ポケットの中で映画を温めて

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『スキャンダル』を観て

2020年08月27日 | 2010年代映画(外国)
今年2月の作品『スキャンダル』(ジェイ・ローチ監督、2019年)を半年遅れで観てきた。

2016年、アメリカニュース放送局で視聴率NO.1を誇る「FOXニュース」に激震が走った。
クビを言い渡されたベテランキャスターのグレッチェン・カールソンが、TV業界の帝王と崇められるCEOのロジャー・エイルズを告発したのだ。
騒然とする局内。看板番組を背負う売れっ子キャスターのメーガン・ケリーは、自身の成功までの過程を振り返り心中穏やかではなくなっていた。
一方、メインキャスターの座を狙う貪欲な若手のケイラは、ロジャーに直談判するための機会を得て・・・
(公式サイトより)

実話を基にしたこの作品は、本国アメリカでは当然分かっているだろう前提で作られている可能性があり、その分、分かりづらいところもある。
整理すると、
元ミス・アメリカだった経歴のベテランニュースキャスター、グレッチェン・カールソンが7月6日、FOXニュースの会長兼CEOのロジャー・エイルズをセクハラで提訴する。
元弁護士だった人気ニュースキャスターのメーガン・ケリーは、自分の身の振りどころを考え沈黙していたが、グレッチェン・カールソンの告発を受け、過去の自身のセクハラ被害を公にする。
片や、提訴されたロジャー・エイルズ。
歴代共和党のメディアコンサルタントとして腕を振るい、FOXニュースチャンネルの設立とともに初代CEOに就任する。
そして、同局を視聴率トップにさせ、アメリカ保守政治に絶大な影響を与えてきた。
映画はこの実在の三人をメインに、もう一人、若い野心家のキャスター、ケイラ・ポスピシルを絡ませる。

端的に言って、権力者によるセクハラ疑惑告発映画である。
ここに言うセクハラとは、地位、権力を利用し、それに応じた場合の相手方の利益の保証も絡んだセックス強要であって、拒んだ場合の待遇はおのずと見えてくる。

ただ作品的には、テレビ局とか新聞社が舞台となる社会正義のお手本みたいなこの手の作品には、少なからずウンザリするところもある。
と言うのは、この手は演出の仕方がよく似ていて、内容を映像で見せずにセリフをどんどん喋らす。
そのテンポの早いこと、事件の概要がわかっていない日本人のこちらは、ただただ字幕を追いかけるだけで、登場人物の表情なんて見ていられない。
映画の基本は映像主体と思っている私は、このような作りの作品には嫌悪感を催す。
前回では4年ほど前の『スポットライト』(トム・マッカーシー監督、2015年)がそうだったと思い出した。
それでも、折角観るのだからと必死に注視していたが、沢山の個々の人物紹介は、テレビドラマでよくあるように名前の字幕だけであって、
それでは覚えきれないだろうと、つくづく呆れてしまった。

ラスト自体も事実が基のため、セクハラ事実を録音されていたロジャー・エイルズは、7月21日に疑惑を否定しながらもCEOを辞任。
そのためグレッチェン・カールソンは、和解金2000万ドルを手にしたが、FOXとの秘密保持のために過去の詳細は封印されている。
そして、メーガン・ケリーはFOXを去り、NBCニュースに移籍していく。
時は、4年前の大統領選、解雇されたロジャー・エイルズは共和党候補のドナルド・トランプのキャンペーン顧問となる。

この作品の鑑賞印象は、今の現実を考え合わせると、どうしても、なんとも言えないモヤモヤ感が残ったままとなってしまう。

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