ミラノのドゥオーモにも、仏教徒にとっては非常に難解だったあの有名な小説「ダ・ヴィンチ・コード」で初めて知った「ローズ・ライン」と語られる南北軸線が、床に描かれていた。
(「ダ・ヴィンチ・コード」 ダン・ブラウン 著/越前敏弥 訳/角川書店)より
「 ローズ・ラインとは、子午線あるいは経線とも呼ばれるもの、北極と南極を結ぶ想像上の線である。(中略)フランス人にとってのゼロ度の経線はパリのサン・シュルピス教会を通っていた。
真鍮の標線はその事実を記念したものであり、1884年にグリニッジにその名誉を奪われたものの、元来のローズ・ラインとしていまも残っている。 」
ローズラインとは;
北極と南極を結ぶ想像上の線のことで、子午線あるいは経線のこと。これは無数に引くことができる。それゆえ、昔の航海者はそれらの線のどれを真のローズライン、つまり、経度ゼロの線とするかを決める必要があった。
現在、その線は英国のグリニッジにあり、世界共通になっている。しかし、それまでは、フランスの子午線が世界初であり、多くの国がそれを使っていた。
しかし、数百年の年月を経て英国が地図製作や航海技術で世界の頂点に立ったことから、英国の本初子午線――経度ゼロの子午線を世界標準に決めざるを得なかった。
参考1;薔薇と羅針盤
何世紀ものあいだ、薔薇は地図や、正しい方向へ人々を導くものの象徴だった。 羅針盤はほとんどの地図に描かれて、東西南北を指し示しているが、元来は"風の薔薇"として知られ、三十二の風向きを表していた。
主要な八方位を基準とし、十六方向、三十二方と細分したものである。円の上に図示すると、三十二個の頂点のなす形が、三十二枚の花弁を持つ伝統的な薔薇の模様によく似て見える。
今日でもコンパス・ローズは航海の基本とされており、北側の先端には矢じりまたは百合の花の紋章が描かれている。
参考2:ローズラインは、時を知らせる手段
小説上の記述に対して、小説に登場したフランスのサン・シュルピス教会では、以下のような声明文(?)を印刷し、教会内で無料配布を行っている。 以下、全文転載する。
サン=シュルピス教会の日時計、グノモン
教会の床からピラミッド*の先端まで堂内を分断する真鍮片の『日時計』は 1743年にここサン・シュルピス教会に設置されました。
この装置は
-正確に南北を示す子午線と、
-正面の窓の右側上方の金属片に穿たれた照門から成っています。
この線は『ローズライン』と言う呼び名で呼ばれたことはありません。 それは異教徒の寺院の名残でもありませんし、この場所にそのような建物が存在した事実もありません。
グリニッジ天文台が公認される以前に、この線が『本初子午線の基点』となったこともありません。
今日、グリニッジ天文台の場所に南北に通る経線を
-経度の標準と呼び、
-『世界共通の標準時』としています。
正午に南中する太陽の光はオベリスクの反対側の窓にある照門を通って、毎日少しずつ位置を変えながら、光りの円盤を床の線上に映し出します。
天文学者ル・モニエ(1715年~1799年)は太陽運動の研究を重ね、
-地球の自転のパラメーターを算定しました。
-また、グレゴリー暦施行の準備段階でその数値の正しさを立証しました。
グレゴリー暦は16世紀に教皇グレゴリー13世の命を受けて作られた暦で、復活祭が春分の日に続く最初の満月の頃になるように定められています。
もともと、サン・シュルピス教会の日時計、グノモンは、正確な時間を計る手段であり、教会の鐘を鳴らしてパリ中にそれを伝えたのです。
(*部分、“ピラミッド”という表記は原文のままです。)