ポケットの中で映画を温めて

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『映画はアリスから始まった』を観て

2022年07月28日 | 2010年代映画(外国)
『映画はアリスから始まった』(パメラ・B・グリーン監督、2018年)を観てきた。

ハリウッドの映画製作システムの原型を作った世界初の女性映画監督アリス・ギイの生涯に迫るドキュメンタリー。
世界初の劇映画「キャベツ畑の妖精」など監督・脚本家・プロデューサーとして1000以上もの作品を手がけ、
クローズアップ、特殊効果、カラー映画、音の同期といった現在の標準的な映画製作技法を数多く生み出したアリス・ギイ。
リュミエール兄弟やジョルジュ・メリエスと並ぶ映画黎明期のパイオニアでありながら、これまで映画史から忘れ去られてきた。
ベン・キングズレー、ジュリー・デルピー、アニエス・バルダ、マーティン・スコセッシといった映画人や、生前のアリス自身へのインタビューや、
彼女の親族へのインタビュー、未編集映像などを通し、その功績と人生をひも解いていく。
(映画.comより)

1873年パリ郊外に生まれたアリス・ギイは、1894年21歳の時、パリ写真機材会社のゴーモン社に秘書として入社する。
翌年、リュミエール兄弟が映画装置シネマトグラフを発明した年に、アリスも映画製作を始めている。
次の年、ゴーモン社の初代撮影所長となって『キャベツ畑の妖精』を作り、以後1920年まで1000本以上の作品を手掛ける。
(ただ当時の長さは、『キャベツ畑の妖精』でも1分程だったりするが)

その間、1907年にハーバート・ブラシェと結婚して、ゴーモン社ニューヨーク支店長となった夫と共にアメリカに渡り、
1910年には夫と映画会社ソラックス社を設立し活躍する。
だが、1922年には夫と離婚し、アリスは2児を連れてフランスに帰国。
それ以後、映画関係の仕事を探しても職は見つからなかった。

映画の黎明期に重要な人物だったアリスがどうしてその後、知られないままになったのか、という疑問を抱かえた監督のパメラ・B・グリーンは、
アリスの成し遂げたことを掘り起こすだけではなく、忘れ去られてしまった原因を探ろうとする。

事実、この作品の中でインタビューを受ける著名な映画関係者たちは、ほとんどがアリス・ギイの名を知らない。
映画創生期以来、実際は非常に沢山の女性たちが活躍していたというのに、時代は男性中心主義を作り女性を無視してきた。
例えば、アリスが作成した作品が他の男性監督の名にすり替えられたりした事は、アリスの1964年等のインタビューによっても判別できる。
つまり、歴史を通じて、女性の権利が影に押しやられてきたことをパメラ・B・グリーンは見据え、そのことを浮き彫りにする。
だから意識してナレーションには、ジョディ・フォスターに依頼したりしている。

この作品を観るまで、映画の初期段階でのリュミエール兄弟やジョルジュ・メリエスについては多少知っていても、このような名も知らない人物、アリスが実際にいたとは。
そして、そのアリスのことに情熱を持ってドキュメンタリーを作る人がいるということに驚かざるを得ない。
ただ作品として少し残念なのは、テンポがやや速く流れ、じっくりと納得しながら鑑賞できなかったことか。

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2 コメント

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Unknown (Izumi)
2022-08-03 14:59:18
先だっては返コメ有り難うございました。
昨日、以前から気になっていた韓国映画『モガディシュ脱出までの14日間』を観に行きましたところ、そこの映画館(ミニシアター)で、ご紹介の『映画はアリスからはじまった』が上映されていました。
新聞雑誌等のコラム、ポスターなども飾ってあり、他の映画より大きく取り上げられていました。
私自身は、リュミエール兄弟は知っていましたが、この女性は知りませんでした。
ブログを拝読していなければ素通りしたかも知れませんが、興味深く読んで見てきました。
機会があったら映画も観てみたいと思っています。
有り難うございました。
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>Izumiさんへ (ツカヤス)
2022-08-03 16:53:54
コメントありがとうございました。
この作品は、新聞紹介を読み興味が出て観て来ましたが、全国的には上映館がほどんどないみたいで残念です。
もっとも、地味と言われればそれまでですが。
リュミエールとかメリエスの作品は、昔、自主上映会場で観て、一応作品の雰囲気は知っていましたが、アリス・ギイについては全く知りませんでした。
作品を観ると、この女性について知っていることの方が少数意見だと納得するところもありましたが。
興味がありましたら、是非観てくださいませ。
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