働市場になかなか取り込まれない、という問題が発生しているようだ。

(ただ、厳格な雇用保護制度とはいえ、フランスやスペインなどはさらに厳格な制度を持っているという)

さて、この問題にどう対処していくべきか?

スウェーデンでは、日本のように労働法制を緩くして労働コストの安い非正規(派遣・アルバイト)を多用したり、賃金水準を切り下げることで、働く側に大きなしわ寄せをし、それによって問題解決をはかることは論外と考えられている。

(注:スウェーデンにも非正規の雇用形態はあるが、雇い主は正規・非正規に関係なく、支払う給与に応じて社会保険料を国に納める必要がある。そのため、正規と比べた場合に労働コストが大きく変わるわけではなく、労働コスト圧縮のために非正規を多用するということはない)

では、失業対策のためにスウェーデンではどのような政策が取られているのだろうか?(続く…)