民芸運動の発起人、柳宗悦の本はかつてよく読んだ。ちょっと読み返してみたら、『心偈』という書き物に「驚きを抱く者は幸いである」とある。
思うに、人間の精神的な成長が年齢とともに老化するか否かは、この「驚き」の心を持ち続けることが出来るか否かにあるのだろう。
世間には、立派なもの、美しいもの、鮮やかなもの等が確かに存在する。
しかし、それを、立派だ、美しい、鮮やかだと受け止めるのは自分の心であって、その心があるからこそ、その存在を認めることができると言わねばならない。
その新鮮な「驚き」の心がなくなれば、それらは単にガラクタにしか見えないだろう。
ああ素晴らしいと驚く、さすがだと驚く。
驚くとは出会った物事に対する肯定的評価であり、宗悦によると、「喜び」なのである。そのような心を持ち続けている限り、心は老いることはない、
と言っていいのだろうか、僕にとって。