ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

成瀬巳喜男・18~『あらくれ』

2020年04月02日 | 日本映画
『あらくれ』(成瀬巳喜男監督、1957年)を観た。

お島は庄屋の娘だが、子供の時から農家に貰われ、結婚話をいやがって東京に逃げ出して来た。
植源の世話で神田にある罐詰屋の若主人鶴さんの後妻になるが、女出入のはげしい主人と、気の強いお島との間には悶着がたえない。
遂に腕力沙汰の大喧嘩の果て彼女は腹の児を流して家を出た。

落着いたのは、草深い寒村の旅館浜屋。そこの女中となったのである。
胸を病んだ妻と別居している旅館の若旦那は、彼女に想いをよせて関係を結ぶが、細君が回復して戻って来るとなれば、また家を出なければならぬ。

東京へ帰って洋服店につとめるようになった。
そのうち、同業の職人小野田を知り、ミシンを習って下谷に店をもつ。
小野田は怠け者だが、勝気なお島によって、どうやら商売も軌道に乗るようになった。
しかしやがて小野田の父が同居するようになると、酒飲みの老人には嫁の性格が気にくわぬ。
再びゴタゴタが絶えなかった。
その時、病気になった浜屋が上京して来る。

お島は本郷に店をかまえ、だんだん繁昌するが、夫は仕事一方の妻が気に入らない。
植源の娘おゆうを囲うようになった。

その頃、病が重くなった浜屋が死んだ。
暗い気持にとらわれたお島は、夫とおゆうが会っている現場をおさえ、物干竿で二人の間にあばれ込む。
小野田は雨の中を逃げ出して行った・・・
(映画.comより)

大正の始め。
我が強く、それでもって自立心のあるお島。
そんな女性の半生が描かれる。
それに引き換え、相手になる男の不甲斐なさ。
まさしく成瀬映画の縮図。
まずは缶詰屋の鶴さん。
ネチャネチャと嫉妬深いくせに浮気をしている最低の男。
次が旅館浜屋の主人。
物静かでかなりインテリそうだけど、いざという段にイジイジとして煮え切らない。
三番目が、二人で洋服屋を始めた小野田。
最初はよかったが、生活が落ち着いてくると全くの怠け者で、挙げ句に植源の娘おゆうを囲う。

缶詰屋の鶴さんが上原謙、浜屋の主人は森雅之、そして小野田の加東大介。
もう、どうしようもない男たち。と、実感させられる自然体が凄い。
それらに絡んで、めげずに強気で生きようとする高峰秀子。

この作品は、成瀬巳喜男を知るうえでの典型的な一作のような気がする。
そのように確信するけど、もっと観てみないと断定すべきでないとも思う。
いずれにしても、傑作の一作品には間違いない。

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