ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『燃ゆる女の肖像』を観て

2021年02月16日 | 2010年代映画(外国)
昨年暮れの『燃ゆる女の肖像』(セリーヌ・シアマ監督、2019年)の評価が高いとあって、県下で現在も上映している所があったので高速道路を使って行ってきた。

画家のマリアンヌはブルターニュの貴婦人から、娘のエロイーズの見合いのための肖像画を頼まれる。
だが、エロイーズ自身は結婚を拒んでいた。
身分を隠して近づき、孤島の屋敷で密かに肖像画を完成させたマリアンヌは、真実を知ったエロイーズから絵の出来栄えを否定される。

描き直すと決めたマリアンヌに、意外にもモデルになると申し出るエロイーズ。
キャンパスをはさんで見つめ合い、美しい島を共に散策し、音楽や文学について語り合ううちに、恋に落ちる二人。
約束の5日後、肖像画はあと一筆で完成となるが、それは別れを意味していた・・・
(公式サイトより)

舞台は、18世紀のフランス・ブルターニュの孤島。
エロイーズの姉は、結婚するはずだったのに崖から飛び降り自殺している。
その代わりとして、エロイーズが修道院から呼び戻され、ミラノの貴族と結婚させられようとしている。
エロイーズは結婚を拒否するため、自分の肖像画を先の画家にも描かせなかった。
だから今回、マリアンヌが依頼を受け、描く段取りとなった。
それも描くことをエロイーズに悟られない方法で。

物語は、マリアンヌが描き終わるまでを淡々と進んでいく。
だが、内面の心理的葛藤は、意図してか省略されている。
そのような手法だから、前段としての姉がなぜ自殺したのか、そしてエロイーズも結婚をなぜ頑なに拒絶するのかは皆目わからない。

なぜは、他でもやってくる。
エロイーズは、マリアンヌの描いた絵がちっとも自分に似ていないと拒否する。
そのため、母親の伯爵夫人からマリアンヌの契約が打ち切られると思いきや、今度はエロイーズの方から積極的にモデルになろうとする。
そのエロイーズの心理的変化が全然わからない。
そのような変化の仕方は、マリアンヌとエロイーズが愛するようになるところでも、物語として前もって愛することのレールが敷かれているのかとの印象を持つ。

また、映画の中の男は、冒頭、マリアンヌが島に渡るボートの漕ぎ手と、マリアンヌが島から帰る時の一人しか現れない。
そのように意図的に男が排除されているので、メイドのソフィが妊娠しても相手の影も見当たらない。

だから全体的に、物語としての起伏の山が見えてこなくて、単調で平坦な進み具合になってしまっている。
とは言っても、その映像はどこまでも繊細で穏やかな流れの中を漂う。

いずれにしても、この作品の評価のされ方がどのようなものかは理解できるとしても、私には違和感が残った。

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