ポケットの中で映画を温めて

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キム・ギドクの『STOP』を観て

2020年03月27日 | 2010年代映画(外国)
『STOP』(キム・ギドク監督、2015年)を観た。

2011年3月11日に発生した東日本大震災。
それに続いて福島第一原発で事故が発生し、原子炉がメルトダウンを起こす。
これにより、原発から5km圏内に住んでいた若い夫婦は、東京への移住を決意。
妊娠中の妻は、赤ん坊に対する放射能の影響に不安を覚え、次第に正気を失ってゆく。
そんな中、謎の政府の役人が現れ、強引に中絶を促す。
写真家の夫は、妻を安心させるため、美しい自然や動物の写真を撮ろうと単身、福島に戻る。
だが、そこで目にしたものとは・・・
(Movie Walkerより)

福島に戻った夫が“そこで目にしたものとは”、要は、原発の立入り禁止区域内に残っていた若い女がひとりで出産し、
その赤ん坊は奇形児だったということ。
この地域にはもうひとり、放射能汚染されて野生化したウサギを解体し、東京の焼き鳥屋へ売り渡している男がいる。
主人公の夫は、原子力発電所から送られる東京の電気を止めようと考える。
そして、ウサギを売りさばいていた男とふたりで、送電塔を切り倒して東京を停電にする。
7年後、妻ミキが産んだ子は奇形にはならなかったが、常人の何千倍もの聴力を持つ聴覚障害児であり、他の子からいじめられる。

キム・ギドクが福島第一原発事故に危機感を寄せ来日して、ひとりで監督・撮影・照明・録音の全てを行い、これを完成させたという。
しかし、その趣旨はとてもよくわかるが、内容がお粗末過ぎて余りにも稚拙としか言いようがない。
おまけに、出演している役者が棒読みに近いセリフ回しで、観ていて拒否感というか抵抗感が先立ってしまう。
このように、折角の作品にケチをつけ出すと、どこまでも意見が出てしまう。
もっともキム・ギドク自身も、インタビューで「技術的製作方法が未熟だったことは自覚しております」と言っている。
折角の作成意図を、もっとじっくりと熟成させてから作品にしてほしかったと、残念ながらそのような願いが湧き立つ。

これで、キム・ギドクの監督作品・計22本のうち未公開の『アーメン』(2011年)以外、すべて観たことになる。
劇場で初めて観た『サマリア』(2004年)の斬新な感覚に魅了されてから、意識してきた監督である。
もっとも、主要作品はブロクを始める以前に観ているから、記事にはしていないが。
来月、新作『人間の時間』(2018年)が公開されることになっていて、久し振りの作品にまた興味が尽きない。

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