春は花見

　天気がいいので、お花見に行きました。結婚以来、毎年行っている近くの公園です。小高い丘の斜面全体にツツジが植えられている名所です。桜の頃もどっと人が出る、いかにも花見ですという場所。我が家は毎年、奥の方の階段状になったところが指定席。今年も、眼下に広がる芝生広場でわいわいやっている花見客を見ながら、お弁当を広げました。いなり寿司にタコさんウインナー、ハムのレタス巻き、ゆで卵に、イチゴ。途中の屋台でラムネと焼き鳥を買って、後はのんびり。日本のお花見の３大要素「群生・群集・飲食」のすべてを満たしています。やっぱり、春はこうでなくちゃね。
　おなかもふくれた頃、すぐそこの空き地でカン蹴りが始まりました。幼稚園ぐらいから小学校高学年ぐらいまでの数人の子どもたちです。４年生ぐらいの男の子が鬼になって、仁王立ちでみんなの逃げた方をにらんでいます。どこから責めようか、というやんちゃくさい表情です。今の子もカン蹴りするんだ、と思ってみていると・・・、あれ？近くにいたよちよち歩きの子が、立てたカンに近づいていきます。あらららという間に、そのカンを取ってしっかり抱きかかえて歩き出しました。すると、周囲の花見客の中から一斉に「あ～あ」の声が。子どもたちのカン蹴りは、いつの間にかみんなの視線を集めていたのです。私たちはお互いに顔を見合わせて、苦笑しました。だって、そのちっちゃい子も、カンけりの子どもたちも、とても元気でいい感じだったのです。すぐにお父さんらしい人が駆け寄って、カンを元の場所にもどし、子どもを抱きかかえていきましたが、空き地を取り巻く空間に、温かな連帯感が生まれた瞬間でした。
　お花見は好きです。子どもたちとの穏やかな休日が、いつまで続けられるかは分かりませんが、これからも、お天気の良い春の一日に人ごみの中に繰り出して、ひと時の平和を喜びたいと思います。