原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

紹興酒の燗壷

2010年03月02日 09時41分03秒 | 社会・文化
またまたお酒の器話となってしまうが、上海で見つけた面白い商品を紹介したい。紹興酒のお燗セットである。急須のような壷にお湯を入れ、その中に紹興酒を入れた細身の壷を入れ温める。ほどよく温まった紹興酒の甘い香りが流れ、味を一段とおいしくさせる。紹興酒の飲み方はいろいろあるが、秋から冬の寒い時期はやはりこのお燗がいい。燗壷の形が面白く、飾りにもなる、日本酒のお燗にも応用できるのがうれしい。

上海の近くに紹興酒の街、紹興がある。この酒が世界中に知られるきっかけは、上海に租界ができ、海外から多くの外国人がやってきた二十世紀初頭ころから。上海を起点に世界中に広まった。日本ではかなり前から台湾製の紹興酒が出回っている。これは紹興の人にとっては許しがたい偽物行為となる。コピー問題で世界のひんしゅくを買っている中国が声を張り上げて、台湾の紹興酒は偽物だ!と叫ぶのは、なんとも面白く感じた。
原産地呼称法という国際ルールがある。テキーラはメキシコのテキーラの街で作るものに限られ、シャンパンと呼べるものはフランスのシャンパーニュ地方のものに限られる。紹興酒も実はこれと同じなのである。彼らの言い分はここにあった。気持ちは分かる。
日本では紹興酒に砂糖を入れて飲む人が多い。これは台湾人が日本の中華料理店で流行らせた方法らしい。紹興の人は顔をゆがめて、それは邪道だという。本物はそんなことをしなくて十分においしいと主張する。台湾製の紹興酒との違いは、このお燗セットで飲むとよく分かる。


燗壷を最初に見たのは上海の中華料理店であった。観光客相手のあやしい売り子が勧めてきた。それはブリキのような製品であった。ちょっと気味が悪かったのでそこでは買わずに、後で老街(旧市街)にでかけ、物色した。瀬戸物屋のような店で見つけたのが写真の二品である。このほかに銅製のものもあった。

老街でみつけた老舗の紹興酒の店では量り売りをしていた。2ガロンほど購入(それでも日本円で千円未満)。ホテルの部屋で相棒と燗壷を使って味わった。そのうまさは絶品であった。2ガロンの紹興酒は2日でなくなっていた。免税店で販売している高い紹興酒とは比べ物にならないくらいおいしい。知らないとはいえ、観光客はずいぶん損をしていると思った。


この燗壷を使っていろいろな銘柄の紹興酒を試した。その中で一番のお勧めが「孔乙己」。コンイーチーと発音する。上海のスーパーでも売っている紹興酒で価格も手ごろ。五年物、八年物、十年物とある。残念ながらこの紹興酒は日本で探したが手に入らなかった。
孔乙己の名前で気づいた人がいるかもしれないが、魯迅の小説に出てくる人物の名前で本のタイトルにもなっている。魯迅の故郷は紹興である。街にはこの名前のレストランもあるし、街を代表する有名人でもある。記憶が少し曖昧だが、上海の魯迅博物館のなかでもこの紹興酒が販売されていたと思う。
少し甘めのため辛党派には好まれないかもしれないが、一度は味わってみたい紹興酒である。とくに燗壷で飲むと絶品に感じる。

といいながら、今宵もまた酔ってすごすことになる。

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2 コメント

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今度 手に入れましたなら・・・ (原野人)
2010-03-02 18:29:24
ただ、今手に入る紹興酒は高いだけ高くて、あまりおいしくありません。
現地からおいしいのが手に入りましたなら声をかけますから。それまでお待ちください。
私は器や道具で酒を飲んでいるような気がします。本当の酒のみではない証拠なのかも。
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いやぁ、深いですね。 (numapy)
2010-03-02 16:47:25
燗壷というのも知りませんでした。
紹興酒は、中国料理店でしか飲んだことがないので、
ウィスキーなどと比べてなじみが少ない。
ただ、砂糖を入れるのはおっしゃるとおり邪道のように思います。
そういえば、ここんところ飲んでないなぁ。ということは、中華料理店に行ってないことになる。

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