令和5年1月28日(土)
鳰 : 一丁潜り、息長鳥、
鳰(カイツブリ)はカイツブリ科の水鳥、≒全長26cm
趾(足、くるぶしより下の部分)には膜が付いて居り、水掻き
の役目を果たす。 巧みに泳ぎ、水中に潜って魚を獲る。
最長で25秒もの間潜ることが出来「息長鳥」の異称がある。
また、潜った所からかなり離れた場所に浮上「一丁潜り」とか
「八丁潜り」などの異称もある。
一年を通して湖沼や川で見られるが、辺りが枯れ果てた場所に
目立つ水鳥で、「冬鳥」(冬の季語)となっている。
名古屋では鶴舞公園や白鳥庭園等の池に多く見られるが、冬枯
の庭園に人気のある水鳥で、暫し吟行を忘れ眺め居る、、、、。
鶴舞公園胡蝶ヶ池
なるほど潜ると一瞬に水面から消え、見当たらずとんでもない
方向から顔を出す。 群れは繰り返し水面を賑わしている。
俳人夏井いつきさんの著書「絶滅寸前季語辞典」に「一丁潜り」
の記述があり、これが何の季語なのか初めて知った。
【一丁潜り(むぐり)、鳰(かいつぶり)の異称。
潜水が得意で「息長鳥」の名もある。カイツブリは最長で約25
秒も潜れるものだから「一丁潜り」の他に「八丁潜り」もぐりっ
ちょ」とも呼ばれる。
「丁」は昔の距離の単位で一丁は60間、すなわち360尺、
これすなわち凡そ190mに相当する。
二宝鳥の潜(かづ)く池水心あらば君に吾が恋ふる心示さね
(万葉集:大伴坂上郎女)
冬の池にすむにほどりのつれもなくそこにかよふと人にしらすな
(古今集:凡河内躬恒)
古来からその習性により、恋の場面で多くの歌人に詠まれてきた
鳥だが、それも「鳰」「にほどり」という響きだからこそであっ
て、「一丁潜り」「もぐりっちょ」ではなかなかそうもいくまい。
かって淡海の湖「琵琶湖」にたくさん生息していた「鳰」は滋賀
県の県鳥に指定されているが、現在では餌となる小魚をブラック
バスに食べられ、激減しているという。確かにあの旺盛な繫殖力
と貪欲な食欲を持つブラックバス相手では、一丁潜っても、八丁
潜っても叶うはずがなかろう。鴇(とき)の「ような運命を辿ら
ぬよう、大切に願いたいものだ。
俳人の名句
息をのみ一丁潜り見てをりぬ 夏井いつき
(俳人夏井いつき著:絶滅寸前季語辞典より引用した)