原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

人間。

2015年07月03日 09時44分37秒 | 社会・文化
漢字で書く「人間」は、言うまでもなく人のこと。英語で言えばPersonやHumanにあたる。しかし、漢字発祥の中国における人間は日本語の意味とは少し違う。読み方は分からないが、人間とは世間とかこの世という意味となる。日本語と同じ意味を持つ中国語の漢字は、人あるいは人類となる。国が変われば漢字の意味も変わるのかと思いがちだが、実は日本語の人間にもいろいろな意味があった。今はあまり使われていないが、平家物語や竹取物語に出てくる「人間」にはいろいろな意味があった。

「じんかん」と読めば、これは現世とか世間、この世という意味となる。これは中国語の意味と全く同じで、昔はこうした意味でも人間という漢字が使われていたらしい。中国語の故事で、人間塞翁が馬というのがあるが、これは「じんかん塞翁が馬」と呼んだ方が、意味が通じる。「にんげん」では意味がちょっと不明となる。
「ひとあい(あひ)」と読めば、人づきあいとか交際の意味。平家物語にはこういう使い方で登場する。
「ひとま」と読めば、人のいない間、人の気づかぬ隙、人との交わりが絶えることの意味。竹取物語にこうして使われている。
(いずれもコトバンクからの引用)

一つの漢字でもいろいろな意味を使い分けている。日本語の多様性と深さを強く感じる。漢字はたしかに中国から導入されたものではあるが、これほどまで日本語に昇華させてしまえば、輸入の言語とは言えない。
漢字文明は確かにアジア諸国に広く分布している。それぞれ自国の言葉に同化させて使ってはいるが、日本語ほどに深く取り入れられた国はない。中国語の世界から逸脱している。日本語の素晴らしさをあらためて感じる。

中国人にはこうした日本語の深さは理解できないらしい。同じ漢字を使っているのだから、日本も属国の一部という感覚から抜け出せないようだ。いわゆる、これが中華思想というわけなのであるが、こうした傲慢な態度こそ、中国が世界の先進国から取り残されてしまった最大の原因であることに気づくべきだろう。

人間という漢字ひとつからも、多くの言葉が生まれる日本語の素晴らしさを実感する。もっと日本語を大切にしなければいけない。日本という国を支えるためにも。

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