原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

ふ・る・さ・と

2015年10月22日 10時29分43秒 | 社会・文化
先日、中学生時代の同級生から手紙が届いた。初めての便りである。先般に開催された同窓会に出席しなかった私の病に対する見舞いが主たる内容であった。大変ありがたく、感謝の念を持って読ませてもらったことは言うまでもない。手紙では、北海道に対する思いも強く語られていた。北海道を離れて五十年は経過。「故郷」という言葉とともに、同級生の強い思い込みが感じられた。気持ちはよくわかる。その一方で、室生犀星の言葉が浮かんでいた。自分が思う「ふるさと」という概念を反芻する機会となった。 . . . 本文を読む

人間。

2015年07月03日 09時44分37秒 | 社会・文化
漢字で書く「人間」は、言うまでもなく人のこと。英語で言えばPersonやHumanにあたる。しかし、漢字発祥の中国における人間は日本語の意味とは少し違う。読み方は分からないが、人間とは世間とかこの世という意味となる。日本語と同じ意味を持つ中国語の漢字は、人あるいは人類となる。国が変われば漢字の意味も変わるのかと思いがちだが、実は日本語の人間にもいろいろな意味があった。今はあまり使われていないが、平家物語や竹取物語に出てくる「人間」にはいろいろな意味があった。 . . . 本文を読む

アカハラだけど、それが何か。

2015年06月09日 08時46分42秒 | 社会・文化
近頃、マスコミとやらで「アカハラ」という言葉がちょくちょく出てくるから、俺の人気もチョットは上がってきたのかな、と悦に入っていたら、コンチクショウだね。とんでもねぇ誤解だった。何のことはねぇ、アカデミック・ハラスメント、つまりアカハラのことだってョ。なんだよ、ソレ!ただの子供じみたイジメ話じゃねぇか。最高学府に籍を置く人間のすることかい。いやな世の中になったね。というより、人間がばかになり下がったのかな。鳥の脳みそ並みだネ。と、鳥に言われちゃおしまいだ。だらしねぇよ! . . . 本文を読む

過去に生きて、何が悪い。

2015年05月19日 08時44分58秒 | 社会・文化
長い人生を大きく分類すると、未来に生きる時、今に生きる時、そして過去に生きる時に分けられる。若い時は未来しか見ていないし、壮年時は現実の戦いに明け暮れる。晩年となり現役を遠のいた後は、ゆっくりと過去の自分を振り返る。すべての人がそうだとは言わないが、多くが辿るパターンでもある。還暦を超え定年を迎え、年金生活を送る年代にとって、過去というものは一つの財産でもある。それは何人も否定できない。 . . . 本文を読む

兎角に人の世は住みにくい。

2015年05月08日 08時34分33秒 | 社会・文化
夏目漱石の草枕の冒頭に『智に働けば角が立つ、情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい』とある。草枕が世に出たのは明治39年(1906年)。日露戦争が終わった翌年であった。それから110年に及ぶ時が流れた。日本はその後第一次、二次の世界大戦を経験。そして敗戦という節目を迎え、民主主義という高尚な制度や、自由、人権を謳歌する近代的な社会となり、経済は世界に誇るまで豊かになった。しかしながら、明治の文豪が語った住みにくい世の中は、解消されたと言えるだろうか。 . . . 本文を読む

保守と革新の逆転。

2015年05月05日 08時57分30秒 | 社会・文化
毎年のことながら5月3日の憲法記念日は何かと騒がしい。もはや恒例行事みたいなもの。今年、ことさら姦しく感じるのは、アメリカ議会における安倍首相の演説の影響なのか。旧ソ連が崩壊しベルリンの壁が除去された頃から、象徴的だった左翼や右翼という区別に変化が起きた。イデオロギーの戦いに終止符がうたれた瞬間だった。社会主義とか共産主義という言葉もどんどん色あせた。と思いながら、憲法記念日の騒ぎを見ると、いつの間にか保守と革新が逆転しているではないか。世の中ますますカオス(混沌)なのだ。 . . . 本文を読む

異邦人。

2015年05月01日 09時30分00秒 | 社会・文化
カミュの不条理や久保田早紀の歌に影響されたわけではないが、昔から「異邦人」という言葉に惹かれている。同時に、私のこれまでの人生も異邦人であったと自負している。キリスト教徒を意味する言葉でもあるが、一般的には外国人や異国人、見知らぬ人、別の社会(地域)から来た人、旅人と訳される。良くいえばコスモポリタン、俗に言えば根なし草。異邦人とはそんな生き方が基本。大都会の中でも小さな町でも、海外でも、そして今も私は異邦人そのものなのだ。 . . . 本文を読む

和して同ぜず

2014年09月02日 10時13分57秒 | 社会・文化
  論語の文言である。「君子は和すれども同ぜず、小人は同ずれども和せず」。人間関係には心を砕くべきだが、無責任な賛成はしない。自分の主張は守るべき。つまらぬ人間は、やたらと人の意見に賛成するが真に共感することなく表面的に合わせているだけだ。孔子は多少道徳観が強いが基本的に正しい。中国(シナと呼ぶべきか)の賢人(先人)の深さを感じさせる。今の中国からは想像もできない。この国がなぜこんなにも変わってしまったのか。やはり共産革命がそうさせたと言わざるを得ない。なかでも毛沢東が1960年代から押し進めた「文化大革命」が大きく変化させた、と言える。 . . . 本文を読む

強制通用力

2014年08月29日 10時08分35秒 | 社会・文化
  この言葉を聞いて、ピンと来た人はかなり法律用語に強い人。大半の人は何のことだろうと思うだろう。何しろ日常に登場する言葉ではないからだ。私などは強制連行や拉致の類に属する言葉と勘違いした。簡単に意味を言うと(言い方は、全く簡単ではないのだが)、「貨幣において表示された価値で決済の最終手段として認められる効力」という。いわゆる日本銀行が発行する紙幣や硬貨の効力のことであった。実は紙幣は無制限に効力が認めれているが、硬貨は一定限度の強制通用力しか認められていない。司法の世界は何とも理解しがたい常識というか、決まりがあるということなのだが、素人にはチンプンカンプンである。 . . . 本文を読む

いまは、もう秋

2014年08月22日 09時38分21秒 | 社会・文化
  お盆は過ぎた。甲子園では熱い戦いが続き、酷暑の帯はいまだ広く日本列島を襲っている中で、広島では集中豪雨でたくさんの犠牲者がでた。今も九州には大雨警報が出ている。そんな日本の各地には大変申し訳なく思うのだが、わが道東は早くも秋の気配。朝晩はぐっと涼しくなり、外を歩くには半袖では少し寒い。野山では紅葉の兆しがちらほら。縦に長い日本列島の差にいつもながら驚く。今年は農作物の発育もなかなかに好調とか。食欲の秋、読書の秋、睡眠の秋と楽しみもこれから多くなる。だが、秋風がちょっぴり沁みる人もいることも事実。世の中は悲喜こもごもということなのだ。 . . . 本文を読む

言霊の国、69年目の夏。

2014年08月15日 10時22分01秒 | 社会・文化
  1945年8月15日、戦争が終わった。日本が他国と争ってはじめて敗れた日でもある。この日を境に日本は180度の大転換ををした。戦勝国アメリカの意思によってであることは間違いない。主権が奪われ、それまで正義とされたものが否定された。善が悪となり、悪が善となった。その当時の人たちの戸惑いは、今に生きる我々の想像をはるかに超えていただろう。敗戦というショックの上に常識が否定されたのである。しかも国土は焦土と化していた。その喪失感はいかばかりであったのか。そして日本国民は心も体もすべてを入れ替えるように変えて、未来へ動き出したのだと思う。 . . . 本文を読む

黒いはなびら

2014年06月22日 11時35分56秒 | 社会・文化
  「黒いはなびら」と聞いて、歌手水原弘を思い浮かべた人は、団塊世代以上の人たちだろう。懐かしいヒットソングである。この歌が世に出たのは1959年(昭和34年)。作詞は永六輔、作曲は中村八大。黄金コンビはここが出発点であった。意外に知られていないが、この歌が日本レコード大賞の最初の受賞曲でもあった。いろいろな歴史がこの年から始まっている。現天皇陛下が皇太子の時代に結婚されたのがこの年の4月。週刊少年サンデーや週刊少年マガジンが創刊されたのがこの年の3月であった。高度成長に向かって、時代が動き出していた。 . . . 本文を読む

弥生人・考

2014年05月09日 10時29分38秒 | 社会・文化
  日本人のルーツを語る時、弥生人の存在が大きく影響していることは周知のこと。ところが、弥生人そのものについてとなると、諸説が噴出する。戦後で最も大きな影響を与えたのは騎馬民族征服説(江上波夫東大名誉教授)だろう。朝鮮半島系の戦争好きの民族がそれまで支配していた縄文人を滅ぼして原日本人ルーツとなったという説である。このほかにもいろいろある。水稲技術を持った渡来の弥生人が文化を持たない縄文人を征服して新しい文化を導入。それが大和朝廷の建国につながるという話などなど。しかし近年の研究では弥生人というものの存在に、かなりの修正が加えられている。そもそも「弥生人」と言う民族など存在していないからだ。 . . . 本文を読む

責任・力

2014年04月25日 09時10分06秒 | 社会・文化
  人間力とか女子力なら分かるが、責任を負うとか責任を果たすというのに、ことさら「力」を強調するとは、妙に感じる人がいるかもしれない。だが、昨今、この責任と言う言葉があまりにも存在感がなくなり、意味が希薄になってきているように感じてならない。ここで力を持たなければ、責任と言う言葉さえ消えてしまうような気がするから、あえて加えた。とくに「公」と「私」の混同が異常で、その境目さえ分からなくなっている。それが「責任」と言う意味に大きな影響を与えているかのようだ。これは日本だけではないのだから困る。こんなグローバル化などは、迷惑以外の何ものではない。 . . . 本文を読む

ハイボールが、いいらしい。

2014年04月11日 09時38分58秒 | 社会・文化
  昔の仕事仲間から久しぶりに連絡が入った。スコットランドへの出張とか。シングルモルトの故郷に出かけるにあたって、ハイボールに凝っているという話が飛び込んできた。ハイボールとはずいぶん懐かしい名前だが、最近これが流行っているという。理由を聞いてなるほどであった。基本、蒸留酒だからカロリーも糖質もぐんと低い。太り気味の人には欠かせない飲み物となる。テレビのコマーシャルの影響で若い人にも急激に浸透したらしい。遠い昔、成熟した大人にあこがれて口にしたハイボール。それが蘇ってくる。もっとも、我々には健康と言うもう一つの理由も引き連れてくる。ちょっぴり、ほろ苦い昔を思い出しながら、味わう気分も悪くない。 . . . 本文を読む