自 遊 想

ジャンルを特定しないで、その日その日に思ったことを徒然なるままに記しています。

読む度に恥ずかしくなる本

2014年05月12日 | Weblog

 マルクス・アウレ-リウス『自省録』(神谷美恵子訳)は読む度に恥ずかしくなる本である。
 特に、その初めの方には、例えば「驚かぬこと、臆さぬこと、決してあわてたり、しりごみしたり、とまどうたり、落胆したり、作り笑いせぬこと。また怒ったり、猜疑の心をおこしたりせぬこと」という句がある。
 このような句の意味するところを我がものとし得ないことは言うまでもない。常日頃の座右の銘にするのも僭越である。臆したり、あわてたり、しりごみしたり、とまどうたり、落胆したり、そんなことばかりしているのではないかと顧みるばかりである。ただ、僕は作り笑いはしないのではないかと密かに思つている。世の中には作り笑いの得意な人もいる。
 しかし、そんな現状も、訳者の神谷美恵子のハンセン病患者への献身を思うと、たいした事ではないのではないかという気がする。『自省録』の句と神谷美恵子の生きざまとが重なり、僕に迫り来るが、いかんせん、恥ずかしくなるだけである。

 ハンセン病国家賠償訴訟の全国原告団協議会会長で、元患者らが国の隔離政策で受けた被害の快復や差別解消の運動を率いた谺(こだま)雄二さんが11日午前3時54分に逝去されたと朝刊で。ご冥福をお祈り申し上げます。