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一人静大きな家に小さき母 資料館

2017年03月05日 | 俳句
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資料館
一人静大きな家に小さき母

私には両親の介護の為職業を去り介護に専念した時期があった。隙間風が寒い木造のぼろ家であったがそれが普通の日常であった。その中で母は殊更に小さく見えていた。やがて父が先立ち母が残された。母の悩み苦しさは一手に私に向けられた。人間関係や心の悩みには相槌が打てたが肉体を襲う痛み苦しみには手の差し出しようがなかった。来る日も来る日も夜を徹して背中をさすり続けた。季節の花を病室に飾ったのも慰みのひとつであった。「母さんカタクリが咲きましたよ」「一人静かが咲きましたよ」、、、その小さな母もやがて去っていった。後には心の空白だけが残った。晩年職の無かった私は今もど貧乏であるがそれは私の誇りでもある。私の手足の指は母譲りの短指であるが母の様に器用で無いのが残念だ。:丘ふみ游俳倶楽部「百五十号発刊記念集」(2017年春号)所載

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